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しおりを挟む何枚か文字を書き出していくレイラは、これを兵に渡した。
「これを、見せて下さい」
「は、はい」
兵は、海賊にレイラが書いた文字を見せた。
すると、今叫んでいた青年が紙を奪いジェスチャーなのか、書く真似をする。
【…………】
「…………書き出されました、領主様」
レイラは話をさせてくれ、と筆談であれば会話が出来るかもしれない事と、捕まえた理由を書いて渡したのだ。
「何と書いてあるんだ?」
「…………此処から出せ、そして捕まえられる筋合いは無い、と」
「筋合いは無いだと?」
「じゃあ、こう書いてくれ………攫った女や子供達を返せ、お前達のした略奪でこの国では犯罪だ、と」
「はい」
筆談は時間が掛かるが、意思疎通には必要で、レイラは書き進めていた。
【略奪の何が悪い。俺達はそうやって迫害されて生きてきた。今迄もこれからもだ。女は俺達の慰み物で、俺達の国を作るのに必要だ】
「ふざけてるな」
「どう返しましょう……」
【女子供達は、家族が居る。悲しむ者が居るのだから返しなさい】
【知らないね。所でお前女だろ。俺達の文字が分かるなら、俺が可愛がってやるぜ】
「は?」
何を話を変えて口説かれなければならないのだろう。
顔を隠しているのに、何故口説くのか分からない。
「如何した?」
「…………話、通じません……何故か私が女だからと言って、口説いてきました」
「何だと!」
「アーロン様!………銃を向けては話が出来ませんから!」
「じゃあ、こう書け………私には素敵な夫がこの場に居る。殺されたくなければ真面目に交渉に応じろ、と」
「…………は、はい……」
【お前の夫より、満足させてやる】
「嫌ぁ!」
「領主様!」
「お、おい………」
アーロンはレイラの名前を此処で言わないのは、狙われる可能性も考えられるからだ。
「絶対に嫌!誰が…………」
「だから、何て返ってきたんだ?」
「…………お、夫より満足させてやる……と……」
「殺す!」
「閣下!落ち着いて下さい!」
「人が攫われてるんですよ!」
【冗談として聞き流しておきます。夫が貴方を殺す、と言っていますので、生命が惜しければ、攫った人達を返しなさい。そして強奪した物は、貴方達が買うのなら、売りましょう。買えるなら、ですが】
【へ?俺を殺す?この黒髪の男か?強そうに見えないな】
挑発する青年に、それを書く度に、他の海賊達もヘラヘラと取り合おうとはしない。
【良いんですか?彼はこの国の王族です。貴方達の仲間毎、制裁する事も厭わない、と言ったら如何されます?交渉?それとも略奪をこのまま続けるのですか?貴方達の母国が貴方達を放っているとしたら、貴方達の家族も無事で居られるでしょうか】
交渉に応じようとしない海賊に、こんな事が通じるとは思えない。
略奪する事に罪の意識も無いのだ。
家族が居ても、家族を捨てた可能性もある。
「良いんですか、こんな事を書いて………」
「構わない………許せん………そもそも、隣国とは言葉の壁があり、海を隔てているから、過去にも戦はしてきていた。今は停戦しているが、根本的な解決はされていないんだ……お互い理解をしようともしない。我が国の国土でもあるし、あの諸島の波は観るのが難しいのだろう?危険のある島々には入らない、と聞いている………海賊達は其処を拠点にしているなら、それをきっかけで戦が始まってもおかしくはないかもしれない、昔から小競り合いはあったし」
書物がレイラが住む国に入って来るのだから、何処かの商船が取り扱っているに違いないだろうが、経由しての入荷ならば、国交しているとは言い難い。
【制裁するならやってみろよ!俺達は国を追われたんだ!家族なんて遠に捨ててる!だからアジトで俺達の国を作るんだよ!】
「国を作る?」
「さっきも、そう書いてたな……」
【母国で何があったのか聞いても良いですか?】
すると、海賊達はコソコソと話合いを始めた。
【言ったら如何にかなるのかよ。国を追い出された俺達がもう帰る場所なんて無いんだよ!】
「追い出された?」
「何をやって追い出されたんだ?」
「聞いても教えてくれるんでしょうか……」
「聞いてみてくれ」
「はい」
レイラは長々と文字を書いた。
国を追い出された理由。
海賊行為をする事になった理由。
もし、働いて金を稼ぐ事が出来たなら、略奪行為はしなくなるのか、と。
それには、それぞれの意見が出る筈で、略奪行為自体を好きでやっている者も居たのが驚いた。
それが、自分の生命を落とす事になっても。
すると突然、海賊の男の中で腹の虫が鳴る。
「…………彼等に食事を持って来て下さい」
「領主様!そんな施しをする必要等ありませんよ!」
「そうです!お、俺の恋人も連れ去って行った奴なんです!返さなければ極刑に今直ぐにでもしたいぐらいなのを我慢しているんですよ!」
「おい、コイツは摘み出せ………個人の感情で動く奴は事務仕事しておけ………攫われて辛いのはお前だけじゃない」
「す、すいません………閣下……」
「食事を運んで来い。金は俺が出す」
暫くすると、駐屯地で作られた食事だろうか、人数分には至らなくても、温かい料理が運ばれて来た。
【足りなかったら言って下さい。貴方達を今此処から出す訳にはいきませんが、食べる物は与えます】
【ありがてぇ!あ、こら!がっつくんじゃねぇよ!】
【これ、俺が目を付けてたんだ!食うな!】
【良いじゃねぇかよ、食いもんは出してくれるって言うんだから!】
余程、空腹だったのだろう。
アジトには、何も食べる物が無かったのなら、略奪してでも生き延びる方法を考えてもおかしくはないかもしれない。
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