10 / 11
第10話
しおりを挟む
「正式に結婚する前にはボロを出さぬようにな」
「分かっております」
「結婚して家に嫁がせたら後はどうとでもなるからな」
リチャードは出世欲に取り憑かれた父から、絶大な権力を持つ公爵家の令嬢と結婚することを指示されていた。実のところ、リチャードはローサのことなど愛してはいなかった。
それどころか心に決めた幼馴染がずっと以前にいたのです。本命の女性と共に家で暮らすことを条件に、父の頼みごとを承諾した。
父と息子は利害一致から共同体意識を持って、何も知らないローサを騙して結婚したのだ。何と卑劣な男なのだろう?これではあまりにもローサが可哀想である。
「リチャードよくやったぞ」
「お父様も約束を守ってください」
「ちゃんと覚えておる」
深く信頼していて、人格的に立派だと思っていた結婚した夫のリチャードと義父は、陰険で冷酷な性格だったのである。
結婚して伯爵家で一緒に暮らし始めたら、朝から晩まで過重労働を押しつけて精神的に苦しめようと、まだローサが嫁入り前から計画していた。
それにしてもこんな姑息な手を使う男と、誰が一緒に暮らしたがるのか?リチャードの幼馴染は、この出来事を容認しているのか?知っていたら正常な人間の感覚ではない。
「いつまで外に出さないつもりなの?」
いくら泣き叫んでも、こんな所に誰も助けにこない。地下牢に幽閉されたローサは体力の消耗を抑えるために置き物のように座ってじっと動かなかった。
しゃがみ込んで頭を抱えたローサは、苦しさを忘れ果てたかのようであった。逃げる方法がないため、鋼鉄製の分厚い扉が開くのを待つしかないという不利な状況に置かれる。
三日間も放置されて水も食事も与えられず、脱水症状と栄養失調などの原因で、もはや普通に立っていられなくなり、ローサの憔悴ぶりは極度に達していた。
「ローサ」
その時、扉が開いて夫のリチャードが姿を現わした。座って半分眠った状態のローサは、僅かに体が反応してゆっくりと顔を上げた。
リチャードの隣には会ったこともない知らない女性がいる。誰なのだろう?ローサは呆けたような顔でぼんやりと見つめていた。
「リチャード!」
その時、急速にローサの意識が覚醒した。ぐったりと疲れ果てて腰を下ろして動かなかったため、直ぐに立ち上がる事もできないが反射的に夫の名前を強い調子で叫んだ。
「意外と元気そうじゃないか」
リチャードは冷たい目で見下ろしながら言った。生きてたのか?というような平気な顔をしている。ローサは何だか得体の知れない者を相手にしている気がした。
「分かっております」
「結婚して家に嫁がせたら後はどうとでもなるからな」
リチャードは出世欲に取り憑かれた父から、絶大な権力を持つ公爵家の令嬢と結婚することを指示されていた。実のところ、リチャードはローサのことなど愛してはいなかった。
それどころか心に決めた幼馴染がずっと以前にいたのです。本命の女性と共に家で暮らすことを条件に、父の頼みごとを承諾した。
父と息子は利害一致から共同体意識を持って、何も知らないローサを騙して結婚したのだ。何と卑劣な男なのだろう?これではあまりにもローサが可哀想である。
「リチャードよくやったぞ」
「お父様も約束を守ってください」
「ちゃんと覚えておる」
深く信頼していて、人格的に立派だと思っていた結婚した夫のリチャードと義父は、陰険で冷酷な性格だったのである。
結婚して伯爵家で一緒に暮らし始めたら、朝から晩まで過重労働を押しつけて精神的に苦しめようと、まだローサが嫁入り前から計画していた。
それにしてもこんな姑息な手を使う男と、誰が一緒に暮らしたがるのか?リチャードの幼馴染は、この出来事を容認しているのか?知っていたら正常な人間の感覚ではない。
「いつまで外に出さないつもりなの?」
いくら泣き叫んでも、こんな所に誰も助けにこない。地下牢に幽閉されたローサは体力の消耗を抑えるために置き物のように座ってじっと動かなかった。
しゃがみ込んで頭を抱えたローサは、苦しさを忘れ果てたかのようであった。逃げる方法がないため、鋼鉄製の分厚い扉が開くのを待つしかないという不利な状況に置かれる。
三日間も放置されて水も食事も与えられず、脱水症状と栄養失調などの原因で、もはや普通に立っていられなくなり、ローサの憔悴ぶりは極度に達していた。
「ローサ」
その時、扉が開いて夫のリチャードが姿を現わした。座って半分眠った状態のローサは、僅かに体が反応してゆっくりと顔を上げた。
リチャードの隣には会ったこともない知らない女性がいる。誰なのだろう?ローサは呆けたような顔でぼんやりと見つめていた。
「リチャード!」
その時、急速にローサの意識が覚醒した。ぐったりと疲れ果てて腰を下ろして動かなかったため、直ぐに立ち上がる事もできないが反射的に夫の名前を強い調子で叫んだ。
「意外と元気そうじゃないか」
リチャードは冷たい目で見下ろしながら言った。生きてたのか?というような平気な顔をしている。ローサは何だか得体の知れない者を相手にしている気がした。
1
あなたにおすすめの小説
運命の人は貴方ではなかった
富士山のぼり
恋愛
「パウラ・ ヴィンケル……君との婚約は破棄させてもらう。」
「フレド、何で……。」
「わざわざ聞くのか? もう分かっているだろう、君も。」
「……ご実家にはお話を通されたの?」
「ああ。両親とも納得していなかったが最後は認めてくれた。」
「……。」
「私には好きな女性が居るんだ。本気で愛している運命の人がな。
その人の為なら何でも出来る。」
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
私の旦那様はつまらない男
おきょう
恋愛
私の旦那様であるロバート伯爵は、無口で無愛想な仕事バカ。
家庭を返り見ず仕事に精を出すのみのつまらない男である。
それでも私は伯爵家の妻として今日も面倒な社交の場に出なければならないのだ。
伯爵家の名を落とさないために。あぁ面倒くさい。
※他サイトで投稿したものの改稿版になります。
冷淡姫の恋心
玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。
そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。
我慢すれば済む、それは本当に?
貴族らしくある、そればかりに目を向けていない?
不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。
※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる