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結婚式迄あと3週間②
しおりを挟む皇太子邸に来たリュカはナターシャが居るか確認する。
「ナターシャ様でしたら、殿下の執務室に行かれましたよ?」
「トーマスの部屋に行かなきゃ良かった………。」
「殿下、お戻りになる迄、お待ちになりますか?」
「そうだな…………セリナ、今日はここで寝るから、そのつもりで頼む。」
「!!……畏まりました。」
そそくさと、侍女達は慌てる。
一夜を共にするとなると、リュカの着替えも用意し、ナターシャの準備も必要になる。
離宮で泊まった日以降、一夜を共にしていない、ナターシャとリュカ。
結婚式迄1ヶ月を切り、邪魔する者等居ない。
ナターシャはまだリュカを怒っているだろうか、と心配はするものの、謝れば許してくれる筈、と思い、リビングのソファに座った。
(まだ、午後だしな………夕食食べて………直ぐに………。)
と、頭の中でシュミレーションをすると、ナターシャが戻って来た。
「……………。」
「ナターシャ、ごめん。」
「………何に対してですか?」
「疑って……。」
「…………気が付きましたの?」
「………セシルも、ナターシャと同意見だと……。」
「………殿下はわたくしの話は信じず、お兄様の話は信じるのですね……。」
(しまった!)
自分の妃を信じず、義理兄の言葉でやっと信じたリュカに、もう謝って許されるとは思えない。
目に涙を溜め、ナターシャはリュカに言う。
「今夜、こちらにお泊りと伺いましたが、わたくしは嫌です…………結婚式当日に殿下の謝罪を受け取りますわ………。」
「ナターシャ………ごめん……泣かないでくれ。」
ソファから立ち上がり、ナターシャを抱き締めようとするリュカ。
「!!………今は触れてもらいたくありません!!」
「ナターシャ!」
「わたくしの言葉を信じず、セシルお兄様の言葉で信じるなんて!!」
「俺だけが勘違いしていた様なんだ!」
「…………は?」
「多分……タイタス………いや、俺が気が付かなかっただけだと思う。トーマスも知っていたらしい。」
「………殿下だけ知らなかった?」
(タイタスもだが、今言えるか!)
「…………そう、だからごめん。」
ナターシャの涙が止まる。
「許してくれる……かな?」
ドアの向こうで、心配そうに見つめる侍女達。
ナターシャの大声で駆け付けたらしい。
「…………はい。」
リュカがナターシャを抱き締めると、手で侍女達を引かせる合図をする。
「と、言って欲しかったのですよね?」
「え!?」
「勘違いだけで、信じてなかった事実は変わりませんもの。2回目は無いですからね?殿下。」
「……………はい。」
何故自分でここ迄無気にならなければならないのか、とナターシャも思っていた。
自分の事ではないのに、と。
謝罪があれば直ぐに許すつもりだったが、勘違いが可愛くて、付き合ってみたのだ。
「今日は一緒に過ごせるのですね?」
「あぁ…………今夜……抱いていい?」
「…………はい。」
「何なら今からでもいいけど?」
「わたくし………殿下とお話出来なかった分、お話したい………。」
「!!」
上目使いで訴える、ナターシャに身体が昂るリュカだが、リュカも話が出来なくて寂しく感じたのも事実。
「その代わり、寝かせる気ないからね。」
「!!」
「お、お手柔らかにお願いしますね?」
(…………も、もう限界……。)
ガバッと覆い被りキスをしようとしたら、ナターシャが押し戻す。
「み、皆見てます………。」
侍女達がはしたなく覗いていたのだった。
「も、申し訳ありません……夕食の準備が整いまして、お呼びしようか、と……。」
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