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【番外編】ニゲラの出張。
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こんにちは。すずなり。です。
2023年2月24日20時現在、アルファポリス内の小説コンテストにこちらのお話を参加させていただいてるのですが、みなさまのおかげで思いのほか順位が上がってきております。
これをチャンスと思い、コンテストの条件である『50000文字追加』にチャレンジしてみようと思って番外編を考えてみました。
今朝から練り始めたお話なのですが、楽しんでいただけたら幸いです。
ーーーーー
ーーーーー
「とぅさーん!今日からニゲラが出張でいないからこっちに来てていいー?」
ニゲラが仕事で三日間、山の奥に出向くことになり、私は実家であるシャガの家に来た。
服をいくつか入れた少し大きめの鞄と一緒だ。
「アイビー!?おま・・・来るなら来るって先に連絡しろよ・・。」
「えー?連絡なんていらないでしょ?足りないものがあれば買いにいけばいいんだし。」
この家で私が増えて困ること言えば食事くらいだ。
足りないなら街に買いに行けばいいだけのこと。
「まぁ、そうなんだが・・・」
そう言ったシャガの向こう側に少し大きめの鞄が見える。
その見慣れない大きさに、私の心がざわついた。
「え・・どこか行くの?」
そう聞くとシャガは気まずそうにそのかばんを家の隅に隠しにいった。
「いや、なんでもない。」
「ほんとに?」
「・・・。」
私はシャガが隠した鞄のところにいき、その中身を見た。
すると中には服が何枚かと、携帯食が入っていたのだ。
「・・・遠出するの?」
今まで山の奥に行くことはあっても代えの服や携帯食なんて持っていくことはなかったシャガ。
お腹が空いたら木の実を食べたり、仕留めた獣を食べたりするのにわざわざ携帯食を持っていくことに不安を覚えた。
「・・・お前もニゲラと一緒になったし、ちょっと遠くの景色でも見に行こうかと思っただけだ。」
「遠くの景色?」
「あぁ。」
シャガは少し遠くを見るように視線を上げた。
「あれは・・・お前を拾う2年前のことだ。」
ーーーーー
アイビーと出会う2年前、俺には想う人がいた。
名前は『リナリア』。
明るい茶色の髪の毛に、濃い茶色の瞳を持った背の高い女だった。
面倒見がよくて、よく笑っていて・・・・白い服と明るい花がよく似合っていた。
「シャガー!山の中にある湖まで遊びに行こうよー!」
「あぁ、いいぞ。」
身軽なリナリアは荷物を背中に背負い、ひょいひょいと山を駆け上がっていく。
その後ろをついていくようにして俺はリナリアが落ちないように守っていた。
「ふふっ、落ちるわけないでしょー?この私が!」
「まぁそうだろうけど、もしもの為だから気にするな。」
木の枝にぶら下がり、ひょいひょいと上がっていくリナリア。
競争を仕掛けられてる気がして、俺も追いかけていく。
「先に湖の水に触れたほうが勝ちね!負けたらお願い聞いてよー?」
「!!・・・望むところだ!」
笑いながら走っていくリナリアがきれいで、俺は見惚れながら走っていった。
ほどなくして見えてきた湖だけど、最初から勝つ気がない俺はリナリアの願いが何なのかを考えることに重きを置いていた。
欲しい物があるのか、どこか見たいものでもあるのか・・・何を言ってくれるのか楽しみだった。
「いっちばーん!!・・・私の勝ちね?ふふ。」
「あー・・・負けた負けた。」
水を手ですくい、空にまき散らすリナリア。
きらきらと舞い落ちる水滴がリナリアの髪の毛にあたり、太陽にさらされて一段ときれいに見えた。
「で?願いはなんだ?」
近くにあった大きい岩に腰かけて聞くと、リナリアは嬉しそうに笑いながら言った。
「へへっ!・・・うーん・・私の耳飾り、作ってくれない?」
「・・・は!?」
「シャガと一緒にいるのが凄く楽しいし、ずっと一緒に居たいって思うのはシャガだけだからさ。他の人に求婚される前にシャガの色で耳飾りつけておきたいなーって思って。」
リナリアは街で一番の器量良しだ。
成人した瞬間に求婚の嵐が来ることは間違いない。
「俺でいいのか?」
「シャガがいいんだってば!一緒に山に登ってくれる男なんていないし、私が山に登ることを絶対嫌がるでしょー・・・。」
基本的に男の立場が弱いこの世界だけど、女の人は家にいることが多い。
