溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

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出会い。

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雪華「え?どこですか?」

雄大「それが思い出せなくて・・・俺とどっかで会った?」

雪華「うーん・・・・。」




私は頭の中にある記憶を手繰り寄せた。

消防士さんに知り合いはいない。

誰かの紹介で消防士さんに会ったことはもちろんない。

あの消防署に入ったのだって昨日が初めてのことだ。

どう考えても雄大さんと会ってるとは思えなかったけど・・・一つ思い出したことがあった。




雪華「あ・・・」

雄大「思い出した?」

雪華「合ってるかどうかはわからないんですけど・・・一昨年くらいの冬にあったビル火災に・・・来てました?ビルとその近くの建物を・・・確かホテルとか10棟くらい燃えちゃったやつ・・・。」





一昨年、大規模な火災が私の仕事場の近くで起こった。

通りをいくつか挟んだ向こう側の火事だったことを覚えてる。


オフィスビルの人たちは最小限の荷物を持って避難していたけど、

旅行でホテルに泊まっていた宿泊者たちは、着の身着のままで避難してきて寒そうに凍えていた。


その寒さを和らげてもらうために・・・店長の指示で温かい紅茶を作って持っていったのだ。





雄大「!!・・・行った!あの時温かい飲み物配ってるカフェの店員がいた!!」

雪華「たぶん・・・その何人かのうちの一人が私ですね。その時、消防士さんにお礼言われた記憶がありますけど・・・」

雄大「!!・・俺だ!」

雪華「!!・・・あははっ。雄大さんだったんですかー。」





『寒い中、ありがとう。助かったよ』って・・・防火服に身を包んだ消防士さんが一人、私に声をかけてくれたことを思い出した。

紅茶を手渡した人から言われることはあっても、まさか消防士さんから言われるとは思ってなかったから記憶にあったみたいだ。




雄大「避難者一人一人に声をかけながら飲み物配ってくれてて・・・すっごい助かった。ありがとな。」

雪華「ふふっ、どういたしまして。」

雄大「っていうことは、雪華はカフェの店員してんの?」

雪華「そうですよ?あの辺にあるカフェで働いてます。」

雄大「へぇー・・・。」





想像もしてなかったところで雄大さんとの繋がりがあった。

驚きながらも歩き進めていくと・・・一軒の居酒屋が見えてくるのがわかった。



雄大「あ、あそこだよ。」

雪華「これはちょっと・・・わかりにくいですね・・・。」



住宅街のど真ん中にひっそりとたたずんでいたお店。

堂々とした看板などなく、なんとなく他の家の造りとは違うからわかったくらいだった。



雄大「俺たち消防署員の行きつけなんだよ。」

雪華「へぇーっ。」




雄大さんは私の前を歩き、お店のドアに手をかけた。

引き戸になってるドアをガラガラと音を立ててあけ、中に入った。




店主「いらっしゃーい!」

雄大「おやっさん、こんばんは。」

店主「お!雄大くん!こっち座んな!」

雄大「ははっ、ありがとう。」

雪華「?・・お知り合いですか?」




店主さんと親しく話す姿が見える。





雄大「常連なだけ(笑)」



店主さんに案内され、私たちはお店のカウンター席に座った。

店主さんは雄大さんの隣に座った私をじーっと見てる。



雪華「?」

店主「雄大くん!彼女かい!?」

雄大「まだ彼女じゃないよ、返事待ち。」

雪華「えぇ!?」

店主「そうかいそうかい!で、何飲む?」




店主さんにお絞りを手渡され、私と雄大さんは受け取った。

それで手を拭きながら、雄大さんは私を見る。



雄大「ビールでいい?」

雪華「はいっ。」

雄大「おやっさん、ビール二つ。」




雄大さんの注文を聞いた店主さんが、私をじーっと見ながら聞いてきた。



店主「はいよっ・・・って言いたいけど、彼女さんは成人してるのかい?」

雪華「あ、身分証ですよね。ちょっと待ってください。」



私が行きつけの居酒屋は、もう顔なじみだから身分証を出さなくてもお酒は飲める。

でもここは初めてのところだから疑われたら証明書をださないといけないのだ。




雪華「えーっと・・・。」



鞄の中から財布を取り出そうとしたとき、雄大さんが私の手をそっと掴んだ。



雪華「え?」

雄大「おやっさん、俺と一緒なんだから確認しなくてもいいでしょ?」

雪華「え?え?」




雄大さんの言葉の意味がわからずに、私は雄大さんと店主さんを交互に見た。

すると店主さんが口を開いて・・・




店主「だな、これで未成年だったら雄大くんが捕まっちまう。」

雄大「そういうこと。」




そう言って店主さんはビールをジョッキで二つ用意してくれた。

カウンターテーブルにどんっと置く。



店主「はい、お待ち!疑っちまってごめんよ?これも仕事なもんでさ。」

雪華「いえ、成人に見えない私が悪いんで・・・あ・・でも一応証明書・・・。」



鞄から証明書を取り出そうとしたとき、店主さんに止められた。



店主「見なくても大丈夫。雄大くんの言うことは信用できるから。・・・それに雄大くんの彼女なら間違いないしな。」




そう言ってなにやら料理に取り掛かってしまった。

雄大さんを見るとにこっと笑ってくれている。




雄大「じゃ・・・乾杯?」

雪華「お友達記念で・・・。」




私たちは乾杯をし、お酒を飲みながら色んな話をした。

趣味、好み、仕事の話なんかを・・・。

時に店主さんも混ざって楽しい時間を過ごした。









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