私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛

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リュカのヤキモチ

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 曲が終り一礼をするナターシャ。

「ナターシャ、もう1曲踊ろ!」
「コリン……。」
「!!………リュカ………兄上……。」

 リュカがコリンとナターシャの方へやって来る。
 怒ってるのが分かる。
 
(………殿下のお怒りを沈めなければ!)
「コリン殿下、楽しかったですわ、ありがとうございました。リュカ殿下、申し訳ありません。コリン殿下をお止めしなければならなかったのに………。」

 リュカをこれ以上怒らせないように、コリンの誘いを受けてはいけない、と勘が働くナターシャは、コリンとリュカの間に割って入った。
 何やらリュカの様子がおかしいと見た貴族達はざわつき始める。

「ナターシャ……。」
「はい、リュカ殿下。」

 ナターシャは精一杯に笑みを作ると、リュカの怒りが引いた。
 気を遣わせたと思ったようで、リュカも優しい笑みをナターシャに向ける。

「コリン、来賓の挨拶の場を抜けた事、後で怒るからな!」
「………はい、兄上。」
「戻ってこい、コリン。」

 離れた場所からトーマスが声が掛かり、コリンは戻って行った。

「ナターシャ。」
「はい、殿下。」
「場が冷めた、場を盛り上げる為に、もう一度踊ってくれないか?俺と。」
「はい、喜んで。」

 リュカは、楽団に合図をして曲を流させた。

「あ、この曲……。」
「覚えていたかい?初めて踊った曲だ。」
「勿論です。」

♪ .•*¨*•.¸¸♬✧♪ .•*¨*•.¸¸♬✧♪ .•*¨*•.¸¸♬✧

 ナターシャは、リュカの慣れたリードで、コリンとは違い、リュカと見つめ合いながら踊った。
 いつもリュカと踊る為に、癖のようになっていたのだが、2人を見ていた貴族達は、別の意味でざわついた。

「ナターシャ嬢は許婚が居られるのではなかったか?」
「そうだ、確かウィンストン公爵から聞いている。」
「まさか、リュカ殿下が?」
「お似合いだわ。」
「ウィンストン公爵は、殿下がお相手だから隠していたのか!?」

 ざわつく言葉が気になり始めたナターシャ。

「気にしない、俺を見て。」
「で、ですが………知られてしまったようですし……。」
「ナターシャは嫌?婚約者が俺だと。」
「い、いえ!とんでもないです!むしろ、殿下のお相手がわたくしでいいのか、と。」
「ナターシャがいい。」
「…………殿下……。」

 曲が終わってしまい、会場に一礼するリュカとナターシャ。
 会話も途切れ、リュカはナターシャをセシルの居る場所へ連れて行った。

「ナターシャ、楽しかったよ、ありがとう。また後で。セシル、威嚇まだ頼むよ。」
「勿論です。」
「カイルも助かった。」
「有り難きお言葉でございます、殿下。」
「殿下、踊って頂きありがとうございました。」

 リュカは背中を見せ、手を上げ去って行った。
 リュカが触れた場所に余韻が残るナターシャは顔が赤かった。

 ドンッ!

「きゃっ!」
「ナターシャ!!」
「あら、ごめんなさい?わざとじゃないのよ?」
「くすくす……。」
「ふふふ……。」

 リュカとナターシャの踊ったのを見ていた令嬢だろう、やっかみからか体当たりをされ、ぶつかった拍子に、ぶつかってきた令嬢の飲み物がナターシャのドレスに掛かってしまった。

「シャロン嬢………あなたですか?」
「あら、セシル様、誤解ですわ、わざとではありませんのよ?」
「わざとでないなら、何故謝罪しないのだ。」
「カイル様、シャロン様は謝りましたわ。」
「失笑していた方からは謝罪の気持ちが感じられませんわ、シャロン様、サブリナ様、ドロシー様。」
「まぁ、信用して頂けませんの?未来の皇太子妃の方が!」

 またざわつく会場。
 明らかに、令嬢の嫉妬からくる行為。

「サブリナ様、わたくしがいつ皇太子妃になると決まったのですか?皇太子殿下とダンスしたから決まったのですか?」
「公表もしていなければ、皇太子殿下と妹が言葉を交わしたのは今日が初めて。妹は夜会出たのは今日が初。殿下が妹を知っているのは、私やカイルが、殿下方の側近だから知っているだけです。」
「お茶会でも話をした事もないしな。」
「どうしたのだ、何を騒いでいる?」

 人混みをかき分けながら、ウィンストン公爵が顔を出す。

「お父様。」
「おや、カーター男爵令嬢、シャロン嬢とローマーニョ子爵令嬢、サブリナ嬢、バロウズ男爵令嬢、ドロシー嬢如何されたのかな?お父上があちらで探しておりましたよ?」
「そ、そうですか……では……。」
「あ、そうそう、後で父上方に娘のドレスの弁償をするように、話をしておきますから。」
「なっ!!」
「謝罪が無いなら報告する迄ですな。」
「ナ、ナターシャ様!申し訳ありません!!」

 ウィンストン公爵は令嬢達に睨むと、手を振り、『去れ』と言わんばかり。

「父上……良いのですか?行かせて。」
「あぁ、あの令嬢の父親達と見ていたからな。」

 ウィンストン公爵は、令嬢達が去った先に居る父親達を指さした。

「なるほど。」
「ナターシャ様。」
「セリナ?」

 何故セリナが居るのだろう?
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