惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
6 / 37

村雨の過去①

しおりを挟む

 結果的、最後迄はシなかったが、村雨は茉穂の媚薬効果が完全に切れる迄、愛撫を続けた為、茉穂は村雨のマンションに泊まってしまった。

「寝みぃ……珈琲でも飲むか……」

 狭いシングルベッドの片隅でスヤスヤと寝息を立てる茉穂の寝顔に村雨はキュンと来る。全裸のまま、挿入の無いセックスを続け、お互いに眠ったのは2時間程前だ。
 朝日が部屋に差し込み目が覚めた村雨は、珈琲メーカーでエスプレッソを淹れる。朝は濃い目のカフェインで眠気覚ましをするのは村雨の日課だ。

 ―――走りに行きてぇが……寝てるよな、まだ……

 エスプレッソを流し込み、ランニングシューズを履いた村雨は、書き置きだけしてマンションを出る。
 今、村雨のマンションには食べる物も無く、ランニングした後に近所のベーカリーでパンを買って帰るつもりの様だ。
 30分程走り、マンションに戻るがまだ茉穂は寝ていた。

「………まだ寝てたか…」

 買って来たパンをテーブルに置き、茉穂の服や下着を洗濯機に入れる。流石に汚れた下着をそのまま着させるのは酷だろう、との優しさだ。
 茉穂が起きる迄、村雨は朝食を食べずに待つ。その間、シャワーを浴び上半身裸で出て来ると、茉穂が目が覚めてベッドの上で上半身を起こして目を擦っていた。

「起きたか」
「………っ!お、おはよ……」
「シャワー使えよ……服、洗濯機に入れたから、俺の服で良けりゃ着てくれ……女物なんて無いんでな」
「え!私帰りたいんだけど!」
「服乾くの待てよ………酒臭い服と、エロ汁塗れの下着、また着たくないだろうと思ったから洗ってる」
「………それは………有り難いけど…」
「シャワー浴びたら飯食おうぜ……近所のパン屋で幾つか買ってきた」
「…………どうりで美味しそうなニオイすると思った……」

 村雨からシャツを受け取り羽織る茉穂。例え、ベッドからバスルームに数歩で行ける距離だろうと、茉穂が何も言わずに手渡してくれた。

 ―――優しいな……仕事してる時も優しさはあったけど……

 昨夜の事も含めて、茉穂が知らなかった村雨の面を知れば知る程、惹かれ初めている。

 ―――彼女とか……居るのかな?

 バスルームの床や壁が濡れている。
 村雨が使った直ぐ後なのが直ぐに分かった。使った後のボディタオルから、水滴がポタポタと落ちるのを見ると、茉穂は使うのを躊躇する。

 ―――使うの申し訳無いよね

 遠慮なく使うには忍びなく、手でボディソープを泡立て、身体を洗う茉穂。
 真っさらでセックス後の名残りは残っていない身体。キスマーク1つでも残っていれば、茉穂に対する気持ちが少しでもあるのでは、とも思ったが、全く痕は無いし、キスも水を飲ませてくれた1度だけ。村雨の心は茉穂には無いのだ、と思い知った。念の為に背中も見たが、キスマークを付けられた感触も無かったのもあり、探すのも止めてしまう茉穂。

 ―――虚しくなるだけか……また、合コンで彼氏探ししよ……

 本当に彼氏が欲しい訳ではない。が欲しいのだ。好きになりかけ、気付けば村雨を気になりだしてしまった茉穂は、自分の気持ちを確認するか如何かは、茉穂次第だった。
 シャワーを浴び終え、Tシャツと短パンが用意してあったのを着る茉穂。ダボっとしたサイズのシャツは、茉穂の肩が出てしまう。ウエストもかなり余裕があるが、腰紐で締められて、落ちる心配も無い物だ。

「シャワー、ありがとう」
「…………あぁ……珈琲でいいか?……というか、珈琲ぐらいしか無いが、砂糖入れてたよな?」
「…………あ、うん……ミルクあったらミルクも欲しいけど……」
「悪い、無い………砂糖だけですまん」
「無いなら、砂糖だけでいい……ありがとう、昨夜からいろいろと……」

 テーブルに無造作に並べられた個装のビニール袋に入れてあるパン達。

「好きな物分からないから、適当に買ってきたが……俺、料理しないからこんな物しか無くて悪いな」
「暖かいけど、今買ってきたの?」
「あぁ、ランニングして来た序にな」
「………ごめん、態々」
「毎朝の習慣で走ってる序だ」
「身体、鍛えてるんだね」

 パンを手に取り、齧る茉穂。その行動を見て、村雨もパンを取る。

「趣味で格闘やってるからな」
「………だから、身体中傷痕だらけなの?」
「…………あぁ……これは昔の喧嘩のツケ……中高と荒れてたから……」
「…………え!」

 傷痕の名残りが、村雨の過去を語る。

「族に入ってたんだよ……毎日喧嘩三昧……抜けてから、暴れる場所が身体鍛える事に変わっただけ………だが、この素行に風貌だから、仕事するのにちょっと都合悪くてな……目立たない様に、あの姿にしてる」
「………そ、そうだったんだ……」
「今は、柄悪い奴等との付き合いは無いぞ」
「ギャップが凄過ぎて、困惑してた……」
はこっち………お前にバレたから仕事中以外は隠さなくてもいいと思ってる」

 村雨は再び淹れた珈琲を飲み、2個目のパンに手を出す。

「ねぇ、何であの店に居たの?」
「飯食ってただけだぜ?近所だから、よく行く店だったし……」
「………でも、助かったわ……ありがとう」
「言ったろ?、て………知らない女だったら、助けたか如何か分からんな」

 告白の様な含みを込めているのに、一般的な言葉を続ける村雨。

 ―――何とか告白するタイミング見計らわねぇとな……

 告白する気にはなっている村雨だが、昨夜の延長での告白は違う気がした村雨だった。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私を抱かないと新曲ができないって本当ですか? 〜イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い〜

入海月子
恋愛
「君といると曲のアイディアが湧くんだ」 昔から大ファンで、好きで好きでたまらない 憧れのミュージシャン藤崎東吾。 その人が作曲するには私が必要だと言う。 「それってほんと?」 藤崎さんの新しい曲、藤崎さんの新しいアルバム。 「私がいればできるの?私を抱いたらできるの?」 絶対後悔するとわかってるのに、正気の沙汰じゃないとわかっているのに、私は頷いてしまった……。 ********************************************** 仕事を頑張る希とカリスマミュージシャン藤崎の 体から始まるキュンとくるラブストーリー。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

サイコパス社長の執着溺愛は異常です

鳴宮鶉子
恋愛
サイコパス社長の執着溺愛は異常です

Warp

樫野 珠代
恋愛
3年ぶりに大学時代のメンバーで集まる事になった楓。 そこには、3年前に不用意な言葉で傷つけてしまった女性、舞の存在が。 3年の月日を費やして再会を果たした二人は・・・。 番外編も順次up予定!

【完】経理部の女王様が落ちた先には

Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位 高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け ピンヒールの音を響かせ歩く “経理部の女王様” そんな女王様が落ちた先にいたのは 虫1匹も殺せないような男だった・・・。 ベリーズカフェ総合ランキング4位 2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位 2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位 関連物語 『ソレは、脱がさないで』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位 『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位 『初めてのベッドの上で珈琲を』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位 『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

処理中です...