11 / 29
前世の君と今の君
2
しおりを挟む
「生中ね。あと、藁焼きの鰹のたたきに……。ユウジは? 何飲むんだ」
「あ、えーっと……」
予告なく店員を呼ばれた俺は、手に持っていたビールを慌てて飲み干すと、ジンジャエールを注文した。だが佐藤は「あ、今のジンジャエールナシで、生中追加にして」と勝手に注文を変更する。
「お前もまだ飲めるだろ。久々なんだから、もう一杯いっとけ、話聞いてやるから」
こう言われたら文句も言えない。
佐藤が枝豆を自分の口にひょいひょいと運びながら、話を再開させる。
「さっきの話に戻るけどさ、じゃあその子がユウジのことを好きになった根本のところが、黒木絡みじゃないって分かればいいってことか? お前を好きだってのもその子の本心であれば、お前もホイホイと付き合うってことだよな」
「ホイホイってあのな。……いや、でもさ。これまで男と付き合ったことがない子なわけだし、ただの気の迷いで俺みたいなおっさんとって、地獄じゃない? 若い子同士ならまだしもさ」
「え!? 気にするところか? それ!」
「気にするだろ!」
そこで「お待ちどうさま」と声がかかり、さっき注文したビールが運ばれてきた。それを佐藤が店員に軽口をききながら受け取ると、なぜかもう一度乾杯し、2人同時にビールを呷る。
「俺なんかこの前遊んだ子、23歳だったぜぇ」
「お前は節操がなさすぎんだよ! そりゃ奥さん怒るって」
「お前が固すぎんじゃねーの? そいつもハタチ過ぎてんだろー?」
いくら20歳過ぎてても、社会人と学生じゃ全然違う。親に大学行かせてもらってる間は子供と一緒だっての。
「女子大生なら、俺いっちゃうね」
はいはい。佐藤お前ならそうだろう。俺だって遊びなら。
――そう、彼が遊び慣れてる子で、俺ともパパ活だとか言って本気じゃないって感じなら、こんなに悩まない。
「せめて黒木の呪縛が解かれたら、彼の俺への感情も落ち着くかもしれないんだけど」
「……呪縛ねぇ」
佐藤が、最後の一切れとなった鰹のたたきを口にいれながら、そうぼやいた。
佐藤が”生まれ変わり”について懐疑的なのは仕方がない。だって俺も証明なんかできないし、ダイチに記憶があるとは思えないし聞いてもわかるはずない。
せめてそこが分かればなぁ――。
「あー食った食った。ここ結構美味かったなー」
「ああ。刺し身の種類が多くて、酒が進んだな」
会計を済ませのれんをくぐって外で出ると、もう遅い時間だっていうのに、ネオン渦巻く繁華街は、スーツを着たサラリーマンから若い人までたくさんの人で賑わっていた。
(結構まだ大学生っぽい子たちもいるな。ダイチもこういうとこで飲み会したりすんのかな)
ダイチからは、飲み会とかの話を聞くことがない。
彼の所属する学部では、飲み会はしないのかな。俺の大学時代なんか、飲み会ばっかりだったけどなー。
あんなにカッコよくて人懐こい子だから、しょっちゅう声がかかりそうなもんだけど。
男女数人で道に広がり盛り上がっている若い子たちを横目に、彼らはこれから二次会にでも行くんだろうなと思いながら、佐藤に続いて駅のほうへ足を向けた。
今は22時過ぎ。いつもなら2軒目でバーにでも行って終電まで飲むんだけど、佐藤は奥さんとの約束の手前、終電よりも早く帰らなくてはならないから、今日はそれもなし。まあこればっかりは佐藤の自業自得。浮気ばっかするからだよ。
「おっと」
「おい、佐藤、飲みすぎたんじゃないか」
佐藤がふらついて、転けそうになる。
料理が美味しかったせいもあり、2人して結構たくさん飲んでしまった。佐藤なんか最後は日本酒も飲んでいたから、余計に酔ったのだろう。歩きながら足がもつれて転げそうになるのを、とっさに俺が支えてやる。
そうしたら佐藤が「うへへ」と変な声で笑いながら、俺にしがみついてきた。
「お、重! 佐藤! てめー!」
「ユウジ~、俺を駅まで連れていけ~」
「佐藤と俺とじゃウエイトが違い過ぎだろって!」
本気で酔っているのか冗談なのか、なかなか手を離そうとしないがっちり目ではあるが最近ふくよかな佐藤の脇腹を肘で押しのけながら、俺がふと前に視線を戻すと、少し向こうに見慣れたシルエットが目に入った。
(え、あれ……?)
