溺愛モードな警察官彼氏はチョコレートより甘い!?

すずなり。

文字の大きさ
4 / 35

お願い。

しおりを挟む
ーーーーー



ーーーーー



交番に警察官が常駐するようになってひと月の時間が流れた。

近衛さんは相変わらず私が仕事に行く時間か帰る時間には立っていて、挨拶をしてくれている。

『おはようございます。』『行ってらっしゃい。』『お疲れ様です。』の言葉に慣れ、近衛さんが休みの日はなんだか物足りなくなってきてる自分がいた。

誰かに挨拶をするということは、何気ない日常にメリハリをくれてるみたいだ。


「・・・店頭販売の告知を出したら・・・売れたりするかな?」


仕事をしていたある日、私はそんなことを思った。

配送でしか販売をしてない『ベアーズ』のチョコ。

冷蔵での配送料や梱包代なんかを上乗せしてのネット販売金額は、店頭で売ればその分安く販売することができる。

ネットで告知を大量に出せば、買いに来てくれる人が数人いるかもしれないのだ。


「一つは2000円のままで行くべき?それとも何かノベルティつけるとか?赤字覚悟で値引きして売る?」


いろいろ考えながら、とりあえず試作を作ってみることにした。

私が売ってるチョコは味が一つの種類しかないことから、ビターなタイプやホワイトチョコタイプ、ストロベリー風味なんかも作ってみて、試食を重ねていく。

でもいくつも食べるからか舌が馬鹿になってしまい、いまいちよくわからなくなっていってしまったのだ。


「うーん・・・お兄ちゃんはチョコはあまり好きじゃないから協力はしてくれないだろうなぁ・・・。近所に知り合いもいないし・・・。」


誰かに試食をしてもらいたいと思ったとき、ふと交番が頭に浮かんだ。

近衛さんと一緒にいる三橋さんが結構年上に見えたことから、もしかしたらお子さんがいるんじゃないかと思ったのだ。


「・・・聞いてみよう。もし、娘さんがいたら食べてもらいたいし・・。」


そう決め、私は試作をいくつか箱に詰めて仕事を早い目に切り上げた。

いつもなら23時前後に仕事場を出るけど、少し早めの20時に出て交番に向かう。

人通りが多い時間に帰路につくのは久しぶりで、賑やかな帰路に少しそわそわしてしまう自分がいた。


「いつも閉まってるお店が開いてる・・・ふぁ・・・!ここ、雑貨屋さんだったんだ・・・!」


新しい発見をしながら歩いていき、私は交番に到着した。

いつもなら通過する交番の扉を開けるのは、今日が初めてのことだ。


「し・・失礼します・・・・?」


どきどきしながら横開きの扉を開けると、中には誰もいなかった。

電気はついてるものの、がらんとしてる。


「えと・・・すっ・・すみませーんっ・・・!」


扉の鍵がかかってなかったことから誰かはいると思って大きな声を出すと、交番の奥からバタバタと走って来る足音が聞こえてきた。

そして奥に通じてそうな扉がガチャっと開いた。


「お待たせしましたー・・・って、あれ?来間さん?」


扉から出てきたのは近衛さんだった。

奥でお仕事をされていたのかいつもかぶってる帽子がなく、なんだか違う人に見えてしまう。


「あ・・・あの、三橋さんっていらっしゃいますか・・?」

「三橋?いるけど・・・どうかした?」

「ちょっとご相談・・・みたいな?」

「?・・・ちょっと待ってて?」


男の人は甘いものが苦手な人が多い。

特に私のチョコは若い女性向けに作ってあるから『甘い』ということだけは自信がある。

そんなチョコを『食べて欲しい』なんて近衛さんに言えるはずもなく、三橋さんを呼んでもらうことに・・・。


(いや、三橋さんにお子さんがいなかったらそもそも無理なお願いになってくるんだけど・・・。)


そんなことを考えてると、奥に通じてる扉から三橋さんが出てきた。

穏やかな顔つきに、少しの希望を抱いてしまう。


「どうしました?来間さん。」

「あの・・・ぶしつけな質問なんですけど・・・」

「うん?」

「三橋さんって・・・むっ・・娘さんとか・・・いらっしゃいませんか・・・?」

「へ?娘?」


『いる』という返事を期待しながら三橋さんを見つめてると、三橋さんは近衛さんと目を合わせた。

そして・・私を見た。


「いるよ?娘。」

「!!・・・いっ・・いくつくらいの・・・・?」


ここで『5歳』とか言われたら『お願い』はしにくくなる。

でも奥様に・・とか同時に思ってしまう自分がいる。


「今年19になるよ?」

「19歳!!」

「う・・うん。娘がどうかした?」


ちょうどいい年齢に、私は持ってきた箱を三橋さんに差し出した。


「すみません、ちょっと娘さんに協力していただきたくて・・・」

「協力?」


私は試作でノベルティ用のチョコを作ってることを三橋さんに説明した。

女性向けの甘いチョコなことから、兄には頼めないことや、この交番のお二人にも頼めないこと、三橋さんに娘さんがいたら頼めるんじゃないかと思ったことなんかを。


「なるほど。うちの娘はちょっと曲者だから基準になるかはわからないけど・・・それでもいいかな?」

「もっ・・もちろんです・・・!率直な意見が欲しいのでお願いします・・・!」

「了解。・・・ちなみに近衛くんも甘いの好きだけど・・・そこは聞かなくて大丈夫かい?」


そう言われ、私は思わず近衛さんを見てしまった。

その近衛さんは驚いたような顔をしながら三橋さんを見てる。


「ちょ・・・!え!?なんで知っ・・・!?」

「ははっ。数も結構あるみたいだし、彼にもお願いしていいかな?」


そう聞かれ、私は首を縦に振ることしかできなかった。

『真面目』が服を着てるような印象を持っていた近衛さんが、顔を赤くしながら動揺してる姿に『意外』の二文字しか浮かばなかったのだ。


「あっ・・・いくつか入ってますけど、味は3種類なんです。ビターとホワイトとストロベリーで、どれが好みだったかとか、濃さとか・・・思ったことをメモにしていただけたら助かります。」

「了解。数日時間をいただいてもいいかな?僕も食べてみたいし。」

「はいっ!よろしくお願いします!」


私は作った試作品を全て三橋さんに預け、交番を後にしたのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

仮面夫婦のはずが執着溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
仮面夫婦のはずが執着溺愛されちゃいました

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...