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しおりを挟む「アジトの場所を教えろ。さもなくば、お前達を首吊りで岸壁に晒すぞ」
アーロンが牢屋の柵越しで、その言葉をレイラに書かせた。
本当はそれを訳したくはないレイラ。
だが、領地民の生命も掛かっていて、交渉の為を思えば致し方なかった。
【おい!女!こんな事を書いて平気なのか!】
フェイはアーロンの言葉を読み、レイラに怒鳴る。
アーロンの背で身を隠し、顔もなるべく彼等には見せないレイラだが、彼等との生命を天秤に掛けるなら、領地民の方を心配するのだ。
「閣下…………追加です」
「……………読め」
【クソッ!】
毅然な態度を取るしかない。
レイラはそれがこの国を犯した侵略者、海賊の罪であり、それが法律だから、と書いた紙を渡した。
交渉をする気が無い様なので、アーロンは強気に出たい、と言った結果だった。
攫った女子供は還さない、と意見を崩さず、自分達を出せ、の一点張り。
それが、牢屋の中の全員の一致なのかは、レイラやアーロンには伝わって来ない。
【フェイ…………何なんだよ………説明してくれよ………俺達は出られないのか?】
【俺達がやった事は、この国の犯罪なんだよ!アジトを教えなければ、俺達を岸壁に首吊りにする、て…………】
【は?何だよ!それ…………俺達が国でされてきた事を、何で俺達がやっちゃ駄目なんだよ!何で吊るされなきゃならないんだ!俺達は悪くないだろ!なぁ、フェイ!】
【ふざけるな!俺達は自由なんだ!】
首吊りの刑に処す事を、牢屋の中でフェイは伝えた途端、自分達の正当性を説いた海賊達。
昨日も、強奪や侵略は犯罪だと、レイラも文字に書いてフェイに読ませたが、海賊達は理解出来ていない程、知識が備わっていない様に見える。
「閣下……………またこれをお願いします」
「何て書いた?」
知能が低いのか、ほぼ言葉を理解出来る様になったレイラはサッと追加の言葉を書き記し、アーロンに渡した。
「自由を求めるならば、母国でお願いします。此処は、貴方達と言葉が違う通じない国。違う国に来たのです。その土地の生活を貴方達は脅かした。物を盗み、人を盗んだ。それはこの国では許されない事で、この国に不法侵入したならば、この国の罰を受けるのが筋、と書いてます」
「さっきのアイツが投げ捨てた事は?」
「あれは、当然です、と…………見せしめに貴方達が首を吊られて晒されれば、仲間達は諦めるか再び来るでしょう?と」
「そりゃ、腹立つよな………」
再び、レイラが記入した紙をフェイにアーロンが渡すと、項垂れてしまった。
【こいつ等に言っても、理解しやしねぇよ………国境を跨いだなんて分かってねぇ………知らねぇ場所だから、言葉が通じねぇ、て思ってるだけだ…………俺達は、理不尽な目にあって逃げて来た…………食うもんも無い、飲める水も無い……でも目の前にデカい船があって、食えるもんを載せてたら、欲しくなるだろうが!買う金だって無いんだからよ………対岸に見える土地に行きゃ、暮らせていけると思ったさ………でも言葉通じねぇなんて知るかよ!】
フェイ達は自分達が住む場所から見えた大陸とは言葉が違う事を知らなかった、と言う。
物流の経路もあって、往来は頻繁には行われていなかったからといって、全ての人間がそれを知っているとは限らない。
恐らく彼等は貧困層で、国の情報自体、耳に入る様な環境ではなかったのだろう。
「訳したか?」
「……………はい……言葉が通じない土地だとは知らなかったみたいです………だから、通貨も分からないし、お金も使えないから略奪するしか方法を見い出せなかったようで………もしかしたら、彼等は末端層で、インフラ自体無かった場所から来たのではないでしょうか」
「……………なるほどな……では、こう訳してくれ…………」
「本気ですか?」
「聞いてみて反応を見たい」
レイラは彼等の言葉で、再びアーロンの言葉を伝えた。
【冗談じゃない!攫った女達は、俺達が子孫を残す為の道具だ!子供は俺達の役に立つ様の戦士として育てる!】
【返して、という意味を取り違えないで欲しい。母国に帰りたくないならば、この地で生活してみては如何か、という意味で、彼女達や子供達にも家族が居て、恋人が居て、貴方達の道具ではない。もし、この地で暮らすなら、働き口も作るし、衣食住出来るぐらいの給金も与え、子孫を残したいなら、この地で略奪ではなく同意してくれた女性と婚姻すれば良い、と言っています。それに応じなければ、海賊行為を無視するつもりもありません。貴方達、仲間全員この海の岸壁に首吊り処刑になります。この国の海賊への処刑は首吊りと決まっていますので】
【お前達の言葉なんて分かんねぇよ!】
【フェイ!何なんだよ!説明してくれよ!俺達文字読めねぇんだぞ!】
フェイ以外の男達は、レイラの書いた紙を見ても理解出来ていない。
理解して貰うには、フェイが話を彼等にしなければならないからだが、フェイもどう説明して良いのかが分からない様だ。
「閣下…………」
「ん?」
「やはり、私から話た方が良いかも………」
「だから、それは駄目だと言っただろ!」
「ですが、彼…………フェイという人は説明が下手だと思うんですよ………」
「……………そうなのか?」
「はい…………文字は読める様ですが、他の人達への説明を如何したら良いか分からないみたいで…………」
「……………はぁ……分かった……その代わり、顔は隠したままだぞ」
「……………人に信頼されるには、目を見て話すべきです」
「っ!」
「違いますか?」
「……………分かった……だが、柵に近付かせないからな」
アーロンは余程、フェイに警戒心を持っている様で、レイラの背後から庇う様に抱き締めて立った。
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