前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

文字の大きさ
26 / 29
ダイチの本心

9

しおりを挟む
 え、急になにそれ。この前ダイチは知らないって言ってたじゃん。その上、ロッシュが黒木じゃないかって。 

 それにサイさんだって……。俺、せっかくもう黒木のこと考えないようにしようって決めたとこだよ!? 

「その……俺の前世がイコール黒木さんっていう確信はないんです。俺、小さい頃から、とてもリアルな夢を見ることがあって、それも誰かの記憶を覗くなようなそんな夢で。夢はいつも断片的なんです。細切れの古いフィルム映画を見てるような感じっていうのかな。中でも多いのは山での景色でした。その山がどの山なのかは俺にはわからないんですけど、俺が大学入ってトレイルラン始めたのも、それがきっかけかもしれません」 
「山……」 

 黒木も山が好きで、大学も登山部だった。 

 けど大学で始めたのか、それとももっと前から山に登っていたのか、俺は知らない。 

「それでたまに、夢の中に誰か知らない人が出てくるんです。でも見た記憶はあっても起きたらほとんど覚えていないし、全部がぼんやりなんです。それでもその人が出てくる夢を見た朝は、ちょっとこう、胸がドキドキしている感じで、高揚したまま目が覚めるんです。これまでそれが誰かなんて、全然分からなかったし、知ろうとも思わなかった」 
「……それが、まさか俺だった……?」 

 ダイチははっきりと頷いた。 

「俺、何度かあの河川敷でユウジさんとすれ違っているんですが、最初は気づかなかったんです。でもある日、ロッシュと広場を笑いながら走って遊んでいるユウジさんを見たとき、「あっ」て思ったんです。なんというか、ふと頭に夢の人が浮かんで、あれはこの人だって。それからずっとユウジさんのことが気になって……。本当はトレーニング場所は他にもあって、それまではそっちにも行っていたんですけど、その日から河川敷にばかり行くようになって」 

 そこまで言うとダイチは、また見る間に真っ赤に染まった顔を両手で覆うようにして隠し、膝に肘をついて顔を伏せた。 

「……もしかして、あの日俺と会ったのは、偶然じゃない……?」 
「……ユウジさんが来そうな時間に、俺もあの辺に行くようにしてました。あの頃ロッシュは、あのあたりに転がっている忘れ物のボールやおもちゃに興味を持っていたのを知っていたので」 
「待ち伏せてたのか」 
「ユウジさんに声をかけてもらえて、スゲー嬉しかった。俺、ストーカーみたいで……キモいですよね。本当に、マジでごめんなさい」 
「……なんで言わなかったんだい」 

 俺のその言葉に、ダイチは少しだけ手をずらして、拗ねたようにジトッとした目で俺を見た。 

「だって、ユウジさん、俺が黒木さんだったら絶対にOKしなかったでしょ。俺、最初にユウジさんからその話が出たとき、スゲー驚いたんですよ。俺が夢で見ていたのは黒木さんの記憶かもしれないって。でもユウジさんすっごい嫌がっていたし、俺が本当に好きだって言っても信じてくれそうになかった。それに、俺イコール黒木さんだって知ったら、その後もずっと俺を介して黒木さんを見るんじゃないかって。それも嫌だった。だから必死で取り繕って」 
「それでずっと黙っていたのか」 

 ……まさか『ダイチ=黒木の生まれ変わり説』が、ここで復活するとは……。 

 しかも俺を好きになるきっかけが、黒木の記憶って。 

 ダイチみたいな若い子が、俺みたいなおっさんを好きになるきっかけって一体なんだろうって、ずっと気にはなっていた。オジ専なのかもと自分を納得させていたけど……。 

 そっかー。はっきりしてちょっとスッキリしたけど、それでもやっぱりきっかけが黒木というのは、かなり複雑。 

 それになんというか、その執着心。それは遺伝するものなのか? 

 ……まあでも、これが本当にダイチにとっての初恋というものであれば、執着しても仕方がないのかな。 

 俺も若い頃、好きな人の目にどうにかしてとまりたいって気持ち、あったもんな。 

「……ロッシュが黒木さんかもって、なすりつけるように俺言っちゃって。ユウジさん、戸惑いましたよね……ごめんなさい」 
「まあ、戸惑ったけど、ロッシュを訓練に出すきっかけにもなったし。それは気にしなくていいよ」 

 最近、着替えのときとか、なんとなく気恥ずかしくてロッシュを部屋の外に出すようにしてたけど、ただの自意識過剰で恥ずかしいし、ロッシュに謝りたいよ。 

「……俺のこと嫌いになりました?」 
「嫌いにはならないけど……呆れたかな」 

 そう俺が答えると、焦ったようにダイチが俺の手を両手で握りしめた。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

処理中です...