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自覚した龍、拒めない桜
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「もしもし」
『写真の礼だ!高嶺!』
「!!」
大和からの電話。大きな声で、怒鳴る大和。
「大和!!」
『…………おぉ、櫻………高嶺の味は如何だったよ?』
「……………大和……」
「獅子王………一般人を巻き込むんじゃねぇ!!」
『…………はぁ?龍虎会潰す為には栄誉なる犠牲だぁ!!』
「…………まぁ、いい………お前が放った銃弾で、レストラン一店が破壊された。その顧問弁護士が既に付いた………損害賠償は計算し請求、客への精神的被害慰謝料………東堂で請求するか?それとも獅子王で請求するか?どっちがいい」
『今さっきで弁護士なんざ付くか!』
「悪いな………龍虎会には顧問弁護士が付いてんだよ」
『極道に弁護士なんざ要らねぇ!極道は極道の法律があるんだよ!!』
「大和!!もう止めて!!」
『……………櫻……惚れたか?そいつに』
知らなかった。極道である大和と、孤児院でからの付き合いのある大和との違い。騙されていたと感じる。東堂大和は虫が苦手で虫さえ殺せない明るいチャラけた性格だった。それがチャラいが卑劣極まりなく、殺生が平気そうな言葉が出るとは思えなかった。
「大和………何で演技してまで私と付き合ってたの?」
『惚れてたろ?東堂大和の時は……結婚したら、獅子王大和ととして、龍崎櫻子を玩具にして愛してやるつもりだったさ!!はははははははははっ!!………今は高嶺が離さねぇけど、その内お前は戻ってくるさ!!』
その自信は何処から来るのか分からないが、大和は勝手があるのかもしれない。
「…………結婚式キャンセルするから」
『キャンセルすんなら、お前がキャンセル料払え……その内獅子王大和の妻として、横に並んで、あんなチンケな式じゃなく、豪勢な式にしてやるよ………じゃあな』
プッ……プープープー………。
「忘れなさい………あんな奴は」
「……………うっ………」
桜也は、櫻子をキツく抱き締める。マンションに着く迄泣き止む事無く、ずっと抱き締めた桜也。
「大丈夫ですか?」
「………なんとか……」
「風呂入れますから、今日はもう寝て下さい」
「……………」
櫻子は桜也のスーツの袖を掴む。人恋しかったのか、ただ慰めが欲しいのか分からない。だが、無意識に掴んでしまった。
「……………櫻?」
「………あ、ごめんなさい……荷物置いてきます」
「……………参った………あの顔……」
櫻子の後ろ姿を見送って、桜也は頭を抱えた。袖を掴んだ時の櫻子の顔は、桜也は何度も女との別れ際に見てきた顔だ。『寂しい』『もっと一緒に居たい』と。だが、櫻子の気持ちはただ勘違いだと思って欲しい桜也。10歳近く年下の櫻子に恋愛感情を持たない様にはしていた桜也だが、初恋だった雪の娘である事が、再燃しそうだった。割り切って女と付き合ってきた男の本気になる感情を。
「…………ちっ!」
頭を抱えた桜也は、掻き毟りセットを崩す。リビングに入り待機していた部下に一声掛けた。
「今後、警護はマンション周辺だけでいい」
「分かりました」
風呂のスイッチを付け、冷蔵庫を開けた桜也はビールを取り出す。グラスに注ぐのも面倒で、そのまま口を着けて飲み干した。自分の気持ちに火が着いたのは30年振りだ。如何していいか分からず、ただ時間だけ過ぎて行く気がする。
「あれ、また飲んでるんですか?」
「……………えぇ」
「二日酔いになりません?………私はミネラルウォーター貰いますね」
桜也のスェットに着替えて、結っていた髪も解き、緩く結んだ黒髪に、僅かに残る香水。自覚するとそれだけでクラクラする。
「飲んだら一緒に風呂入ります?」
「……………え?」
ガシャーン!!
櫻子の持つグラスの手を掴む桜也。その拍子にグラスを床に落とした櫻子。
「……………怪我は?」
「………だ、大丈夫です……」
見つめ合い、桜也が掴んでいない方の手は、キッチンカウンターで支える櫻子は、桜也と目が離せなくなった。縋る様な事をしたのは櫻子だ。危険な男の元に居なければならない事も理解している。大和に裏切られ、その傷が埋まっていないのに、桜也に縋ろうとしたのは間違っているのだが、裾を掴んで誘ったのは櫻子だ。後戻りは出来ないかもしれない。桜也は怒らせると怖いが、基本的に紳士的な男だ。嫌いではない。
目が離すのを遅れてしまった。櫻子が目線を落とそうとすると、桜也の空いた手は櫻子の頬を撫でる。大きな桜也の手は、耳迄掛かり、耳と頬を優しく触れてくる。拒める気がしなかった櫻子に近付く桜也の顔。そっと目を閉じた櫻子の唇が桜也の唇が重なるのは、直ぐだった。
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