短髪の小さな頭。タイトな黒のジャージを着こなす長身の青年。
「ダイチ?」
思わず声が出た。
学校の友達なのか、男女のグループの輪の中にいる彼。俺の知る愛想のいい彼とは思えない、ダルそうに相槌をうつ姿に一瞬見間違いかと思った。
でも俺の視線に気づいた彼がこっちを向き、目があうとすぐに反応した。
「あ、えーっと……」
予告なく店員を呼ばれた俺は、手に持っていたビールを慌てて飲み干すと、ジンジャエールを注文した。だが佐藤は「あ、今のジンジャエールナシで、生中追加にして」と勝手に注文を変更する。
「お前もまだ飲めるだろ。久々なんだから、もう一杯いっとけ、話聞いてやるから」
こう言われたら文句も言えない。
佐藤が枝豆を自分の口にひょいひょいと運びながら、話を再開させる。
「さっきの話に戻るけどさ、じゃあその子がユウジのことを好きになった根本のところが、黒木絡みじゃないって分かればいいってことか? お前を好きだってのもその子の本心であれば、お前もホイホイと付き合うってことだよな」
「ホイホイってあのな。……いや、でもさ。これまで男と付き合ったことがない子なわけだし、ただの気の迷いで俺みたいなおっさんとって、地獄じゃない? 若い子同士ならまだしもさ」
「え!? 気にするところか? それ!」
「気にするだろ!」
そこで「お待ちどうさま」と声がかかり、さっき注文したビールが運ばれてきた。それを佐藤が店員に軽口をききながら受け取ると、なぜかもう一度乾杯し、2人同時にビールを呷る。
「俺なんかこの前遊んだ子、23歳だったぜぇ」
「お前は節操がなさすぎんだよ! そりゃ奥さん怒るって」
「お前が固すぎんじゃねーの? そいつもハタチ過ぎてんだろー?」
いくら20歳過ぎてても、社会人と学生じゃ全然違う。親に大学行かせてもらってる間は子供と一緒だっての。
「女子大生なら、俺いっちゃうね」
はいはい。佐藤お前ならそうだろう。俺だって遊びなら。
――そう、彼が遊び慣れてる子で、俺ともパパ活だとか言って本気じゃないって感じなら、こんなに悩まない。
「せめて黒木の呪縛が解かれたら、彼の俺への感情も落ち着くかもしれないんだけど」
「……呪縛ねぇ」
佐藤が、最後の一切れとなった鰹のたたきを口にいれながら、そうぼやいた。
佐藤が”生まれ変わり”について懐疑的なのは仕方がない。だって俺も証明なんかできないし、ダイチに記憶があるとは思えないし聞いてもわかるはずない。
せめてそこが分かればなぁ――。
「あー食った食った。ここ結構美味かったなー」
「ああ。刺し身の種類が多くて、酒が進んだな」
会計を済ませのれんをくぐって外で出ると、もう遅い時間だっていうのに、ネオン渦巻く繁華街は、スーツを着たサラリーマンから若い人までたくさんの人で賑わっていた。
(結構まだ大学生っぽい子たちもいるな。ダイチもこういうとこで飲み会したりすんのかな)
ダイチからは、飲み会とかの話を聞くことがない。
彼の所属する学部では、飲み会はしないのかな。俺の大学時代なんか、飲み会ばっかりだったけどなー。
あんなにカッコよくて人懐こい子だから、しょっちゅう声がかかりそうなもんだけど。
男女数人で道に広がり盛り上がっている若い子たちを横目に、彼らはこれから二次会にでも行くんだろうなと思いながら、佐藤に続いて駅のほうへ足を向けた。
今は22時過ぎ。いつもなら2軒目でバーにでも行って終電まで飲むんだけど、佐藤は奥さんとの約束の手前、終電よりも早く帰らなくてはならないから、今日はそれもなし。まあこればっかりは佐藤の自業自得。浮気ばっかするからだよ。
「おっと」
「おい、佐藤、飲みすぎたんじゃないか」
佐藤がふらついて、転けそうになる。
料理が美味しかったせいもあり、2人して結構たくさん飲んでしまった。佐藤なんか最後は日本酒も飲んでいたから、余計に酔ったのだろう。歩きながら足がもつれて転げそうになるのを、とっさに俺が支えてやる。
そうしたら佐藤が「うへへ」と変な声で笑いながら、俺にしがみついてきた。
「お、重! 佐藤! てめー!」
「ユウジ~、俺を駅まで連れていけ~」
「佐藤と俺とじゃウエイトが違い過ぎだろって!」
本気で酔っているのか冗談なのか、なかなか手を離そうとしないがっちり目ではあるが最近ふくよかな佐藤の脇腹を肘で押しのけながら、俺がふと前に視線を戻すと、少し向こうに見慣れたシルエットが目に入った。
(え、あれ……?)
短髪の小さな頭。タイトな黒のジャージを着こなす長身の青年。
「ダイチ?」
思わず声が出た。
学校の友達なのか、男女のグループの輪の中にいる彼。俺の知る愛想のいい彼とは思えない、ダルそうに相槌をうつ姿に一瞬見間違いかと思った。
でも俺の視線に気づいた彼がこっちを向き、目があうとすぐに反応した。
44
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる
水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。
「君のすべては、俺が管理する」
戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。
これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる