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しおりを挟む「レイラ、持って帰る物はこれで良いのか?」
「はい………首都からのお土産ぐらいしか無いので」
首都、オーヴェンス公爵邸。
新婚のロヴァニエ子爵のレイラは、夫であるオーヴェンス公爵のアーロンと、王城で行われていた夜会に招待されて首都に来ていた。
基本的に、レイラの生活の中心はロヴァニエ子爵領で、領主として忙しくしている。
夫のアーロンは、首都とロヴァニエ子爵領を行き来し、月の半分は首都で過ごさなければならなかった。
だからこそ、会えた時は片時も離れたくないのか、いつもイチャイチャしている。
「やっぱり、もう1日延ばさないか?帰るの」
「駄目ですよ………軍艦がまた傷付いて修理中なんです………日々商船が往来する港なので、監視しないと」
「そんなものは軍がだな………駐屯もさせてるんだし、任せる所は任せておけ………折角、俺が強化させる為に、国から予算ふんだくってきたんだから」
国政を担うアーロンの仕事も忙しい。
本当ならば、アーロンの傍で、オーヴェンス公爵家の仕事をしなければならないのに、レイラがロヴァニエ子爵領の領主である以上、其方が優先されてしまうのだ。
父はまだ健在で、兄も居るのに、父や兄では、領地を守れない、となり、レイラは前々のロヴァニエ子爵であった祖父の遺言書から、ロヴァニエ子爵となったのだ。
「…………寂しいですよ、私も………だから、今夜も刻んで下さい………今度また会う時迄忘れない様に………」
「当然だ………まだ日は高いが、今からでも良いぞ」
「…………は……」
『失礼します!若奥様!ご主人様!大変です!ロヴァニエ子爵領から至急お戻り下さい、と連絡が!』
「っ!」
折角、良い雰囲気になり、なだれ込もうとした矢先、廊下から侍女の声によって頓挫する。
「何事だ!入室許す、説明してくれ!」
何かあれば、直ぐに切り替えるアーロンの姿に、レイラはキュン、となるが、レイラも直ぐに気を引き締めた。
「失礼致します………若奥様、領地にて不法入国の海賊による被害が出た模様です!海賊達とは言葉も違う様で、軍が戦って防戦はしましたが、被害は人も物資も奪われた、と」
「予定を変更して、俺も行こう!王城にも連絡が入っている筈だが、念の為に連絡を入れて来る………レイラも直ぐに出発準備を」
「はい!」
急にバタつくオーヴェンス公爵邸。
直ぐにアーロンから王城へと連絡を入れて、国政の仕事を離れる事に了承を取る事もなく出発した。
5日は掛かる道のりは、移動が簡単ではない。
それを、何処にも泊まらず、3日半という馬車旅でレイラ達は到着した。
「あれが、海賊船………」
「港の荒れ方が凄いな………火事もあった様だ……」
領主邸へも寄らずに、被害が遭った港街へと直ぐに向かい、警戒態勢の中状況を確認した。
「海賊船はもう一挺ありまして、それで逃げられました………攫われた人数は30人程……若い女と子供ばかりです………申し訳ございません、領主様、公爵閣下」
「怪我人は?」
「手当ても、他の街に避難して順次行っております」
「捕らえた海賊達は?」
「駐屯地の牢屋に」
数人だが、捕らえられているらしく、国の処罰として海賊行為は極刑とされている。
だが、言葉も通じずに難儀しているらしい。
その海賊達が、分かって商船を襲い、人を攫う行為を罪悪感無しに行うなら、当然の罰だった。
そもそも、海賊達が法を守るとも思えない。
「攫った人間を返すなら、いいがなぁ……このままこんな事をされ続けると、海賊のアジトを潰しておかないとな」
「…………放置は出来ないですものね……」
「レイラは如何する?話が通じるとは思えんし、レイラを見たら嫌な言葉も言われるかもしれん」
「私達の言葉自体通じないんですよね?」
「そうだよな………言われた所で、分からんか」
レイラはそのまま、港の警戒態勢と、漁業も暫く休業と、壊された建物の修繕や被害総額の割り出しを指示し、アーロンと駐屯地へと向かった。
見張りが出来る灯台の傍に駐屯地があり、其処で軍艦を待機させてはいるが、海賊の警戒で皆出払っている。
「お待ちしておりました、閣下」
「騒がしいのは、海賊達が騒いでるのか?」
「はい………黙らないので、時折銃で威嚇はしてますが、お括れもせず」
「…………案内しろ………と、その前に……レイラ、これを頭から羽織っておけ」
「え!………アーロン様のマントを何故……」
「海賊達に顔を晒すな」
「…………はい」
何故晒しては駄目なのだろうか、と思ったが、レイラは防衛には疎いので、言い返したとしても、アーロンに言い負かされて、結局羽織る事になるだろう。
「こいつ等か………」
ぎゃあぎゃあ、と叫び、見るからに出せと言っていそうな雰囲気だ。
牢屋の前に集められた、海賊達の所持品だろうか、海のニオイが染み付いた、革製のカバーに入っている短剣や銃、メモ用紙、本等がある。
---この文字……確か……隣国の………海図に……航海日記……
レイラがその航海日記らしき本に触れようととした時だった。
【それに触るな!】
一際、大きな声を張り上げた青年が、レイラに向かって怒鳴る。
殺気に満ちた怒鳴り声をその青年が出したものだから、アーロンは咄嗟に銃を向けた。
普段も、アーロンは武装しているが、銃を人に向けたのを見るのはレイラは初めてだった。
「おい………今誰に向かって、怒鳴りやがった!」
【触るなよ!それに!俺達のだ!返せ!出せ!】
「…………紙と書く物ありますか?」
「あ、はい…………領主様、此方です」
「…………如何した?」
「彼等の言葉、分かるかもです」
「え?何だって?」
「分かるのですか!領主様」
「多分………ですが………」
すると、レイラは紙に文字を書いていくが、文字を見て、アーロンも何処の国の文字か分かった様だった。
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