家のことをしたり、子供の世話をしたりとかで忙しいのだ。
だから山になんて登らない女が殆どだ。
「俺は山で仕事してるようなもんだからな。」
「いいよねー、私も熊退治とか狼退治の仕事してみたいー。」
「お前は街で仕事あるだろう。」
「そうだけどー・・・。」
リナリアの仕事は学者だった。
この世界の地形を研究する学者で、山崩れや川が氾濫する場所を事が起こる前に予測することができる。
そのおかげで大雨が降っても街に被害がでることがないのだ。
「ずっと仕事続けて誰の求婚も受けないって手もあるんじゃないか?」
正直誰かのものになるくらいだったら仕事を貫いてくれた方がマシだと思った。
山登りが好きだからいつでも俺が付き合うし、側にいれるなら仕事一筋でいいと思ったのだ。
「それも考えたけどー・・・。」
「なんだ?他に何かあるのか?」
「むー・・。」
「?」
向くれるようにしてリナリアは湖のほとりに座った。
靴を脱ぎ、足を湖につけて蹴り飛ばしてる。
「地形を見に遠出もしないといけないでしょ?できれば一緒についてきてくれる人がいたらいいなーとかも思うわけよ!」
「なんだ寂しいのか?」
「寂しいってわけでもないけどぉー。一つのところに留まらないで世界を見て回るのって楽しいじゃん?」
「まぁ・・・そうかもしれないな。」
この世界には知らないものがたくさんある。
それを知るために自分の足で見て回るのも悪くないことだと俺は思った。
「でしょ!?だからいちいち求婚されてたら面倒だからさ、シャガの色で耳飾り作ってくれたら『私はシャガのもの』って見せつけれるから誰も求婚して来ないじゃん!」
「あー・・・なるほど。」
「私とシャガが一緒に遊んでるのはみんなが知ってることだし!」
「あー・・・。」
小さいころから一緒にいた俺たちは周りから見たら恋仲に見えるかもしれない。
カモフラージュするにはちょうどいいとリナリアは考えたのだろう。
「ね!お願い!」
「・・・。」
俺はリナリアの願いをきくかどうか悩んでいた。
ここで『いいよ』と言えば、リナリアは俺の髪色の耳飾りをつけることになる。
それは恋仲を意味し、リナリアが俺を受け入れたことになるのだ。
リナリアの月のモノが来ない限りリナリアに触れる者は現れない。
それは俺にとって好都合だけど・・・
(リナリアは俺のこと、微塵も想ってないんだよなぁ・・。)
抱いてもいないのに耳飾りをつけてもらうのは、男として悲しいものがあった。
(どうしようか・・・。)
悩みに悩んでる時、山の奥から轟音が聞こえた。
ゴゴゴゴ・・・・と、地面全体が動いてるような音だ。
「!!・・・大変!ちょっと見に行ってくる!!」
「俺も行く!!」
すぐに靴を履いて準備をしたリナリアは、岩を飛び越えて音のしたほうに駆けていった。
さっきまでは加減しながらリナリアと山を登っていた俺だったが、今はリナリアの安全を守りながら少し先を駆けていく。
「予兆はあったのか!?」
「いいえ!!ないわ!!」
「どのあたりだ!?」
「まだこの向こう!!もう少し北!!」
「了解!!」
言われた方角を見ながら走ると、遥か向こうで・・・山のてっぺんが崩れていくのが見えた。
地面が緩んでいたのか、結構な大きさで地滑りが起こってる。
「あの向こうは何がある!?」
「街はないわ!!あるのは林だけ!!」
「人は!?」
「いないと思う!!でも多分よ!!」
万が一人がいたときのことを想定しながら駆けていくうちに地滑りはその勢いを落としていった。
平坦な地面のところに土が溜まってるのが見える。
「大丈夫そうか・・・!?」
滑り切った地滑りの土の上に立ち、俺たちは誰か人がいないか探して回った。
幸いにも誰もいなかったようで、人がいた痕跡や、助けを求める声はない。
「かなり奥だから人は来ないよね・・・。」
「そうみたいだな。」
それでも探しながら辺りをうろうろしてると、リナリアが大きな声で俺を呼んだ。
「シャガ!!見てーっ!!」
「?」
リナリアのほうに振り返ると、そこに、崩れた山のてっぺんが見えていた。
欠けた部分から覗いてるのは青空で、てっぺんに薄っすら七色の輪っかがあったのだ。
「あれは・・・なんだ?」
「あそこに湖があるのよ!行ってみようよ!!」
「え!?あっ・・・!おいっ・・・!!」
嬉しそうに駆けていくリナリアの後ろをついて山のてっぺんまで上がると、そこに大きな湖があった。
どうやら水気があって山が崩れてしまったようだ。
