幸せな結婚生活に妻が幼馴染と不倫関係、夫は許すことができるか悩み人生を閉じて妻は後悔と罪の意識に苦しむ

第6話

数日後の朝ハリー殿下のこれからの予定を最も信頼している腹心のレオンが説明している。

レオンはハリー殿下より一回り年上の品格が漂う侯爵家当主。若い時にはすれ違いざまに美しい淑女が思わず振り向いていたほどでモテていたことがひと目でわかる苦み走った紳士。

酔って潤んだ瞳のハリー殿下は毎日のように酒の誘惑に身を任せて忘れるために存分に酔う生活で妻のオリビア夫人とは食卓を囲んでも会話もなく現在の癒しは娘のカミーユと酒だけ。

「殿下聞いていますか？」

眉間にしわを寄せて迷惑げな表情でハリー殿下を注意するレオン。

「ん？なに？」
「はぁ…殿下大丈夫ですか…いくら好きでも酒は控えてください」

自分の主人が酒臭くて寝不足の充血した腫れぼったい瞳をしていれば腹心なら不安に襲われて心配で声をかけるのは当然だった。

「殿下なにかあったのですか？」
「何もない」
「家庭で奥様と喧嘩でも？」
「オリビアのことは言うな！」

優しくなだめるような口調でレオンは答えが返ってくるか分からない質問をする。やはりハリー殿下は話してくれなく歪むような苦しげな表情。

家族のことを尋ねると不意打ちのように語調を強めてハリー殿下の心が大波のように荒れた。レオンはただならぬ雰囲気を感じとる。

ハリー殿下は家庭でとんでもないトラブルに巻き込まれていて奥様と何かあったのか？レオンは一筋縄では解決しない認識を持つ。

「殿下私でよろしければ相談に乗りますが…」
「今はいい。また今度頼む」
「わかりました。ですがいつでも相談してください」

レオンに妻オリビア夫人が許されぬ恋をしていることを話して知恵を借りるか脳裏をよぎる。だが少し間を置いて言葉を退ける。

愉快な気分の時でもいくら気心の知れた相手でも妻が不倫をしている相談を容易にできるわけがなかった。夫として屈辱と敗北のレッテルを貼られるみたいで悔しくて恥ずかしい。

レオンもハリー殿下が話しにくそうなのでそれ以上聞かないで妙にかしこまった態度で返事をした。