異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。

文字の大きさ
57 / 61

【番外編】ニゲラの出張。

しおりを挟む
ーーーーー


こんにちは。すずなり。です。

2023年2月24日20時現在、アルファポリス内の小説コンテストにこちらのお話を参加させていただいてるのですが、みなさまのおかげで思いのほか順位が上がってきております。

これをチャンスと思い、コンテストの条件である『50000文字追加』にチャレンジしてみようと思って番外編を考えてみました。

今朝から練り始めたお話なのですが、楽しんでいただけたら幸いです。



ーーーーー



ーーーーー






「とぅさーん!今日からニゲラが出張でいないからこっちに来てていいー?」


ニゲラが仕事で三日間、山の奥に出向くことになり、私は実家であるシャガの家に来た。

服をいくつか入れた少し大きめの鞄と一緒だ。


「アイビー!?おま・・・来るなら来るって先に連絡しろよ・・。」

「えー?連絡なんていらないでしょ?足りないものがあれば買いにいけばいいんだし。」


この家で私が増えて困ること言えば食事くらいだ。

足りないなら街に買いに行けばいいだけのこと。


「まぁ、そうなんだが・・・」


そう言ったシャガの向こう側に少し大きめの鞄が見える。

その見慣れない大きさに、私の心がざわついた。


「え・・どこか行くの?」


そう聞くとシャガは気まずそうにそのかばんを家の隅に隠しにいった。


「いや、なんでもない。」

「ほんとに?」

「・・・。」


私はシャガが隠した鞄のところにいき、その中身を見た。

すると中には服が何枚かと、携帯食が入っていたのだ。


「・・・遠出するの?」


今まで山の奥に行くことはあっても代えの服や携帯食なんて持っていくことはなかったシャガ。

お腹が空いたら木の実を食べたり、仕留めた獣を食べたりするのにわざわざ携帯食を持っていくことに不安を覚えた。


「・・・お前もニゲラと一緒になったし、ちょっと遠くの景色でも見に行こうかと思っただけだ。」

「遠くの景色?」

「あぁ。」


シャガは少し遠くを見るように視線を上げた。


「あれは・・・お前を拾う2年前のことだ。」




ーーーーー



アイビーと出会う2年前、俺には想う人がいた。

名前は『リナリア』。

明るい茶色の髪の毛に、濃い茶色の瞳を持った背の高い女だった。

面倒見がよくて、よく笑っていて・・・・白い服と明るい花がよく似合っていた。


「シャガー!山の中にある湖まで遊びに行こうよー!」

「あぁ、いいぞ。」


身軽なリナリアは荷物を背中に背負い、ひょいひょいと山を駆け上がっていく。

その後ろをついていくようにして俺はリナリアが落ちないように守っていた。


「ふふっ、落ちるわけないでしょー?この私が!」

「まぁそうだろうけど、もしもの為だから気にするな。」


木の枝にぶら下がり、ひょいひょいと上がっていくリナリア。

競争を仕掛けられてる気がして、俺も追いかけていく。


「先に湖の水に触れたほうが勝ちね!負けたらお願い聞いてよー?」

「!!・・・望むところだ!」


笑いながら走っていくリナリアがきれいで、俺は見惚れながら走っていった。

ほどなくして見えてきた湖だけど、最初から勝つ気がない俺はリナリアの願いが何なのかを考えることに重きを置いていた。

欲しい物があるのか、どこか見たいものでもあるのか・・・何を言ってくれるのか楽しみだった。


