前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

文字の大きさ
12 / 29
前世の君と今の君

3

しおりを挟む
「え、ユウジさん……?」 

 ダイチもまた、驚いたように目を見開いて俺を見ている。 

 そりゃそうだよな。こんなところで会うとは思ってなかったし。 

「ダイチ。ぐ、偶然だねー。飲み会かい?」 

 街の賑いに声をかき消されるだろうと、声をかけるついでに片手を上げると、ダイチが集団から抜けてこっちに走り寄ってきた。 

 しかし俺に寄り掛かる佐藤の姿に気がつくと、戸惑うように少し手前で止まった。 

 手をどけろと佐藤を押しのけながら、精一杯の笑顔をする俺。 

「えーもしかしてユウジ、この子か?」 

 くそっ佐藤。ニヤニヤするな! ダイチに変に思われるだろ! 
 俺がそう睨んでも、佐藤は手を離すどころか「へぇ~イケメンくんじゃーん」と余計ニヤニヤするだけ 

「……ユウジさん、その人……」 
「あ、こいつ? こいつは俺の大学時代からの友達なんだけど、ちょっと飲み過ぎちゃったみたいで……」 
「そ! 俺ユウジの親友で、ずーーーーっと仲良しなんだよなぁ」 

 佐藤がいきなり汚い顔寄せて俺の頬にブチュッとキスしてきたもんだから、「きたなっ」と反射的に声が出た。 

 さすが酔っ払い。くだらないことでもツボに入るのだろう。たったそれだけのことで「ぶっ、汚いってなんだよ~。失礼だな~」と佐藤が吹き出した。 

「お前な~! 変なことすんなって!」 

 小突いても佐藤はひゃはははと爆笑するだけで、全然こたえない。 

「ごめんな。酔っ払いのおっさんで」 

 笑い転げる佐藤の手を無理やり引き離し、ダイチのほうに目をやると、ダイチは目をあわせずすぐにそむけた。 

 いつもなら、大丈夫ですよって人懐っこく笑ってくれるのに。 

「……いえ。すみません。仲いいんですね、その人と。……友達が呼んでるんで、俺もう行きます」 
「え、あ、そうだよね。呼びとめてごめん。こいつみたいに飲みすぎないようにね」 

 そんな冗談めいた言葉にも、ダイチはくすりともせず軽く頭を下げると、あっけなく背を向けて、「ダイチくーん、こっちー」「だれーあのオジサンたちー」と、学生らしくはしゃぐ集団の中へ消えていった。 

 いつもとは違い、あまりにそっけない態度で去っていくダイチに、かなり拍子抜けしてしまった。 

「……嫌われちゃったかな」 
「じゃ、ちょうどいいじゃん」 
「佐藤、お前な!」 

 振り向くと佐藤は、どこかにより掛かることもなく、しれっと普通に立っていた。 

「だって嫌われたかったんだろ? 今日はそういう話だったじゃん」 
「……酔っ払ってたんじゃねーのかよ」 
「酔ってたさ。でもさすがにそこまでじゃねーよ。じゃれてたらアイツが来たから、ちょうどいいかなーって、機転をきかせたってワケよ」 

 確かにそういう話だったけどさ!? 別に俺は嫌われたいわけじゃなかったんだよ!! 

「嫌われたほうが、あとあと面倒なことにならなくて済むからいいだろ。好きになってほしくないけど、嫌われたくもないって、そりゃ虫の良い話だって」 
「……そうだけどさ」 
「それにアイツ、お前が思ってるほどいい子じゃないかもよ」 

 意味ありげな佐藤の言葉に、俺は「え?」と聞き返した。 

「俺のことすげー睨んでたしよ」 
「お前がバカみたいにふざけるからだろ」 

 そう睨むと、佐藤はそうだっけとでもいうように肩をすくめ、無理やり話を切り上げた。 

「ははっ。とにかくこれで黒木のことも解決! さ、帰ろうぜ~」 
「なんだよ! 佐藤! おい」 

 結局この日は、こんなふうに佐藤がサッサと電車に乗って帰ってしまったもんだから、これ以上何も相談できなかった。 

 さらにこの日を境に、ダイチとは河川敷で会えなくなった。 
 スマホにも連絡がないまま1週間以上が経ち、俺はちょっとばかり落ち込んでいた。 

 ダイチには学業以外に、トレーニングやバイトもあるわけだし、学生といえどそんなに暇じゃないことはわかっている。 

 でも、それでもいつもらなら河川敷で週に2回は会えていたわけで。 

(やっぱり酔っ払ったおっさん姿を見て、幻滅されたかな) 

 おっさん2人が、酒に酔っ払ってじゃれ合う姿ほど悲しいものはない。 
 よっぽど痛々しく見えたことだろう。 

「ロッシュおいで」 

 そんなこんなで、ここのところ上の空で、今日だって仕事はすでに終わったというのに、俺はまだ仕事部屋の椅子の上でぼんやりとしていた。 

 いつもなら散歩の時間だ。俺の仕事が終わるのを今か今かと待ち構えていたロッシュは、小さく愛らしいフワフワな尻尾をちぎれんばかりに振って、お散歩用のリードをくわえて俺の足元に走り寄ってきた。 

「よしよし、偉いぞロッシュ」 

 俺に咥えていたリードを渡すと、ロッシュは跳ねるようにくるくると足元を回り、それから俺の足にしがみついて、キャンキャンと急かすように鳴いた。 

「分かった分かった。今日はちょっと遅くなっちゃったけど、お散歩に行くか」 

 ロッシュを抱き上げると、ハーネスとリードをつけてお散歩バッグを持ち、ドアを開けた。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

処理中です...