前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

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前世の君と今の君

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「え、ユウジさん……?」 

 ダイチもまた、驚いたように目を見開いて俺を見ている。 

 そりゃそうだよな。こんなところで会うとは思ってなかったし。 

「ダイチ。ぐ、偶然だねー。飲み会かい?」 

 街の賑いに声をかき消されるだろうと、声をかけるついでに片手を上げると、ダイチが集団から抜けてこっちに走り寄ってきた。 

 しかし俺に寄り掛かる佐藤の姿に気がつくと、戸惑うように少し手前で止まった。 

 手をどけろと佐藤を押しのけながら、精一杯の笑顔をする俺。 

「えーもしかしてユウジ、この子か?」 

 くそっ佐藤。ニヤニヤするな! ダイチに変に思われるだろ! 
 俺がそう睨んでも、佐藤は手を離すどころか「へぇ~イケメンくんじゃーん」と余計ニヤニヤするだけ 

「……ユウジさん、その人……」 
「あ、こいつ? こいつは俺の大学時代からの友達なんだけど、ちょっと飲み過ぎちゃったみたいで……」 
「そ! 俺ユウジの親友で、ずーーーーっと仲良しなんだよなぁ」 

 佐藤がいきなり汚い顔寄せて俺の頬にブチュッとキスしてきたもんだから、「きたなっ」と反射的に声が出た。 

 さすが酔っ払い。くだらないことでもツボに入るのだろう。たったそれだけのことで「ぶっ、汚いってなんだよ~。失礼だな~」と佐藤が吹き出した。 

「お前な~! 変なことすんなって!」 

 小突いても佐藤はひゃはははと爆笑するだけで、全然こたえない。 

「ごめんな。酔っ払いのおっさんで」 

 笑い転げる佐藤の手を無理やり引き離し、ダイチのほうに目をやると、ダイチは目をあわせずすぐにそむけた。 

 いつもなら、大丈夫ですよって人懐っこく笑ってくれるのに。 

「……いえ。すみません。仲いいんですね、その人と。……友達が呼んでるんで、俺もう行きます」 
「え、あ、そうだよね。呼びとめてごめん。こいつみたいに飲みすぎないようにね」 

 そんな冗談めいた言葉にも、ダイチはくすりともせず軽く頭を下げると、あっけなく背を向けて、「ダイチくーん、こっちー」「だれーあのオジサンたちー」と、学生らしくはしゃぐ集団の中へ消えていった。 

 いつもとは違い、あまりにそっけない態度で去っていくダイチに、かなり拍子抜けしてしまった。 

「……嫌われちゃったかな」 
「じゃ、ちょうどいいじゃん」 
「佐藤、お前な!」 

 振り向くと佐藤は、どこかにより掛かることもなく、しれっと普通に立っていた。 

「だって嫌われたかったんだろ? 今日はそういう話だったじゃん」 
「……酔っ払ってたんじゃねーのかよ」 
「酔ってたさ。でもさすがにそこまでじゃねーよ。じゃれてたらアイツが来たから、ちょうどいいかなーって、機転をきかせたってワケよ」 

 確かにそういう話だったけどさ!? 別に俺は嫌われたいわけじゃなかったんだよ!! 

「嫌われたほうが、あとあと面倒なことにならなくて済むからいいだろ。好きになってほしくないけど、嫌われたくもないって、そりゃ虫の良い話だって」 
「……そうだけどさ」 
「それにアイツ、お前が思ってるほどいい子じゃないかもよ」 

 意味ありげな佐藤の言葉に、俺は「え?」と聞き返した。 

「俺のことすげー睨んでたしよ」 
「お前がバカみたいにふざけるからだろ」 

 そう睨むと、佐藤はそうだっけとでもいうように肩をすくめ、無理やり話を切り上げた。 

「ははっ。とにかくこれで黒木のことも解決! さ、帰ろうぜ~」 
「なんだよ! 佐藤! おい」 

 結局この日は、こんなふうに佐藤がサッサと電車に乗って帰ってしまったもんだから、これ以上何も相談できなかった。 

 さらにこの日を境に、ダイチとは河川敷で会えなくなった。 
 スマホにも連絡がないまま1週間以上が経ち、俺はちょっとばかり落ち込んでいた。 

 ダイチには学業以外に、トレーニングやバイトもあるわけだし、学生といえどそんなに暇じゃないことはわかっている。 

 でも、それでもいつもらなら河川敷で週に2回は会えていたわけで。 

(やっぱり酔っ払ったおっさん姿を見て、幻滅されたかな) 

 おっさん2人が、酒に酔っ払ってじゃれ合う姿ほど悲しいものはない。 
 よっぽど痛々しく見えたことだろう。 

「ロッシュおいで」 

 そんなこんなで、ここのところ上の空で、今日だって仕事はすでに終わったというのに、俺はまだ仕事部屋の椅子の上でぼんやりとしていた。 

 いつもなら散歩の時間だ。俺の仕事が終わるのを今か今かと待ち構えていたロッシュは、小さく愛らしいフワフワな尻尾をちぎれんばかりに振って、お散歩用のリードをくわえて俺の足元に走り寄ってきた。 

「よしよし、偉いぞロッシュ」 

 俺に咥えていたリードを渡すと、ロッシュは跳ねるようにくるくると足元を回り、それから俺の足にしがみついて、キャンキャンと急かすように鳴いた。 

「分かった分かった。今日はちょっと遅くなっちゃったけど、お散歩に行くか」 

 ロッシュを抱き上げると、ハーネスとリードをつけてお散歩バッグを持ち、ドアを開けた。 
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