「わぁ・・・!すごいね!きれい!!」
「ほんとだな・・・。」
山の中にあった水でできた湖だからか、今まで見たことがない色の湖だった。
どこまでも透き通って見える水は空の色を映していて青々としてる。
「ふふっ・・・!私たちが最初に見つけたんだから名前を付ける権利があるよ!!なんて名前にする!?」
「えぇぇぇ・・・急に言われてもな・・・。」
「こんなの思いついた言葉がいいのよ!深く考えないで!!」
「そういうものなのか?」
俺はあまりない頭の中身を目いっぱい回転させて言葉を探した。
「あー・・・こういうのは学者のお前が得意だろう・・・っ!?」
「私はいくつかつけてるからもういいもんっ、シャガが決めてよ!」
「えぇぇぇ・・・。」
リナリアに言われて俺は目を閉じた。
今、ここで、思いつく言葉を一つ口に出してみる。
「・・・『リナリア』。」
「?」
「『リナリア』って名前の湖がいい。どうだ?」
そう聞くとリナリアは顔を真っ赤にした。
「なっ・・!どうして私の名前なのよ!!」
「え?だってお前と見つけた湖だし?いいだろ?」
「!?!?よくないっ!!」
「お前がよくなくても俺はいいの。だから『リナリア』。ちゃんと登録しておいてくれよ?」
「~~~~っ!・・・はぁ・・わかったわよ!!」
リナリアは最後、『仕方ない』と言った感じで諦めてくれた。
俺は汚れのない湖『リナリア』を見つめながら、願をかける。
(リナリアが幸せに過ごせますように・・・。)
そう思ったのだった。
ーーーーー
「え、とぅさん、好きな人がいたの!?」
アイビーにここまで話をしたあと、俺は黒い実を入れに台所に向かった。
アイビーは自分用にとちゃんと白い実を持ってきたようで、鞄から出して準備をしてる。
「あぁ。お前よりお転婆なやつだったぞ?」
「私を比較対象にしないでよ・・・。」
「ははっ。」
俺は自分の分の黒い実と、アイビーの分の黒い実・・・コーヒーを準備してアイビーに手渡した。
「えーと・・どこまで話したかな・・・。」
「湖見つけたとこ!」
「あぁ、そうだった。そのあとだな。」
黒い実を一口飲み、俺はまた昔話を始めた。
こんにちは。すずなり。です。
2023年2月24日20時現在、アルファポリス内の小説コンテストにこちらのお話を参加させていただいてるのですが、みなさまのおかげで思いのほか順位が上がってきております。
これをチャンスと思い、コンテストの条件である『50000文字追加』にチャレンジしてみようと思って番外編を考えてみました。
今朝から練り始めたお話なのですが、楽しんでいただけたら幸いです。
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「とぅさーん!今日からニゲラが出張でいないからこっちに来てていいー?」
ニゲラが仕事で三日間、山の奥に出向くことになり、私は実家であるシャガの家に来た。
服をいくつか入れた少し大きめの鞄と一緒だ。
「アイビー!?おま・・・来るなら来るって先に連絡しろよ・・。」
「えー?連絡なんていらないでしょ?足りないものがあれば買いにいけばいいんだし。」
この家で私が増えて困ること言えば食事くらいだ。
足りないなら街に買いに行けばいいだけのこと。
「まぁ、そうなんだが・・・」
そう言ったシャガの向こう側に少し大きめの鞄が見える。
その見慣れない大きさに、私の心がざわついた。
「え・・どこか行くの?」
そう聞くとシャガは気まずそうにそのかばんを家の隅に隠しにいった。
「いや、なんでもない。」
「ほんとに?」
「・・・。」
私はシャガが隠した鞄のところにいき、その中身を見た。
すると中には服が何枚かと、携帯食が入っていたのだ。
「・・・遠出するの?」
今まで山の奥に行くことはあっても代えの服や携帯食なんて持っていくことはなかったシャガ。
お腹が空いたら木の実を食べたり、仕留めた獣を食べたりするのにわざわざ携帯食を持っていくことに不安を覚えた。
「・・・お前もニゲラと一緒になったし、ちょっと遠くの景色でも見に行こうかと思っただけだ。」
「遠くの景色?」
「あぁ。」
シャガは少し遠くを見るように視線を上げた。
「あれは・・・お前を拾う2年前のことだ。」
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アイビーと出会う2年前、俺には想う人がいた。
名前は『リナリア』。
