9 / 21
9.
しおりを挟む
目を逸らしながら言えば彼方はきょとんとした表情で「俺ら付き合ってなんか、ないけど」と言った。
「は、はぁあ?なんで?お互い好きなんでしょ?なんで、付き合って……あぁ、そっか」
「なに?」
「男同士だから、みたいな変な壁があるんでしょどうせ。…そんなの、関係ないのにさ」
両想いなのにくっつかないって、なんなの?
見てるこっちがしんどい。いっその事早くくっついてくれたら、僕は諦めがつくのに。
「…そんなんじゃ、ない」
「そんなんじゃないなら何?…ねえ、もういい?理由は言ったよね?」
「もういいって、なんだよ!」
「…何に怒ってるのか知らないよ。だけど、僕これから奏多さんと会う約束してるから…遅れたくない」
「奏多って…また、またあいつかよ!俺とあいつ、どっちの方が大事なんだよ!」
叫ぶように言われ思わず彼方に決まってる、と言いそうになる口を閉じ言葉を飲み込んだ。
だめだ、これは言ったら、だめ。
一瞬の葛藤。
ふぅ…と息を吐いて彼方を見据える。
「…奏多さんだよ。だって、奏多さんは僕の好きな人だもん……報われなくてもさ、側にいるだけで幸せなの」
僕が言うこのカナタは、彼方なのか奏多さんなのかもう分からない。でもどっちでも彼方には関係ないよね。
ああ、嫌だな。泣いてしまいそうだ。
そんな顔を見られたくなくて俯くと、僕の肩を掴んでいた彼方の手に力が入る。
「…っ…辛いなら……、…辛いなら、俺にしろよ!」
「え…」
「俺なら、大和をこんな顔にはさせない!なあ、俺を選べよ…!」
「でも…彼方は水無月さんが…」
「あいつは、別に…」
…ああ、そっか。さっき付き合ってないって言ってたもんね。
もしかしたら水無月さんは抵抗がある人なのかもしれない。
好きだけじゃ、やっていけないんだね…。
「は、はぁあ?なんで?お互い好きなんでしょ?なんで、付き合って……あぁ、そっか」
「なに?」
「男同士だから、みたいな変な壁があるんでしょどうせ。…そんなの、関係ないのにさ」
両想いなのにくっつかないって、なんなの?
見てるこっちがしんどい。いっその事早くくっついてくれたら、僕は諦めがつくのに。
「…そんなんじゃ、ない」
「そんなんじゃないなら何?…ねえ、もういい?理由は言ったよね?」
「もういいって、なんだよ!」
「…何に怒ってるのか知らないよ。だけど、僕これから奏多さんと会う約束してるから…遅れたくない」
「奏多って…また、またあいつかよ!俺とあいつ、どっちの方が大事なんだよ!」
叫ぶように言われ思わず彼方に決まってる、と言いそうになる口を閉じ言葉を飲み込んだ。
だめだ、これは言ったら、だめ。
一瞬の葛藤。
ふぅ…と息を吐いて彼方を見据える。
「…奏多さんだよ。だって、奏多さんは僕の好きな人だもん……報われなくてもさ、側にいるだけで幸せなの」
僕が言うこのカナタは、彼方なのか奏多さんなのかもう分からない。でもどっちでも彼方には関係ないよね。
ああ、嫌だな。泣いてしまいそうだ。
そんな顔を見られたくなくて俯くと、僕の肩を掴んでいた彼方の手に力が入る。
「…っ…辛いなら……、…辛いなら、俺にしろよ!」
「え…」
「俺なら、大和をこんな顔にはさせない!なあ、俺を選べよ…!」
「でも…彼方は水無月さんが…」
「あいつは、別に…」
…ああ、そっか。さっき付き合ってないって言ってたもんね。
もしかしたら水無月さんは抵抗がある人なのかもしれない。
好きだけじゃ、やっていけないんだね…。
336
あなたにおすすめの小説
僕は今日、謳う
ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。
彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。
彼との最後の思い出が欲しかったから。
彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。
本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。
終始セリフばかりです。
話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。
名前が出てこない短編part4です。
誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。
途中手直しついでに加筆もするかもです。
感想もお待ちしています。
片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が!
あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。
私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。
【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。
キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。
声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。
「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」
ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。
失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。
全8話
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる