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第4話
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「私の幸せの邪魔をしないで!」
「そんなつもりで言ってるんじゃないから……」
両家顔合わせの後にクレアは嫌われる覚悟で説得したこともありましたが、結婚する決意を固めたローサには、うざがられて思いっきり罵倒された声が頭の中に残っている。
クレアの感じた印象では、リチャードの両親のことをどうも怪しい面構えの人間だなと疑っていた。あの場には公爵家の主である父もいたので、リチャードは少しでも心証を良くしようと努めていたのだろう。
「正直におっしゃってください。お姉様は悔しいのでしょう?」
「はぁ?」
「彼のような人間的に尊敬できる素晴らしい男性と結婚する私に、ひがんでるんだわ!」
ローサはリチャードのことを本気で、非の打ち所のない魅力あふれる男だと思っているので扱いに困る。姉は妹の目を覚まさせようとしているだけなのです。
確かに容姿は優れていますが、あんな下品でみっともない男のどこが?そんな気持ちのクレアは呆れた顔で見つめている。盲目的な恋とは実に怖いと感じた。
この時ローサは自分が結婚して嫁いだ先で、恐ろしい災難に見舞われるなんて想像だにしなかった。クレアの言葉に耳を傾けるべきだったと、言いようのない悔し涙を流す日々を送る。
「お母様、ローサから手紙が届きました」
「久しぶりね。ローサちゃん元気にしてるの?」
クレアは家にいた母にローサから送られてきた手紙を見せに向かう。庭に面したオープンテラスでは母と友人のご婦人方が楽しそうにしゃべっていた。
年を重ねても可愛らしい母はおっとりしたところがあり、話していて気が休まる。クレアの言葉に微笑を返して尋ねてくる。
「ローサが助けてと、何か緊急事態が発生しているみたいです」
「あらまあ」
手紙の中身を読んでいるクレアは、手早く事情を説明しながら手紙を手渡す。緊迫感がなくゆったりした雰囲気で、紅茶を飲みながら雑談をしていた母も驚く。
「お父様が帰られたら相談いたしましょう」
「大変なことになったわね」
母の友人たちは、すぐに事情を察したらしく早々に退出した。父は夕方帰宅するそうなので、それまでローサの手紙をもう一度読み直して話し合った。
手紙の中に、こんな言葉があります。助けて!と命が消えてなくなってしまう。という絶望した切迫感が伝わってくる。ローサは危機的な立場で崩壊寸前まで追い込まれているのだ。
しかも所々かすれた文字で、小さな紙に乱雑に走り書きしてあった。ローサは落ち着いて手紙も書けないような状況であることが容易に推測できた。
「そんなつもりで言ってるんじゃないから……」
両家顔合わせの後にクレアは嫌われる覚悟で説得したこともありましたが、結婚する決意を固めたローサには、うざがられて思いっきり罵倒された声が頭の中に残っている。
クレアの感じた印象では、リチャードの両親のことをどうも怪しい面構えの人間だなと疑っていた。あの場には公爵家の主である父もいたので、リチャードは少しでも心証を良くしようと努めていたのだろう。
「正直におっしゃってください。お姉様は悔しいのでしょう?」
「はぁ?」
「彼のような人間的に尊敬できる素晴らしい男性と結婚する私に、ひがんでるんだわ!」
ローサはリチャードのことを本気で、非の打ち所のない魅力あふれる男だと思っているので扱いに困る。姉は妹の目を覚まさせようとしているだけなのです。
確かに容姿は優れていますが、あんな下品でみっともない男のどこが?そんな気持ちのクレアは呆れた顔で見つめている。盲目的な恋とは実に怖いと感じた。
この時ローサは自分が結婚して嫁いだ先で、恐ろしい災難に見舞われるなんて想像だにしなかった。クレアの言葉に耳を傾けるべきだったと、言いようのない悔し涙を流す日々を送る。
「お母様、ローサから手紙が届きました」
「久しぶりね。ローサちゃん元気にしてるの?」
クレアは家にいた母にローサから送られてきた手紙を見せに向かう。庭に面したオープンテラスでは母と友人のご婦人方が楽しそうにしゃべっていた。
年を重ねても可愛らしい母はおっとりしたところがあり、話していて気が休まる。クレアの言葉に微笑を返して尋ねてくる。
「ローサが助けてと、何か緊急事態が発生しているみたいです」
「あらまあ」
手紙の中身を読んでいるクレアは、手早く事情を説明しながら手紙を手渡す。緊迫感がなくゆったりした雰囲気で、紅茶を飲みながら雑談をしていた母も驚く。
「お父様が帰られたら相談いたしましょう」
「大変なことになったわね」
母の友人たちは、すぐに事情を察したらしく早々に退出した。父は夕方帰宅するそうなので、それまでローサの手紙をもう一度読み直して話し合った。
手紙の中に、こんな言葉があります。助けて!と命が消えてなくなってしまう。という絶望した切迫感が伝わってくる。ローサは危機的な立場で崩壊寸前まで追い込まれているのだ。
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