明るい茶色の髪の毛に、濃い茶色の瞳を持った背の高い女だった。
面倒見がよくて、よく笑っていて・・・・白い服と明るい花がよく似合っていた。
「シャガー!山の中にある湖まで遊びに行こうよー!」
「あぁ、いいぞ。」
身軽なリナリアは荷物を背中に背負い、ひょいひょいと山を駆け上がっていく。
その後ろをついていくようにして俺はリナリアが落ちないように守っていた。
「ふふっ、落ちるわけないでしょー?この私が!」
「まぁそうだろうけど、もしもの為だから気にするな。」
木の枝にぶら下がり、ひょいひょいと上がっていくリナリア。
競争を仕掛けられてる気がして、俺も追いかけていく。
「先に湖の水に触れたほうが勝ちね!負けたらお願い聞いてよー?」
「!!・・・望むところだ!」
笑いながら走っていくリナリアがきれいで、俺は見惚れながら走っていった。
ほどなくして見えてきた湖だけど、最初から勝つ気がない俺はリナリアの願いが何なのかを考えることに重きを置いていた。
欲しい物があるのか、どこか見たいものでもあるのか・・・何を言ってくれるのか楽しみだった。
「いっちばーん!!・・・私の勝ちね?ふふ。」
「あー・・・負けた負けた。」
水を手ですくい、空にまき散らすリナリア。
きらきらと舞い落ちる水滴がリナリアの髪の毛にあたり、太陽にさらされて一段ときれいに見えた。
「で?願いはなんだ?」
近くにあった大きい岩に腰かけて聞くと、リナリアは嬉しそうに笑いながら言った。
「へへっ!・・・うーん・・私の耳飾り、作ってくれない?」
「・・・は!?」
「シャガと一緒にいるのが凄く楽しいし、ずっと一緒に居たいって思うのはシャガだけだからさ。他の人に求婚される前にシャガの色で耳飾りつけておきたいなーって思って。」
リナリアは街で一番の器量良しだ。
成人した瞬間に求婚の嵐が来ることは間違いない。
「俺でいいのか?」
「シャガがいいんだってば!一緒に山に登ってくれる男なんていないし、私が山に登ることを絶対嫌がるでしょー・・・。」
基本的に男の立場が弱いこの世界だけど、女の人は家にいることが多い。
家のことをしたり、子供の世話をしたりとかで忙しいのだ。
だから山になんて登らない女が殆どだ。
「俺は山で仕事してるようなもんだからな。」
「いいよねー、私も熊退治とか狼退治の仕事してみたいー。」
「お前は街で仕事あるだろう。」
「そうだけどー・・・。」
リナリアの仕事は学者だった。
この世界の地形を研究する学者で、山崩れや川が氾濫する場所を事が起こる前に予測することができる。
そのおかげで大雨が降っても街に被害がでることがないのだ。
「ずっと仕事続けて誰の求婚も受けないって手もあるんじゃないか?」
正直誰かのものになるくらいだったら仕事を貫いてくれた方がマシだと思った。
山登りが好きだからいつでも俺が付き合うし、側にいれるなら仕事一筋でいいと思ったのだ。
「それも考えたけどー・・・。」
「なんだ?他に何かあるのか?」
「むー・・。」
「?」
向くれるようにしてリナリアは湖のほとりに座った。
靴を脱ぎ、足を湖につけて蹴り飛ばしてる。
「地形を見に遠出もしないといけないでしょ?できれば一緒についてきてくれる人がいたらいいなーとかも思うわけよ!」
「なんだ寂しいのか?」
「寂しいってわけでもないけどぉー。一つのところに留まらないで世界を見て回るのって楽しいじゃん?」
「まぁ・・・そうかもしれないな。」
この世界には知らないものがたくさんある。
それを知るために自分の足で見て回るのも悪くないことだと俺は思った。
「でしょ!?だからいちいち求婚されてたら面倒だからさ、シャガの色で耳飾り作ってくれたら『私はシャガのもの』って見せつけれるから誰も求婚して来ないじゃん!」
「あー・・・なるほど。」
「私とシャガが一緒に遊んでるのはみんなが知ってることだし!」
「あー・・・。」
小さいころから一緒にいた俺たちは周りから見たら恋仲に見えるかもしれない。
カモフラージュするにはちょうどいいとリナリアは考えたのだろう。
「ね!お願い!」
「・・・。」
俺はリナリアの願いをきくかどうか悩んでいた。
ここで『いいよ』と言えば、リナリアは俺の髪色の耳飾りをつけることになる。
それは恋仲を意味し、リナリアが俺を受け入れたことになるのだ。
リナリアの月のモノが来ない限りリナリアに触れる者は現れない。
それは俺にとって好都合だけど・・・
(リナリアは俺のこと、微塵も想ってないんだよなぁ・・。)