「いっちばーん!!・・・私の勝ちね?ふふ。」

「あー・・・負けた負けた。」


水を手ですくい、空にまき散らすリナリア。

きらきらと舞い落ちる水滴がリナリアの髪の毛にあたり、太陽にさらされて一段ときれいに見えた。


「で?願いはなんだ?」


近くにあった大きい岩に腰かけて聞くと、リナリアは嬉しそうに笑いながら言った。


「へへっ!・・・うーん・・私の耳飾り、作ってくれない?」

「・・・は!?」

「シャガと一緒にいるのが凄く楽しいし、ずっと一緒に居たいって思うのはシャガだけだからさ。他の人に求婚される前にシャガの色で耳飾りつけておきたいなーって思って。」


リナリアは街で一番の器量良しだ。

成人した瞬間に求婚の嵐が来ることは間違いない。


「俺でいいのか?」

「シャガがいいんだってば!一緒に山に登ってくれる男なんていないし、私が山に登ることを絶対嫌がるでしょー・・・。」


基本的に男の立場が弱いこの世界だけど、女の人は家にいることが多い。

家のことをしたり、子供の世話をしたりとかで忙しいのだ。

だから山になんて登らない女が殆どだ。


「俺は山で仕事してるようなもんだからな。」

「いいよねー、私も熊退治とか狼退治の仕事してみたいー。」

「お前は街で仕事あるだろう。」

「そうだけどー・・・。」


リナリアの仕事は学者だった。

この世界の地形を研究する学者で、山崩れや川が氾濫する場所を事が起こる前に予測することができる。

そのおかげで大雨が降っても街に被害がでることがないのだ。


「ずっと仕事続けて誰の求婚も受けないって手もあるんじゃないか?」


正直誰かのものになるくらいだったら仕事を貫いてくれた方がマシだと思った。

山登りが好きだからいつでも俺が付き合うし、側にいれるなら仕事一筋でいいと思ったのだ。


「それも考えたけどー・・・。」

「なんだ?他に何かあるのか?」

「むー・・。」

「?」


向くれるようにしてリナリアは湖のほとりに座った。

靴を脱ぎ、足を湖につけて蹴り飛ばしてる。


「地形を見に遠出もしないといけないでしょ?できれば一緒についてきてくれる人がいたらいいなーとかも思うわけよ!」

「なんだ寂しいのか?」

「寂しいってわけでもないけどぉー。一つのところに留まらないで世界を見て回るのって楽しいじゃん?」

「まぁ・・・そうかもしれないな。」


この世界には知らないものがたくさんある。

それを知るために自分の足で見て回るのも悪くないことだと俺は思った。


「でしょ!?だからいちいち求婚されてたら面倒だからさ、シャガの色で耳飾り作ってくれたら『私はシャガのもの』って見せつけれるから誰も求婚して来ないじゃん!」

「あー・・・なるほど。」

「私とシャガが一緒に遊んでるのはみんなが知ってることだし!」

「あー・・・。」


小さいころから一緒にいた俺たちは周りから見たら恋仲に見えるかもしれない。

カモフラージュするにはちょうどいいとリナリアは考えたのだろう。


「ね!お願い!」

「・・・。」


俺はリナリアの願いをきくかどうか悩んでいた。

ここで『いいよ』と言えば、リナリアは俺の髪色の耳飾りをつけることになる。

それは恋仲を意味し、リナリアが俺を受け入れたことになるのだ。

リナリアの月のモノが来ない限りリナリアに触れる者は現れない。

それは俺にとって好都合だけど・・・


(リナリアは俺のこと、微塵も想ってないんだよなぁ・・。)


抱いてもいないのに耳飾りをつけてもらうのは、男として悲しいものがあった。


(どうしようか・・・。)


