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第9話
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「会った事はオリビアには秘密にしてくれ」
「わかりました」
妻の格好をしたメイドと思いがけず対面した事実を隠すことにした。メイドが妻に口を割るかもしれないが後ろめたさに胸が締めつけられる思いだったという良心的な言葉を信頼する。
「パパどうしたの?」
「なんでもないよ」
翌日、娘のカミーユと遊んでいるとハリー殿下はほのぼのとした幸福を感じるが不意に寂しい表情をして沈黙した。
父親の表情の変化にあどけない顔の子供が不思議でならない感じで聞いてくるが気にすることはないと優しい口元を見せて答える。
妻と離婚したら子供に悲しい顔をさせて泣きじゃくると思うと深い悲しみに満ちてハリー殿下はカミーユを抱きしめた。
「ジョージのことなんだけど」
「もうパパには言えない」
私達夫婦のこれからのことを考えると辛くても前進しなければならないので不意にジョージのことを聞いたら子供は教えられないと口をつぐんでしゃべらない。
「なんで教えてくれないの?この前は話してくれたよね?」
「もうママが言ったらダメだって…」
「パパにも?」
「うん」
「じゃあママには内緒にするから」
「でもママが…」
「ママがどうしたの?」
「今度パパにジョージのこと話したらカミーユのこと捨てるって言われたの…」
カミーユはひどく不安そうな顔つきで話すと耳を疑うようなことを口にする。可愛がっている子供にまさか捨てるなんて言うのか。
心根の優しい思いやりがある妻を不倫はここまで狂わせてしまうのだと失望が重くのしかかり既に私達の家族には希望が無いと目の前が真っ暗になる。
「パパはどんなことがあってもカミーユを捨てないからね」
「本当に?」
「うん」
「ジョージのこと話してもカミーユのこと捨てない?」
「約束する」
「やったー」
まず第一に子供を安心させるハリー殿下。嬉しそうに顔を輝かせたカミーユはかわいらしい声で天使のような笑顔を見せてくれた。
逆にオリビア夫人に対して果てしない怒りが湧いてきて憎しみに歪んだ顔になりこのままでは初めて妻をひっぱたいてしまうかもしれない。
そう言えば最近カミーユは心配そうな顔をしている。子供は勘が鋭いから私達夫婦の会話が全くないし不穏な胸騒ぎを感じているのだと子供を抱きしめながら思う。
「わかりました」
妻の格好をしたメイドと思いがけず対面した事実を隠すことにした。メイドが妻に口を割るかもしれないが後ろめたさに胸が締めつけられる思いだったという良心的な言葉を信頼する。
「パパどうしたの?」
「なんでもないよ」
翌日、娘のカミーユと遊んでいるとハリー殿下はほのぼのとした幸福を感じるが不意に寂しい表情をして沈黙した。
父親の表情の変化にあどけない顔の子供が不思議でならない感じで聞いてくるが気にすることはないと優しい口元を見せて答える。
妻と離婚したら子供に悲しい顔をさせて泣きじゃくると思うと深い悲しみに満ちてハリー殿下はカミーユを抱きしめた。
「ジョージのことなんだけど」
「もうパパには言えない」
私達夫婦のこれからのことを考えると辛くても前進しなければならないので不意にジョージのことを聞いたら子供は教えられないと口をつぐんでしゃべらない。
「なんで教えてくれないの?この前は話してくれたよね?」
「もうママが言ったらダメだって…」
「パパにも?」
「うん」
「じゃあママには内緒にするから」
「でもママが…」
「ママがどうしたの?」
「今度パパにジョージのこと話したらカミーユのこと捨てるって言われたの…」
カミーユはひどく不安そうな顔つきで話すと耳を疑うようなことを口にする。可愛がっている子供にまさか捨てるなんて言うのか。
心根の優しい思いやりがある妻を不倫はここまで狂わせてしまうのだと失望が重くのしかかり既に私達の家族には希望が無いと目の前が真っ暗になる。
「パパはどんなことがあってもカミーユを捨てないからね」
「本当に?」
「うん」
「ジョージのこと話してもカミーユのこと捨てない?」
「約束する」
「やったー」
まず第一に子供を安心させるハリー殿下。嬉しそうに顔を輝かせたカミーユはかわいらしい声で天使のような笑顔を見せてくれた。
逆にオリビア夫人に対して果てしない怒りが湧いてきて憎しみに歪んだ顔になりこのままでは初めて妻をひっぱたいてしまうかもしれない。
そう言えば最近カミーユは心配そうな顔をしている。子供は勘が鋭いから私達夫婦の会話が全くないし不穏な胸騒ぎを感じているのだと子供を抱きしめながら思う。
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