幼馴染がヤクザに嫁入り!?~忘れてなかった『約束』~

すずなり。

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思い出した『約束』。

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ーーーーー


(彩のやつ、店を出て行ったけど・・・ちゃんと帰れたのか?てか何で店に彩が・・?)


疑問に思うことはたくさんあるものの、『俺』を指名してきた客は結構な太客だったことからすぐに抜けれそうになかった。


(場内指名・・今日限りの指名で10万払うやつは羽振りがいい。後々面倒なことになる可能性も高いが・・取れるだけ取っておきたいとこだな。)


そう思って受けたのだ。


「雄介さぁぁん、次はいつ来ますー?その日に合わせて来ようかなー?」

「あ!じゃあその日にシャンパンタワー入れちゃう!?」

「それいい!そうしよ!・・・ね、雄介さん?」

「・・・それは嬉しいな、楽しみにしてるよ。」


ホストではない俺に一体いくら落とす気だろうと思いながら作り笑顔を向けてると、店の入り口が何やら騒がしくなっていた。

入口に目をやると、紙袋を手に持った彩がツカツカと歩いてくるのが見えたのだ。


「あっれー?さっき小銭だけ出して帰って行った負け犬じゃんー!」

「何ー?1円玉でも出し忘れて戻って来たー?あははっ!」


彩をバカにするように笑う女客二人。

そんな二人を放って彩を見てると、彩は俺たちがいるテーブルの前で足を止めた。


「私がゆうちゃんを買うからあなたたちは帰って。」


そう言って紙袋に手を入れ、中身を豪快に空にぶちまけた。


「は・・・!?」

「え!?なにこれ・・お金!?」

「すご・・いくらあるの・・・」


空を舞うのは最高金額の紙幣だ。

ひらひらと舞い落ちるのを見てる女客たちを他所に、彩はまた紙袋に手を入れて紙幣を空にぶちまけた。


「ちょ・・!彩っ・・・!」


空を舞った紙幣はテーブルや床に落ち、その紙幣の上にまた空から落ちてきた紙幣が重なっていく。

異様すぎる光景に俺は思わず椅子から立ち上がった。


「彩・・!ストップ!!」


止まらない彩の動きを止めようと手を伸ばした時、彩は紙袋をひっくりかえしてテーブルの上に札をぶちまけた。

あまりにも多い数に驚いてると、彩は女客たちを睨みつけたのだ。


「これで文句ないでしょう?ゆうちゃんは私と『約束』してるんだから邪魔しないで。」


その言葉を聞き、俺は彩と何の約束をしてるのかを思い出した。


(そうだ・・彩と別れるときに約束したことがあった・・・)


俺と別れるということを理解してなかった彩に『次に会うときは・・その時はずっと一緒にいる。』と約束したのだった。


「ははっ・・・!」


おじさんの言ってた『責任』と『約束』、それに『取引』という言葉に合点がいった俺は自分の髪の毛をかき上げた。


(そういうことか・・・。)


彩を守り切れなくなったおじさんは、俺と彩を再会させることで全てを解決しようとしたようだ。

俺の庇護下にいれば彩は誘拐されることはない。

そして彩の描く絵を俺が売れば収益になり、暴利をやめさせることができる。

彩は俺と会うことができ、全てが収まると踏んだのだ。


「これだけの金を払われたら、俺は彩に買われるしかないな。・・・じゃあ行こうか。」


目の前に落ちてる金の量に呆然とする女客たちを放って、俺は彩の手を取った。


「黒服、あの金、回収しとけよ。」

「はいっ!」


彩が持ってきた金の回収を命じ、彩の手を引きながら店の外に出る。


「彩、あの金どうした?」


さっきまで持ってなかった紙袋から、彩はこの数分であの金を手に入れてきたことになる。

近くに銀行のATMはあるものの、あんな金額、機械で下ろせるものではなかった。


「おじさんにもらったー。」

「おじさん?」

「東郷のおじさんー、今度お家の壁一面に絵を描く約束をして、その前金って言ってた。」

「前金であの金額・・・2000万くらいあったぞ?その東郷って何者・・・あ!」


俺は彩と会話をしながら『東郷』って名前を思い出した。

『東郷 秀次(ひでつぐ)』は・・・この国で唯一、最大数の会社を同時経営していた人物だ。


(総資産は何兆円って話だったな・・。世界の長者番付にも名前があったはず・・・。)


意外な人物との繋がりに驚きながらも、彩の絵を売ってるという相手が誰なのか知れたことは収穫だった。


「・・・彩、お前・・『約束』を覚えてたのか?」


車の場所まで手を引きながら聞くと、彩は首を傾げていた。


「忘れたことないよ?」

「あー・・そうだな、悪い。」


基本的に約束事を忘れない彩。

覚えてない時は『聞いてない』か『聞こえてない』かの二択だ。


(約束を覚えてたってことは・・彩は俺のこと・・・?)


そんなそぶりは全く見せない彩。

他の女たちはすり寄ってきたり言い寄ってきたりするけど・・・。


(まぁ、彩は他の女たちと違うからな・・・。)


独特な世界観で生きてる彩は、周りの理解を得る方が難しい。

小さいころから彩を見てきた俺は彩のことをよく知ってるから特に何も思わなかったのだ。


「ゆうちゃん、お家に帰るの?」


停めておいた車の場所に着いた俺は助手席の扉を開けて彩を乗せた。

シートベルトを締めさせ、俺は運転席に乗り込む。


「家・・・そうだな、俺の家行こう。」


彩本人にいろいろ聞きたいことがある俺は家でゆっくり聞こうと思い、車のエンジンをかけた。

ゆっくり走りだす車の窓から、彩は外の景色をじっと見てる。


「・・・あ、夕陽見たかったんだった。」


突然彩がそう呟いた。


「夕陽?」

「うん。公園の場所がわからなくなって、ゆうちゃんに道を教えてもらおうと思ったの。」

「それで店までついてきたのか・・・」


なぜ彩が俺の店がわかったのかと思っていたけど、彩の言葉で納得できた。

後をつけられた・・・わけではないけど、俺の後を追ってきたようだ。


「夕陽か。・・・今度連れてってやるよ。彩が行きたいとこでもいいし、どっか別のとこでもいいし。」

「うんっ。」


『約束』を思い出した俺は自分の気持ちに気がついていた。

彩と別れたあの時からずっと彩を忘れてなかったことも一つの引き金だ。


(初恋・・ではないと思うけど、もう覚えてないくらい昔から彩が好きだった。)


彩があの約束を守る気なら、彩は俺と一緒にいたいと思ってることになる。


(まぁ、時間はたくさんある。ゆっくり聞いていこうか。)


そう思いながら、窓の外を見てる彩を時折みながら、俺は自宅に向かったのだった。



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