悩みに悩んでる時、山の奥から轟音が聞こえた。

ゴゴゴゴ・・・・と、地面全体が動いてるような音だ。


「!!・・・大変!ちょっと見に行ってくる!!」

「俺も行く!!」


すぐに靴を履いて準備をしたリナリアは、岩を飛び越えて音のしたほうに駆けていった。

さっきまでは加減しながらリナリアと山を登っていた俺だったが、今はリナリアの安全を守りながら少し先を駆けていく。


「予兆はあったのか!?」

「いいえ!!ないわ!!」

「どのあたりだ!?」

「まだこの向こう!!もう少し北!!」

「了解!!」


言われた方角を見ながら走ると、遥か向こうで・・・山のてっぺんが崩れていくのが見えた。

地面が緩んでいたのか、結構な大きさで地滑りが起こってる。


「あの向こうは何がある!?」

「街はないわ!!あるのは林だけ!!」

「人は!?」

「いないと思う!!でも多分よ!!」


万が一人がいたときのことを想定しながら駆けていくうちに地滑りはその勢いを落としていった。

平坦な地面のところに土が溜まってるのが見える。


「大丈夫そうか・・・!?」


滑り切った地滑りの土の上に立ち、俺たちは誰か人がいないか探して回った。

幸いにも誰もいなかったようで、人がいた痕跡や、助けを求める声はない。


「かなり奥だから人は来ないよね・・・。」

「そうみたいだな。」


それでも探しながら辺りをうろうろしてると、リナリアが大きな声で俺を呼んだ。


「シャガ!!見てーっ!!」

「?」


リナリアのほうに振り返ると、そこに、崩れた山のてっぺんが見えていた。

欠けた部分から覗いてるのは青空で、てっぺんに薄っすら七色の輪っかがあったのだ。


「あれは・・・なんだ?」

「あそこに湖があるのよ!行ってみようよ!!」

「え!?あっ・・・!おいっ・・・!!」


嬉しそうに駆けていくリナリアの後ろをついて山のてっぺんまで上がると、そこに大きな湖があった。

どうやら水気があって山が崩れてしまったようだ。


「わぁ・・・!すごいね!きれい!!」

「ほんとだな・・・。」


山の中にあった水でできた湖だからか、今まで見たことがない色の湖だった。

どこまでも透き通って見える水は空の色を映していて青々としてる。


「ふふっ・・・!私たちが最初に見つけたんだから名前を付ける権利があるよ!!なんて名前にする!?」

「えぇぇぇ・・・急に言われてもな・・・。」

「こんなの思いついた言葉がいいのよ!深く考えないで!!」

「そういうものなのか?」


俺はあまりない頭の中身を目いっぱい回転させて言葉を探した。


「あー・・・こういうのは学者のお前が得意だろう・・・っ!?」

「私はいくつかつけてるからもういいもんっ、シャガが決めてよ!」

「えぇぇぇ・・・。」


リナリアに言われて俺は目を閉じた。

今、ここで、思いつく言葉を一つ口に出してみる。


「・・・『リナリア』。」

「?」

「『リナリア』って名前の湖がいい。どうだ?」


そう聞くとリナリアは顔を真っ赤にした。


「なっ・・!どうして私の名前なのよ!!」

「え?だってお前と見つけた湖だし?いいだろ?」

「!?!?よくないっ!!」

「お前がよくなくても俺はいいの。だから『リナリア』。ちゃんと登録しておいてくれよ?」

「~~~~っ!・・・はぁ・・わかったわよ!!」


リナリアは最後、『仕方ない』と言った感じで諦めてくれた。

俺は汚れのない湖『リナリア』を見つめながら、願をかける。


(リナリアが幸せに過ごせますように・・・。)


そう思ったのだった。




ーーーーー



「え、とぅさん、好きな人がいたの!?」


アイビーにここまで話をしたあと、俺は黒い実を入れに台所に向かった。

アイビーは自分用にとちゃんと白い実を持ってきたようで、鞄から出して準備をしてる。


「あぁ。お前よりお転婆なやつだったぞ?」

「私を比較対象にしないでよ・・・。」

「ははっ。」


俺は自分の分の黒い実と、アイビーの分の黒い実・・・コーヒーを準備してアイビーに手渡した。


「えーと・・どこまで話したかな・・・。」

「湖見つけたとこ!」

「あぁ、そうだった。そのあとだな。」


黒い実を一口飲み、俺はまた昔話を始めた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...