20 / 100
事情聴取
しおりを挟む王城の一部屋にトーマスとウィンストン公爵はやって来た。
「ここに?」
「はい。」
「ふぅ~……。」
トーマスは溜息が思わず出て来てしまう。
「トーマス殿下、私が聞きますから……あなたはまだお若い、感情の起伏を隠せないでしょう。ここは私に。」
「…………頼む。兄上の事があるから、如何しても感情的になりやすい。でなければタイタスを殴ってない。」
「………仕方ありません、タイタス殿下はご存知ないのですから………ご存知であったとしても、タイタス殿下が理解出来るかは……。」
「兄上が離宮に居て良かったよ……。」
「ですな。」
ウィンストン公爵が衛兵にドアを開けさせた。
ロレイラはソファに座り、扇を開いたり閉じたりと繰り返し、暇を持て余していた。
「遅かったじゃありませんか?わたくし帰りますわ。」
「ロレイラ嬢、あなたに事情を伺いたいのだ。納得出来るかどうかは分からないが、正直に答えてもらいたい。」
「わたくしを誰だと?前皇帝の弟の孫娘ですよ!ウィンストン公爵如きに答えるとお思い?」
扇をパチン、と勢いよく鳴らすロレイラ。
しかし、ウィンストン公爵は眉一つ揺るがない。
「…………だから?あなたが前皇帝の血筋を言い張るなら、私も歴代皇帝のご兄弟の血筋。立場は同じ。王族身分から落ちた公爵家に上も下も無い事を、レングストン公爵のお父上は教育しなかったのかな?」
「娘も娘なら、親も親ですわね………嘆かわしい事……。」
「おや、娘をご存知で?」
「会いましたから。わたくしに暴力を奮った、トリスタン公国の公女と。」
「………ではあなたは、娘が今王族だとご存知ですな?公爵家の血筋の上下を語るなら、あなたより、娘の方が上。私が今から聞く事は、その娘からの言葉として、受け取って頂いて宜しいですかな?何故なら、私の立場とレングストン公爵の立場が違うなら、嫁いだ娘が王族に入った事で立場は逆転したと思える。」
ロレイラの顔色が変わる。
矛盾した事を言ったロレイラに矛盾した事で反論したウィンストン公爵。
ロレイラが言った事は、『より王族に近い血筋』を強調したからだ。
「では、伺う。あなたは何をラメイラ公女と話をされましたかな?」
「……………わたくしを帰しなさい。」
「話て頂ければ帰って頂いて結構。」
「………トリスタンに帰って、と言っただけですわ。」
「…………トーマス殿下。」
「何だ?宰相。」
「私はラメイラ公女をよく知りませんので伺うのですが、ラメイラ公女はよくも知らない、ただの公爵令嬢如きに、『帰れ』と言って暴力を奮う方ですかな?」
「………少なくともあの子はしない。」
「わたくしにはしたのです!」
「それはそれは………お気の毒に……余程、ラメイラ公女の気分を害したのでしょうな……。例えば…………皇太子殿下やタイタス殿下の話………とか言いましたか?」
「…………。」
「図星ですね、トーマス殿下。」
ロレイラは無言だったのに、ウィンストン公爵は確信する。
「わたくしは返事してませんわよ!」
「返事せずとも顔に出ている。ロレイラ嬢、私はこの国の宰相。皇帝のお側に仕えている意味を知った方が良い。それが、あなたの父上との職の差だと知るが良い。」
「お父様に言いますわ!!ウィンストン公爵!!」
「…………どうぞ、ご勝手に。あなたのプライドを傷付けて宜しいのなら………あなたが皇太子殿下にした事を全てお父上に話て良いのなら………。レングストン公爵には話ておりませんので。」
「……………。」
ウィンストン公爵の横で黙って聞いていたトーマス。
皇帝の懐刀として、代々のウィンストン公爵の嫡男は、宰相の任にある事の意味を初めて味わった瞬間だった。
尽く、ウィンストン公爵はロレイラのプライドを打ち砕く。
レングストン公爵との敬遠の仲だと知っていたが、それは全てリュカリオンにして来た行いからの仕返しにもトーマスは見えたのだった。
11
あなたにおすすめの小説
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる