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獅子王の策士は
しおりを挟む夕方になりマンションに帰宅した桜也。マンション周辺やマンション内には獅子王の部下は居らず、雪と蒼太と居たホテルでもそれらしい者が居らず安堵した。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさい」
疲れた時に櫻子の笑顔で迎えてもらうのはホッとする。部下達に囲まれていなければ安心出来なかった。
「お前達、もう今日はいいぞ」
「はい」
「お疲れ様でした」
「お嬢、失礼します」
「…………ははは……お嬢は止めて欲しい」
夕飯を作っていたのだろう、エプロン姿が唆られる。
「いいにおいだ……何作ってた?」
「生姜焼きと卵豆腐のスープ作ってます」
「美味そうだ………着替えてくる」
「………はい」
新婚夫婦の様な会話に、桜也が寝室に入る後ろ姿を見送ると、櫻子も照れ臭くなってくる。従兄だと分かったが、このままこの関係を続けて良いのか分からない。閉じたドアを眺めていると、直ぐにドアが開き、慌てて準備を再開する。
「クスッ………何やってんだ」
「…………べ、別に」
「寂しかったのか?今日一日居なくて」
再びキッチンに入る桜也に背後から抱き着かれる櫻子。
「お、桜也!………準備出来ないんで、離れて下さい」
「…………敬語止めたら?……名前呼び捨てなのに、気持ち悪い」
「だ、だって……年上ですし……名前だって本当は『さん』付けでもいいと思ってますし」
「……………ふ~ん……なら、今日あった事話すのやめよ」
「今日、おじいさんに会いに行ったんですよね、昨日の報告」
「………あぁ、それと…………敬語だから言わない」
桜也は敬語の会話を止めさせようとエプロンと服の間に手を滑り込ませ、ブラウスのボタンを外していく。
「お、桜也!!ご飯冷めちゃいます!!」
「こっち先に食べたくなった」
「わ、私はお腹空いてます!!」
「…………俺も腹減った………櫻を食いたい」
「私、食べ物じゃないですから!」
敬語を崩さない櫻子。その櫻子のブラのホック迄外し、焦らすように蕾周辺だけに触れる。
「んっ………桜………也……」
「敬語無しに出来たら止める」
「………け……い……語無くし……たら、今日………の事話す……て……」
「…………あぁ、そうだった……飯食おう」
櫻子が慌てて、ブラを着け直し、ブラウスのボタンを留めると、桜也はテーブルに料理を運び終わっていた。
「…………」
そのさりげなさが櫻子には嬉しい。
「今日はもう出掛けませんか?……アルコール飲みます?」
冷蔵庫の方へ、流し台から移動しようと、足を踏み出すと、下着がにちゃっ、とした感触がする。
「………っ」
「あぁ、ビー………櫻子、濡れたか?」
「!!」
「じゃぁ、さっさと食うぞ」
「!!………話たい事あったんじゃないんですか!!」
「…………話したいがいつまでも敬語なんでな」
「……………」
ビールを冷蔵庫から出し、グラスとビールを桜也の前に出す櫻子。
「はい、ビール!飲んで!」
「…………プッ……」
少々乱暴だが、ビールとビールグラスを置き、ダイニングテーブルに座った櫻子。
「いただきます」
「いただきます」
食べ始めると桜也はポツポツと、今日の事を話す。
「え?お父さんとお母さんが?………連絡あったんですか?警察から」
「………らしいな」
「……………あ、会えるんですか?」
「連絡先は教えてもらったし、近々都合を付ける………獅子王が絡んできそうだしな」
「………ですよ…………ね………っ……やっ!」
「…………あぁ、やっぱり濡れてたな」
「あ、足で…………止め………」
櫻子の足の間に、桜也は足を滑り込ませていた。
「そうだ、櫻…………弟妹も居るらしい」
「………え?………っんっ……」
「名前は、蓮24歳、菫21歳だと」
「………蓮………菫……」
「会ってはいないがな………櫻の事は話しているらしい」
「早く………会いたい……」
「早く入れてぇ…………てっ!」
「片付けしてから!!」
桜也の足を抓り、椅子を引いた櫻子。燻ってしまった櫻子は、その後もデザートと称し、桜也に食べられたのは言うまでもない。
♤♤♤♤♤
「こっちこっち!!菫」
「あ!大和!!お待たせ!」
とある居酒屋。大ジョッキに入るビールが半分ぐらい減ったテーブルに、櫻子の妹、菫が待ち合わせなのかそこに座る。大和………そう、櫻子の元恋人。
「今日、珍しく遅刻じゃん、先飲んでたよ」
「うん、ごめんなさい………ちょっと家がゴタついていて」
「何かあった?」
「…………びっくりしないでよ?」
「………うん……」
菫は、キョロキョロと辺りを見回し、小声で大和に話す。
「私ね………生き別れたお姉ちゃんが居るの」
「……………うん」
「お姉ちゃんが見つかった、て警察から連絡あって………もうお父さんもお母さんも大騒ぎ!」
「………マジで?……生き別れ、て菫は会った事あるのか?」
「ない」
「…………それは、生き別れ、て言わねぇだろ」
「あ、そっか………私産まれる前だもん」
居酒屋で誰もこの2人を不審がらない。ごく一般のカップルに見える。
「その姉さん、て菫からすりゃ赤の他人じゃね?」
「何で?お父さんとお母さんの間に産まれたから赤の他人じゃないじゃない」
「一緒に生活してないんだぞ?どれだけ迷惑な話だよ」
「…………でもお姉ちゃんかわいそうなんだよ……誘拐されてずっと行方不明だったんだから」
「………で?何で見つかったんだ?」
「少し前に銃撃事件あったじゃない、被害に遭ったレストランにお客で来ていたんだって………弁護士と一緒に来てて、弁護士からお姉ちゃんの母親を探して欲しい、て言われて、て言ってた」
「弁護士……ねぇ……」
「そういえば、お父さんもお母さんも弁護士さんの名前見て驚いてたわ」
「何て名前?」
「…………確かねぇ………纐纈………桜也?」
「……纐纈…………桜也?…………桜也……あぁ………アイツか……」
「大和?如何かした?」
「…………ん?いや何でもない」
大和は何処までの事を望むのか、まだ獅子王組以外の者は知る由もない。
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