桜に集う龍と獅子【完結】

Lynx🐈‍⬛

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桜と龍と獅子

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 の警護と言う割に、何十人と居る男達。

?」
「えぇ………ちょっとですが?」
「私を、その道に引き摺り込もうとしてます?」
「とんでもない、お嬢はお嬢のままでいて下さい」

 その意味が分からない櫻子。引き摺り込もうとしていないなら、こんな警護等要らないと思うのだが、高嶺の心配からの行動なのだと、櫻子には通じていない。

「だから、お嬢と言うのは止めて下さい」
「…………では、私の事はと呼んで下さい」
「…………え!!」
「そうしたら、私もお嬢の事を名前で呼びますよ」

 車に乗り、櫻子の横並びに座る高嶺。

「お………桜也さん……?」
「呼び捨てで構いません」
「…………桜也」
「はい、櫻………それでいいですね?」
「!!」

 優しく微笑まれ、包容力を見せる様な安心感を獲られる。大和とは違う大人の色気だった。
 何だか照れ臭くなり、無言になる櫻子。久々の夜の繁華街の灯りや人混みを眺める。この雑踏の中に、自分も忙しく働いていた2週間前と、今では全く違う世界に感じる。高級外車に乗っている事自体、櫻子にとっては異世界だったのに。この車を見かける人達は、中の乗車する者達を想像しているだろうと思うといたたまれない。底辺な生活ではなかったのだが、何故か戻れなくなりそうで怖かった。

「櫻、恋しいですか?」
「……………え?」
「2週間前の生活です」
「保育士に戻してくれます?」
「…………片付いたら、約束しますよ………もし、本当に獅子王と結婚して、今迄の生活を続けさせてくれるのなら、私も親父に掛け合いましょう………ですが、恐らくは無理だと、極道の私の血は言う………」
「それは、高……桜也のお父さんを殺されたから?」

 と言おうとしたが、睨まれと言い直す櫻子。

「…………そうですね……」
『頭、到着しました。確認する迄暫くお待ち下さい』
「店に着いた様だ………フレンチですが、マナーは気にしなくていいですからね」
「フ、フレンチ…………」

 カチャ。

 車を降り、目の前には高級そうなレストラン。

「警護は最小限でいい。獅子王に気付かれるから、店に入ったら目立つな………他の客にも店にも迷惑だからな」
「はっ」

 店に入ると、上品そうな客ばかり。ギャルソンが、桜也にドリンクメニューを渡す。

「今日のコースのメイン料理は?」
「本日はフォアグラが良いのが入りまして、肉は飛騨牛のフィレ肉とフォアグラのステーキ、トリュフソース、魚は真鯛のポワレ、ヴァンヴィヴィアンソースになります」
「…………櫻はワイン飲めるのか?」
「量はあまり……」
「…………じゃあ、コレで」
「畏まりました」

 慣れた感じで、注文する桜也。シャンソンだろうか、BGMが静かに流れ、女性客がちらちらと桜也を見ていた。

「気になります?」
「え?」
「………視線」
「…………それは………まぁ……」
「私は、この顔も武器にしてますからね」

 その言葉に納得する。桜也の雰囲気は夜にひっそりと咲き乱れる桜の様だ。桜並木に咲く花ではない。周りに木々が無い場所で大きな存在感を表す様な桜。うっとり見つめられる桜也は全く気にせず、櫻子を見つめる。

「………っ……」

 目線を逸らしても、見つめる桜也。それは雪を語る様な目線だった。
 ワインがグラスに注がれ、テイスティングする桜也は、そのままそのワインを貰う。櫻子にも注がれると、乾杯を促された。

「好む味だと良いですが」
「…………」

 照れながら、グラスを重ねる櫻子。血の様な深く濃い赤ワイン。デキャンタをされた澱が無い綺麗な赤紫。芳醇で濃厚なチーズの様な香りがする。

「………美味しい」
「……美味いワインを飲み始めると、病みつきになります…………まるで女を抱く様にね……櫻を思い出す……」

 ゾワッと背筋が凍るが、下半身は疼く目線
をワインに送る桜也。周辺の女性客も赤面する程だ。赤面しながら桜也のマナーを見よう見真似で櫻子も食べる。桜也の話の知識は聞き惚れる程、多種多様な分野を話す。
 食事を終え、桜也はウェイターに領収書を頼む。

「龍虎弁護士事務所で領収書を」
「…………弁護士事務所?」
「……一応、弁護士もしてましてね……専属なので居住場所が事務所になってます…………父親が死んで、親父に大学迄の学費を全額援助されて、弁護士になりました…………意外ですか?櫻」
「…………はい……」
「だから、櫻のアパートも職場も、で如何とでもなります」

 それで納得した。弁護士なら櫻子の顧問弁護士と言えば、周辺も納得する。

「頭いいんですね………」
「まぁ、必死でしたしね……父親は中卒でしたし………母親はそんな荒れた父親を見限り私を捨てましたから、親父と姐さんが親代わりです」
「…………姐さん?」
「………櫻のお祖母さんですよ……5年前に病で亡くなりましたが、最後迄雪お嬢を心配されてました」
「……………」
「さぁ、そろそろ出ましょう………迎えに来た様ですし」

 窓の外を見ると、車が待機した所だった。席を立つ櫻子と桜也。静寂な雰囲気に酔いしれていたのに、突如として破られる。外から銃声音の様な音が鳴る。外からは悲鳴が聞こえ、桜也は怒鳴った。

「伏せろ!!」

 悲鳴と共に、流れ弾が店内にも入る。直ぐに鳴り止むが、被害は相当のものだ。

「オーナー!!オーナーは居るか!!」
「は、はい…………」
「直ぐに警察に連絡を………被害に関しては、こちらに……相談に乗ります……私は弁護士なので」

 迅速な対応をする桜也に、客達も胸を撫で下ろす。

「櫻、行きますよ」
「…………いいんですか?事情聴取とか……」
「弁護士の名刺は渡してます、何かあれば警察から名刺にある番号に掛かってきますから、貴女は心配する事はありません」

 急いで車に押し込まれ、部下達にも怪我人が出てしまい、櫻子は身震いをしていた。
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