3 / 9
3
しおりを挟むその後も、レイラ達は交渉を試みるが、言葉の隔たりもあるのと、レイラしか筆談で交渉を続けるのは、やはり疲れが出て来た。
「俺達も帰ろう。腹も減ったしな………邸に寄らず此処に来た事は伝えてあるが、心配している筈だ」
「そうですね………また明日にでも続けてみます」
「1人では来させないからな!」
「分かってます………必ず誰かと……」
「いや、俺とじゃなきゃ来させない」
「…………私、そんなに信用ありませんか?」
「こんな男臭い場所に、君が来る事自体嫌なんだ」
「ふふふ………分かりました」
このやり取りを見ていた海賊の青年。
レイラと主に筆談でやり取りしていた青年だ。
【おい!お前!そこの女!】
「領主様、あの男が呼んでいる様です」
「…………何でしょう……明日も来る、と伝えたと……」
顔を見せない様に、アーロンが盾になってはいたが、声は変えて会話はしていなかったので、青年は気になったのかもしれない。
顔も知らずに口説いたぐらいだからだ。
【何かありましたか?】
【顔が見たい!そんな男と別れて俺の女にならないか?】
「…………却下だ!」
「あ………」
訳して、アーロンに伝えると、青年が書いた紙をアーロンはビリビリに破いた。
「やっぱり、俺が絶対に付き添う、分かったな?」
「分かりました」
要所要所で、また口説きに掛かりそうなので、アーロンは良いボディガードとなるだろう。
「帰るぞ」
「はい」
【ちぇっ……】
【おい、フェイ!お前あの女に惚れたのか?】
【見てみてぇ……発音は分からないみたいだが、言葉も通じるんだぜ?しかも、夫が王族だってんだから、それなりの身分だろうしよ。奪って俺等の国の王妃てのもよくねぇか?】
【誰が王になるんだよ!】
【俺に決まってんだろ!】
【捕まってる奴に王なんてなれねぇよ!】
【違いねぇ!】
本当にこの海賊達は、アジトに国を作るのだろうか。
♡ ♡ ♡ ♡
ロヴァニエ子爵邸に帰宅したレイラとアーロン。
領主邸への被害は無かったものの、海賊の被害の処理に、執事のゲイリーが叔父のジュドーからの助言を受けながら、今迄の対策や対処、処理等を説明されて、忙しくしていた。
「爺やも来てくれていたのね」
「レイラお………ご主人様、今回は大変そうでしたので、お手伝いに参りました」
「お父様達は大丈夫?」
「はい、旧邸には人を送っております」
レイラは両親とは付かず離れずを貫き通していて、領地の仕事や商売もさせてはいない。
こういう時でも、手伝って欲しいとも思えない程、レイラの父親は愚者だった。
「旦那様やレイラ様は今日はお疲れでしょう。もう今日は寛がれて下さいな………お食事もご準備してございます」
「ありがとう、マリア」
「マリアの好意に甘えようか」
「はい」
確かに、レイラは頭を使い過ぎて、少し疲れが見えていた。
だからだろうか、夕食を取るとうとうとと、眠そうな顔をしてしまった。
「レイラ………涎垂れてるぞ」
「…………えっ!」
「プッ………冗談だ」
「ひ、酷いです……アーロン様」
「はははっ……食事をしたら、早く休もう」
「…………はい」
しかし、アーロンの早く休もう、という言葉は、早く寝る、ではない。
これは、アーロンがレイラに送る合図だ。
食事も済まし、レイラとアーロンは3日半の馬車移動で風呂には入っていない。
なので、お互いに別に入り、今は寝室にあるテラスに出て、火照った身体を湯冷めさせている。
「気持ち良い、海風ですね」
「そうだな………本当に良い場所だ」
「私、このテラスから眺める景色、大好きです」
「それは良かった………実はこの場所だけ、あの愚者達の決めた間取りを変えなかった」
「そうなんですか?」
レイラは海が眺められて、尚且つ遠い島々も見える景色が好きになった。
この真下は、執務室になっているが、執務室より上階の方が眺めが良い。
これを、レイラの元夫、カエアンが望んだとなれば、珍しく良い仕事をした、と思える。
もう会う事は無いが、心の中では感謝したレイラ。
「それならば、カエアン様にしては良い仕事しましたね」
「……………レイラ……俺の前で、俺以外の男の名を呼ぶとは許せんな……」
「仕方ないではないですか、どう言えば良いんです?」
「愚者……で良い」
「愚者は私の周りにまだ居ますから………」
「確かにな……」
星も綺麗に見え、レイラは夜空を見上げる。
レイラは天文学知識は知らないが、遠く離れた星には何があるんだろう、と見つめていた。
それが、アーロンの欲に火を付ける事になろうとも知らず。
「レイラ…………感心しないな……」
「え?」
「夜空を見て、恋しむ様な目をしている………そんな目を見せるのは俺だけにしろ………」
「………っ!」
顔をアーロンの方に向けさせられ、レイラは唇を奪われ舌を奪われた。
---ふ、深………こ、これ………本気の………立っていられなくなる………のに……
唾液が混ざるキスは、如何しても小柄なレイラに溜まる。
苦しくなっても止む事のないキスになる絡め方は、アーロンにしがみついて自分を支えるしかない。
アーロンも腰砕けになるレイラが分かるから支えてはいるが、立っていられなくなるキスを此処で止める必要があった。
「…………良い顔だ………可愛いな……俺を見つめる目、高揚した表情………もっと可愛がってやらないと………」
「っあ………アーロン………様っ………此処は……外で……」
テラスの縁にレイラの手を置かせたアーロンは、ナイトドレスの上から、胸を揉み始めたのだった。
15
あなたにおすすめの小説
「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?
kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」
「そこまでです、兄上」
「なっ!?」
初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
【完結】夢見たものは…
伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。
アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。
そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。
「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。
ハッピーエンドではありません。
婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます
藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。
彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。
去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。
想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。
『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』
由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。
彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。
真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、
ただ一人、守るべきものを守り抜いた。
それは、愛する人の未来のための選択。
誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。
悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め
かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」
いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。
彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。
「私を、抱いてください」
だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。
婚約破棄から始まるハピエンの短編です。
この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる