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着飾られる桜
しおりを挟む監禁されてから、1時間は経過した。高嶺が櫻子に、と珈琲を淹れたが、飲む気にもならず、時間だけが過ぎる。
「頭、荷物の確認終わりました。GPS、盗聴器は無かったです」
「分かった…………櫻子さん、荷物をお返しします……スマホだけは返せませんが」
「……………ありがとうございます」
そのスマホを一番返して欲しいとも言えず、とりあえず礼は言う櫻子。
「あと、伺いますが、着替えも用意しますから、服と下着のサイズを教えて下さい」
「…………け、結構です!着替えなんて!」
「数日、その姿はどうかと?特に下着は嫌でしょう?」
「…………ゔ……」
「だからサイズを」
「女性用なら、Mサイズであれば何でもいいです」
「…………分かりました………外注呼んどけ」
「はい」
「……………外注………そこ迄しなくても!!Tシャツとデニムがあればいいです!寧ろスェットでも!」
外注と言われ、人を呼び出して持って来させて、そこで購入するつもりなのか、というのか。櫻子はそこ迄される意味が分からない。だが、高嶺は全く動じる事なく直ぐに業者を呼び出してしまった。
「彼女を仕上げてくれ、金には糸目を付けない」
「あらまぁ、桜也さん珍しいじゃないですか、貴方がご自宅に連れて来る女性が居るなんて………彼女?」
高嶺の横に、モデルっぽい美女が寄り添い、マンションのリビングに入ってくる。次々にトランクを開けるスタッフ。きらびやかな高級そうな服や下着ばかり。
「お前達はリビングから出ろ……着替えさせる」
「はい」
高嶺は窓際に立つ部下達をリビングから出すと、自身はソファにまた座った。着替えさせると言うならば、高嶺も出て欲しいものなのだが、足を組み煙草に火を着ける。
「さぁ、どんな感じの服がいいかしら?桜也さんの好みがいい?」
「…………それは任せる。彼女が綺麗に仕上げれるならな」
「ま!馬鹿にしてるの?…………で?彼女はだぁれ?」
「………………まだ言えん」
「………訳ありね……まぁ、いいわ………じゃあ、全部脱いでくれる?身体の採寸測るから」
「え?下着もですか?」
「……………あぁ、そうね、でもブラは取って、測りにくいし」
流石に彼氏の大和以外に肌を見せたくない櫻子。
「すいません…………あの……部屋を変えれないなら、せめて高嶺さんに背を向けていいですか?彼氏以外に見せたくなくて……」
「彼氏?…………桜也さん、この娘貴方の店で働かせるの?」
「…………背中向けていいから、さっさとやれ紗弥加」
「…………分かったわ」
高嶺にとって、櫻子は詮索されたくないのだろう。龍虎会会長の孫娘かも分からないのだから、そう紹介する訳にもいかず、間違えであれば知り過ぎる人間は少ない方がいい。
「なかなかいいスタイルねぇ…………じゃあコレとかコレ…………コレは?」
「…………あ、あの私……そんなに数買えません!手持ちも無いし……」
「桜也さんが出すわよ、ねぇ?」
「当然だ………お嬢さんは暫くここに住むんだから、これぐらい詫びとして受け取りなさい」
「…………後日、この代金はお返しします」
「しっかりしてるわね……」
「…………とりあえず、10着程選ぶといい」
いくら掛かるか分からない、一着数万するであろう服や下着。保育士の櫻子の給与ではなかなか手を出せる物ではない。保育園に着て行く様な服でもない為、買った事さえない服ばかりだ。下着もデザインより機能性重視で、デート時以外勝負下着や、勝負服ぐらいしか服はお金を掛けなかった櫻子。
「そ、そんなに要りません!着回ししますから、2着か3着で!下着もそれぐらいでいいです!洗濯機をお借り出来るなら自分で洗いますし!」
「10着…………それ以下にするなら、こっちに向いてもらいますよ?」
「……………っ!………合計金額、絶対に私に教えて下さい……」
「はいはい………桜也さん、頑固だから従っておいた方がいいわよ………それ以上頑なな態度取ると、もっと無理難題押し付けるから」
「紗弥加!!」
「はいはい」
高嶺は2本目の煙草を吸い始める。ノルマ10着の服を決めようとしている櫻子の近くに、高嶺は桜色とオフホワイトのワンピースを見つける。
「紗弥加、右から3着目のピンクとオフホワイトのワンピースを彼女に当ててくれ」
「…………これ?……桜也さんらしくないワンピースね………でもこの娘に似合いそう……どう?可愛くない?コレ」
「……………可愛い……」
「じゃあ、それも」
「…………ありがとうございます」
「…………いや……」
服を選び終え、結局外注に来た紗弥加からは合計金額を教えて貰えず、櫻子はまた黙ってしまう。高嶺はいつまで櫻子の前で座ったままなのだろうか。高嶺も沈黙のままだった。
「腹減らないか?」
「…………少し……」
「飯作るが、何か食べたい物はあるか?」
「…………作れるんですか?」
「一応な………凝ったもんは作らないが」
「あ、あの………お手伝いします……何もしていないのは性に合わないので」
高嶺は、キッチンに掛けてあるエプロンを櫻子に渡す。
「これを」
「ありがとうございます」
高嶺は冷蔵庫を開け、次々と食材を出すと手際よく野菜や肉を切った。だが、櫻子には食材を切ったまな板や包丁等洗い物や雑用をさせるだけ。結局、味付けや火を使わせず、パスタとサラダ、スープを1人で作ってしまった。
「食べましょう」
「……………は、はぁ……」
「何か?」
「い、いえ……」
一応作れる、と言っていた高嶺だが、味付けも美味しく、お腹を空かせてなかったと思っていたのに、完食してしまった櫻子だった。
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