前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

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ダイチの本心

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 え、急になにそれ。この前ダイチは知らないって言ってたじゃん。その上、ロッシュが黒木じゃないかって。 

 それにサイさんだって……。俺、せっかくもう黒木のこと考えないようにしようって決めたとこだよ!? 

「その……俺の前世がイコール黒木さんっていう確信はないんです。俺、小さい頃から、とてもリアルな夢を見ることがあって、それも誰かの記憶を覗くなようなそんな夢で。夢はいつも断片的なんです。細切れの古いフィルム映画を見てるような感じっていうのかな。中でも多いのは山での景色でした。その山がどの山なのかは俺にはわからないんですけど、俺が大学入ってトレイルラン始めたのも、それがきっかけかもしれません」 
「山……」 

 黒木も山が好きで、大学も登山部だった。 

 けど大学で始めたのか、それとももっと前から山に登っていたのか、俺は知らない。 

「それでたまに、夢の中に誰か知らない人が出てくるんです。でも見た記憶はあっても起きたらほとんど覚えていないし、全部がぼんやりなんです。それでもその人が出てくる夢を見た朝は、ちょっとこう、胸がドキドキしている感じで、高揚したまま目が覚めるんです。これまでそれが誰かなんて、全然分からなかったし、知ろうとも思わなかった」 
「……それが、まさか俺だった……?」 

 ダイチははっきりと頷いた。 

「俺、何度かあの河川敷でユウジさんとすれ違っているんですが、最初は気づかなかったんです。でもある日、ロッシュと広場を笑いながら走って遊んでいるユウジさんを見たとき、「あっ」て思ったんです。なんというか、ふと頭に夢の人が浮かんで、あれはこの人だって。それからずっとユウジさんのことが気になって……。本当はトレーニング場所は他にもあって、それまではそっちにも行っていたんですけど、その日から河川敷にばかり行くようになって」 

 そこまで言うとダイチは、また見る間に真っ赤に染まった顔を両手で覆うようにして隠し、膝に肘をついて顔を伏せた。 

「……もしかして、あの日俺と会ったのは、偶然じゃない……?」 
「……ユウジさんが来そうな時間に、俺もあの辺に行くようにしてました。あの頃ロッシュは、あのあたりに転がっている忘れ物のボールやおもちゃに興味を持っていたのを知っていたので」 
「待ち伏せてたのか」 
「ユウジさんに声をかけてもらえて、スゲー嬉しかった。俺、ストーカーみたいで……キモいですよね。本当に、マジでごめんなさい」 
「……なんで言わなかったんだい」 

 俺のその言葉に、ダイチは少しだけ手をずらして、拗ねたようにジトッとした目で俺を見た。 

「だって、ユウジさん、俺が黒木さんだったら絶対にOKしなかったでしょ。俺、最初にユウジさんからその話が出たとき、スゲー驚いたんですよ。俺が夢で見ていたのは黒木さんの記憶かもしれないって。でもユウジさんすっごい嫌がっていたし、俺が本当に好きだって言っても信じてくれそうになかった。それに、俺イコール黒木さんだって知ったら、その後もずっと俺を介して黒木さんを見るんじゃないかって。それも嫌だった。だから必死で取り繕って」 
「それでずっと黙っていたのか」 

 ……まさか『ダイチ=黒木の生まれ変わり説』が、ここで復活するとは……。 

 しかも俺を好きになるきっかけが、黒木の記憶って。 

 ダイチみたいな若い子が、俺みたいなおっさんを好きになるきっかけって一体なんだろうって、ずっと気にはなっていた。オジ専なのかもと自分を納得させていたけど……。 

 そっかー。はっきりしてちょっとスッキリしたけど、それでもやっぱりきっかけが黒木というのは、かなり複雑。 

 それになんというか、その執着心。それは遺伝するものなのか? 

 ……まあでも、これが本当にダイチにとっての初恋というものであれば、執着しても仕方がないのかな。 

 俺も若い頃、好きな人の目にどうにかしてとまりたいって気持ち、あったもんな。 

「……ロッシュが黒木さんかもって、なすりつけるように俺言っちゃって。ユウジさん、戸惑いましたよね……ごめんなさい」 
「まあ、戸惑ったけど、ロッシュを訓練に出すきっかけにもなったし。それは気にしなくていいよ」 

 最近、着替えのときとか、なんとなく気恥ずかしくてロッシュを部屋の外に出すようにしてたけど、ただの自意識過剰で恥ずかしいし、ロッシュに謝りたいよ。 

「……俺のこと嫌いになりました?」 
「嫌いにはならないけど……呆れたかな」 

 そう俺が答えると、焦ったようにダイチが俺の手を両手で握りしめた。 
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