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更なる地獄へと………
しおりを挟む「すまないな、セシル。こんなに暗くなってから、来させてしまって。」
「いえ、殿下。大丈夫です………ですがセリナがかなり怖かったようで…………皇子宮に帰らせるのは無理そうでして………。」
セシルはセリナを心配そうに見つめるが、実は芝居。
セシルはセリナと、ナターシャとリュカを同室に寝てもらい、既成事実にならなくとも、同室で一夜を共にした事の噂を流したいからだった。
「も、申し訳ありません………夜道がこんなにも怖いとは………。」
「という訳ですので、セリナ用に一部屋準備して貰っております。」
「一部屋、てお前は?」
「私はリビングのソファで充分でございます。」
「あ、序にもう一部屋用意を………。」
「殿下………。」
「何だよ。」
「殿下がナターシャとこちらに来られた事は、トーマス殿下方に知られましたが……。」
リュカの言葉を絶妙なタイミングで遮るセシル。
リュカが言おうとした一部屋がセシルのかもしれないが、ナターシャと別にしたい、と言われない為に遮った。
トーマス達の話題に切り替わり、リュカはそちらに気が反れた。
「まぁ、仕方ない……。ただ場所は教えてなければ。」
「殿下方は、不審がられて居られたので、理由等聞かれるかもしれません。」
「…………だろうな。言ってもいいが、ナターシャに知られるのだけは勘弁したいな………セリナ、ナターシャが待っている、部屋に案内するから来てくれ、重かったろう大変な事を頼んですまなかったね。」
「とんでもございません!私が志願したのですから。」
リュカはセシルと荷物を持ち、セシルを廊下に待たせ、ドアをノックする。
「ナターシャ、セリナが来たよ。入ってもいいかい?」
『はい。』
「じゃあ、頼むよ。」
「お任せ下さい!」
やけに、ヤル気を見せているセリナを不思議に思ったリュカだが、セシルにもまだ話があったので、気にも止めなかった。
「で?お前、何か企んでないか?」
「は?何をです?私の事より、手の傷とトーマス殿下方は大丈夫なのですか?」
「手はナターシャが手当てしてくれた。トーマス達は放っておいていい。ナターシャとの事を大事にしたい。」
「ほぅ…………既に使いましたか?」
「!!まだだよ!!」
「今夜、使ったらどうです?足らないならまだ持って来てますよ?」
「真面目な顔して何を言ってるんだ!!」
セシルは真顔で言っているのが何とも滑稽だった。
「真面目ですよ。リュカ殿下の為に、トーマス殿下方の為にも………。」
「………。」
「ナターシャの事を早く諦めて頂き、盤石な国にして頂く為にも、ご結婚相手が必要なのですから、離宮のある意味が、それでご兄弟の関係が崩れるとは思えないので……。」
「やけに自信あるな、お前。」
「リュカ殿下の傍で、ご兄弟を長年見てきましたから。」
「あぁ、そうかい………。」
「なので、明日王城に参りましたら、リュカ殿下がナターシャを射止めた、と朝一に報告致しますので、もう準備は父に任せております。ですから、今宵はナターシャとご一緒にお願い致します。ユランに言っても、もう遅いですからね、部屋を用意してくれ、と言っても。」
「…………お、お前………根回し良過ぎて、たまに怨むよ……。」
「お褒めの言葉として受け取っておきます。セリナにも、ナターシャを閨用に仕上げる様に言ってありますから。」
「!!」
「では、私は休ませてもらいます。失礼。」
セシルは至って真面目に一礼してリビングに戻って行った。
(…………セシル~~~!!)
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