抱いてもいないのに耳飾りをつけてもらうのは、男として悲しいものがあった。
(どうしようか・・・。)
悩みに悩んでる時、山の奥から轟音が聞こえた。
ゴゴゴゴ・・・・と、地面全体が動いてるような音だ。
「!!・・・大変!ちょっと見に行ってくる!!」
「俺も行く!!」
すぐに靴を履いて準備をしたリナリアは、岩を飛び越えて音のしたほうに駆けていった。
さっきまでは加減しながらリナリアと山を登っていた俺だったが、今はリナリアの安全を守りながら少し先を駆けていく。
「予兆はあったのか!?」
「いいえ!!ないわ!!」
「どのあたりだ!?」
「まだこの向こう!!もう少し北!!」
「了解!!」
言われた方角を見ながら走ると、遥か向こうで・・・山のてっぺんが崩れていくのが見えた。
地面が緩んでいたのか、結構な大きさで地滑りが起こってる。
「あの向こうは何がある!?」
「街はないわ!!あるのは林だけ!!」
「人は!?」
「いないと思う!!でも多分よ!!」
万が一人がいたときのことを想定しながら駆けていくうちに地滑りはその勢いを落としていった。
平坦な地面のところに土が溜まってるのが見える。
「大丈夫そうか・・・!?」
滑り切った地滑りの土の上に立ち、俺たちは誰か人がいないか探して回った。
幸いにも誰もいなかったようで、人がいた痕跡や、助けを求める声はない。
「かなり奥だから人は来ないよね・・・。」
「そうみたいだな。」
それでも探しながら辺りをうろうろしてると、リナリアが大きな声で俺を呼んだ。
「シャガ!!見てーっ!!」
「?」
リナリアのほうに振り返ると、そこに、崩れた山のてっぺんが見えていた。
欠けた部分から覗いてるのは青空で、てっぺんに薄っすら七色の輪っかがあったのだ。
「あれは・・・なんだ?」
「あそこに湖があるのよ!行ってみようよ!!」
「え!?あっ・・・!おいっ・・・!!」
嬉しそうに駆けていくリナリアの後ろをついて山のてっぺんまで上がると、そこに大きな湖があった。
どうやら水気があって山が崩れてしまったようだ。
「わぁ・・・!すごいね!きれい!!」
「ほんとだな・・・。」
山の中にあった水でできた湖だからか、今まで見たことがない色の湖だった。
どこまでも透き通って見える水は空の色を映していて青々としてる。
「ふふっ・・・!私たちが最初に見つけたんだから名前を付ける権利があるよ!!なんて名前にする!?」
「えぇぇぇ・・・急に言われてもな・・・。」
「こんなの思いついた言葉がいいのよ!深く考えないで!!」
「そういうものなのか?」
俺はあまりない頭の中身を目いっぱい回転させて言葉を探した。
「あー・・・こういうのは学者のお前が得意だろう・・・っ!?」
「私はいくつかつけてるからもういいもんっ、シャガが決めてよ!」
「えぇぇぇ・・・。」
リナリアに言われて俺は目を閉じた。
今、ここで、思いつく言葉を一つ口に出してみる。
「・・・『リナリア』。」
「?」
「『リナリア』って名前の湖がいい。どうだ?」
そう聞くとリナリアは顔を真っ赤にした。
「なっ・・!どうして私の名前なのよ!!」
「え?だってお前と見つけた湖だし?いいだろ?」
「!?!?よくないっ!!」
「お前がよくなくても俺はいいの。だから『リナリア』。ちゃんと登録しておいてくれよ?」
「~~~~っ!・・・はぁ・・わかったわよ!!」
リナリアは最後、『仕方ない』と言った感じで諦めてくれた。
俺は汚れのない湖『リナリア』を見つめながら、願をかける。
(リナリアが幸せに過ごせますように・・・。)
そう思ったのだった。
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「え、とぅさん、好きな人がいたの!?」
アイビーにここまで話をしたあと、俺は黒い実を入れに台所に向かった。
アイビーは自分用にとちゃんと白い実を持ってきたようで、鞄から出して準備をしてる。
「あぁ。お前よりお転婆なやつだったぞ?」
「私を比較対象にしないでよ・・・。」
「ははっ。」
俺は自分の分の黒い実と、アイビーの分の黒い実・・・コーヒーを準備してアイビーに手渡した。
「えーと・・どこまで話したかな・・・。」
「湖見つけたとこ!」
「あぁ、そうだった。そのあとだな。」
黒い実を一口飲み、俺はまた昔話を始めた。
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