何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【おまけ】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
5 / 9

5

しおりを挟む

 駐屯地の海賊達は、アーロンが朝に持って来た提案書を読んで青褪めていた。

【俺達のアジトはこの国の領土だったって………】
【な、なぁ………ふ、不法侵入って何だ?領域侵略って………】

 海賊になってしまった、彼等の母国の罪と、レイラ達の国の罪とは重さは違う。
 略奪された経験があり、国を追われた海賊達は、手短に生活する為に入った諸島を拠点にし、国を作る計画だったのに、その母国とレイラ達の国の領土の境界線には、明らかにレイラ達の国の所有地という事を地図で記されている。
 海賊達の持つ地図は、手書きで彼等が書き記した物で、所詮育った国の周辺の海しか知らなかったしか過ぎなかった。
 漁業権は平等であっても、その中で犯罪を犯した場合は罰が待っている。
 レイラが住む国は大陸の一国で、ロヴァニエ子爵領だけが海に面している訳ではないが、国土の3分の1は海があり、資源が豊富で大国だったのだ。
 方や、海賊達の母国は小さな島国。
 資源も乏しく、外国との貿易も少ない土地だったのを知ったのだ。
 貧富格差もあるからか、文字の識字率も低く、レイラとコミュニケーションが取れたのは、レイラを口説いたフェイという青年だけで、フェイが彼等に口頭説明している。

【…………この国で罪を犯した海賊は、見せしめで縛り首なんだと………嫌なら攫った女子供を返せ、そして国に帰れ………だと】
【フェイ!こっから逃げようぜ!】
【逃げれる訳無いだろ!錠だって壊せねぇ………飯だってこの柵に通るぐらいのもんしかくれねぇし、柵も開ける素振りねぇ…………分かってんだよ………柵を少しでも開けたら俺達が暴れる、て事をよ………】
【じゃあ如何すんだよ!仲間達は俺達が捕まってんの、助けに来てくれるよな?こいつ等やっつけるよな?】

 アーロンは駐屯地の牢屋に見張りは付けてはいなかったが、取り調べ用の部屋の中に牢屋があり、柵は二重で錠がされ、更に部屋は鍵付きの重い扉の為、1つ開けるのにも大変な作業だ。
 そして、この牢屋は地下にある。
 駐屯地も城塞の様になって、彼等は目隠しをされ連れて来られたのもあり、土地勘も無い彼等には脱出は難しいだろう。
 しかも、フェイ以外の男達はフェイに頼りきっている節がある。リーダー格なのかは不明だが、交渉のカギはフェイしか居ないように見えた。

「奴があの中ではリーダーだろうな」
「だと思います………私が書いた文字を理解したのは彼だけですし」

 牢屋の前にある部屋には鏡があるのだが、この鏡はアーティファクトで、鏡の裏側から中を覗けるので、レイラとアーロンは海賊達が収監された部屋の隣から観察している。

「レイラを口説く奴と交渉なんてしたくないんだがな」
「でも交渉しなければ、攫われた人達は帰ってきません」
「アジトを聞き出して救いに行けば良いだろ」
「それでは根本的解決にはならないですよ。第二第三の被害が出るかもしれません。もし全員捕まえられたら根絶やしに出来るかもしれませんが、恨みに恨みを買う訳には………」
「気持ちは分かるがな………君が領主だ、俺は従うつもりだが、国王陛下やエルリックがそれに賛同しなければ、擁護は出来ないぞ?」
「分かってます」

 そんな覗かれている事に気が付かない海賊達の会話を聞きながら、レイラは頻りにメモを取り、彼等の母国語の発音を理解しようとしていた。

「まさか、レイラ………筆談ではなく話をしようとしてるのか?」
「筆談では、効率悪いので………おかしいですか?」
「いや…………俺にはあいつ等の言葉を辞書をつかわなければ理解出来ないし……」
「リーダーらしき人の名前は分かりましたので、交渉はしやすいと思います」
「あいつの名前…………駄目だ!俺が交渉する!レイラは奴と話すな!俺も言葉を理解するから!」
「そうですね…………私より、交渉術はアーロン様の方が良いかと」

 アーロンはフェイがレイラに興味を持っているので、レイラを近付かせたくないのだが、レイラは交渉術について、アーロンが適任なのだろうと思っている。決して、アーロンが嫉妬して言ったとは思ってはいない。

「因みに、あいつの名は?」
「フェイ、と呼ばれてますし、彼は返事をしています」
「……………フェイ……分かった……簡単な言葉を俺が覚える迄は筆談で頼む」
「私が話た方が…………」
「駄目だ!あいつは君を口説くから」
「……………もしかして嫉妬されてますか?」
「ゔっ………」
「私にはアーロン様しか居ませんよ?」
「わ、分かってるが力づくで手を出されたら、交渉自体無くすからな!」
「……………気を付けます」

 この場にレイラとアーロンだけではないのに、甘々な会話に、駐屯地の騎士達は見て見ぬ振りをしてくれていた。

 ---愛される幸せって行動を制限されるのね………アーロン様の言葉に逆らえないわ………

 効率の事を考えて、早く領地民を救いたいのに、アーロンの嫉妬で難航しそうになっているのが気になるレイラだが、それが嫌ではなくて悩む事になるとは、想像出来てはいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?

kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」 「そこまでです、兄上」 「なっ!?」 初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

【完結】夢見たものは…

伽羅
恋愛
公爵令嬢であるリリアーナは王太子アロイスが好きだったが、彼は恋愛関係にあった伯爵令嬢ルイーズを選んだ。 アロイスを諦めきれないまま、家の為に何処かに嫁がされるのを覚悟していたが、何故か父親はそれをしなかった。 そんな父親を訝しく思っていたが、アロイスの結婚から三年後、父親がある行動に出た。 「みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る」で出てきたガヴェニャック王国の国王の側妃リリアーナの話を掘り下げてみました。 ハッピーエンドではありません。

婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます

藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。 彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。 去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。 想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。

『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め

かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」 いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。 彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。 「私を、抱いてください」 だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。 婚約破棄から始まるハピエンの短編です。 この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。

婚約破棄から始まる大恋愛

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄から始まる大恋愛

処理中です...