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しおりを挟む駐屯地の海賊達は、アーロンが朝に持って来た提案書を読んで青褪めていた。
【俺達のアジトはこの国の領土だったって………】
【な、なぁ………ふ、不法侵入って何だ?領域侵略って………】
海賊になってしまった、彼等の母国の罪と、レイラ達の国の罪とは重さは違う。
略奪された経験があり、国を追われた海賊達は、手短に生活する為に入った諸島を拠点にし、国を作る計画だったのに、その母国とレイラ達の国の領土の境界線には、明らかにレイラ達の国の所有地という事を地図で記されている。
海賊達の持つ地図は、手書きで彼等が書き記した物で、所詮育った国の周辺の海しか知らなかったしか過ぎなかった。
漁業権は平等であっても、その中で犯罪を犯した場合は罰が待っている。
レイラが住む国は大陸の一国で、ロヴァニエ子爵領だけが海に面している訳ではないが、国土の3分の1は海があり、資源が豊富で大国だったのだ。
方や、海賊達の母国は小さな島国。
資源も乏しく、外国との貿易も少ない土地だったのを知ったのだ。
貧富格差もあるからか、文字の識字率も低く、レイラとコミュニケーションが取れたのは、レイラを口説いたフェイという青年だけで、フェイが彼等に口頭説明している。
【…………この国で罪を犯した海賊は、見せしめで縛り首なんだと………嫌なら攫った女子供を返せ、そして国に帰れ………だと】
【フェイ!こっから逃げようぜ!】
【逃げれる訳無いだろ!錠だって壊せねぇ………飯だってこの柵に通るぐらいのもんしかくれねぇし、柵も開ける素振りねぇ…………分かってんだよ………柵を少しでも開けたら俺達が暴れる、て事をよ………】
【じゃあ如何すんだよ!仲間達は俺達が捕まってんの、助けに来てくれるよな?こいつ等やっつけるよな?】
アーロンは駐屯地の牢屋に見張りは付けてはいなかったが、取り調べ用の部屋の中に牢屋があり、柵は二重で錠がされ、更に部屋は鍵付きの重い扉の為、1つ開けるのにも大変な作業だ。
そして、この牢屋は地下にある。
駐屯地も城塞の様になって、彼等は目隠しをされ連れて来られたのもあり、土地勘も無い彼等には脱出は難しいだろう。
しかも、フェイ以外の男達はフェイに頼りきっている節がある。リーダー格なのかは不明だが、交渉のカギはフェイしか居ないように見えた。
「奴があの中ではリーダーだろうな」
「だと思います………私が書いた文字を理解したのは彼だけですし」
牢屋の前にある部屋には鏡があるのだが、この鏡はアーティファクトで、鏡の裏側から中を覗けるので、レイラとアーロンは海賊達が収監された部屋の隣から観察している。
「レイラを口説く奴と交渉なんてしたくないんだがな」
「でも交渉しなければ、攫われた人達は帰ってきません」
「アジトを聞き出して救いに行けば良いだろ」
「それでは根本的解決にはならないですよ。第二第三の被害が出るかもしれません。もし全員捕まえられたら根絶やしに出来るかもしれませんが、恨みに恨みを買う訳には………」
「気持ちは分かるがな………君が領主だ、俺は従うつもりだが、国王陛下やエルリックがそれに賛同しなければ、擁護は出来ないぞ?」
「分かってます」
そんな覗かれている事に気が付かない海賊達の会話を聞きながら、レイラは頻りにメモを取り、彼等の母国語の発音を理解しようとしていた。
「まさか、レイラ………筆談ではなく話をしようとしてるのか?」
「筆談では、効率悪いので………おかしいですか?」
「いや…………俺にはあいつ等の言葉を辞書をつかわなければ理解出来ないし……」
「リーダーらしき人の名前は分かりましたので、交渉はしやすいと思います」
「あいつの名前…………駄目だ!俺が交渉する!レイラは奴と話すな!俺も言葉を理解するから!」
「そうですね…………私より、交渉術はアーロン様の方が良いかと」
アーロンはフェイがレイラに興味を持っているので、レイラを近付かせたくないのだが、レイラは交渉術について、アーロンが適任なのだろうと思っている。決して、アーロンが嫉妬して言ったとは思ってはいない。
「因みに、あいつの名は?」
「フェイ、と呼ばれてますし、彼は返事をしています」
「……………フェイ……分かった……簡単な言葉を俺が覚える迄は筆談で頼む」
「私が話た方が…………」
「駄目だ!あいつは君を口説くから」
「……………もしかして嫉妬されてますか?」
「ゔっ………」
「私にはアーロン様しか居ませんよ?」
「わ、分かってるが力づくで手を出されたら、交渉自体無くすからな!」
「……………気を付けます」
この場にレイラとアーロンだけではないのに、甘々な会話に、駐屯地の騎士達は見て見ぬ振りをしてくれていた。
---愛される幸せって行動を制限されるのね………アーロン様の言葉に逆らえないわ………
効率の事を考えて、早く領地民を救いたいのに、アーロンの嫉妬で難航しそうになっているのが気になるレイラだが、それが嫌ではなくて悩む事になるとは、想像出来てはいなかった。
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