彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

佐藤 美奈

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「暗いよ~怖いよ~イブリン助けてーっ!」

彼女を傷つけた罪の意識で樹海の中に足を踏み入れて、自ら命をたつ決心をした。ですが、弱虫の彼は恐ろしくなり赤ん坊のように泣き叫んで迷うことなく引き返す。


「エリザと一線を超えてもうすぐ2年か……モテる男はつらいぜ」

帰宅してから数日後、外を眺めながら思いを馳せる。実はホークは妹のフランソワ以外にも体の関係を持っている令嬢がいた。

知り合ってその日のうちに男女の仲になり、週に一度は会うようになる。そして2年経つのかと心にしみ入る。身体の相性がいいのか分からないけど、一緒にいてストレスがないというのも浮気相手と続いている理由。

ホークの浮気相手のエリザは、男爵家の令嬢で飛び抜けて美人ではないが、可愛らしく愛嬌の良い笑顔を向けてくれる。

まだ自分の魅力に気がついていないのか派手なドレスを着飾ることもなく、服装はいつも地味だがホークはエリザのそんなところも気に入っている。

「エリザ!」
「ホーク……会いたかった」
「僕も同じ気持ちさ」

今日はエリザとの密会日。会うなり名前を呼び合い熱い抱擁を交わす。二人は相性が良いのも何となく自覚しており、お互い会いたい時に暇なら会うって感じで気分的にも楽な間柄。

双方にとって好都合な相手だからこそ、今まで喧嘩もなく繋がりを断つような気持ちには一切ならない。会えば必ず一夜を過ごすこともなく、食事を楽しんだりして普通にデートして別れることもある。


「僕の友人のエリザ」
「イブリン様よろしくお願いいたします」
「そんなに恐縮した呼び方はやめて。ホークと同じように気軽にイブリンと呼んでくれたら嬉しいわエリザ」
「ありがとうイブリン」

何を隠そう、本命の彼女のイブリンに浮気相手のエリザのことを昔友人として紹介したことがあった。なんとも面の皮が厚い呆れた二人です。

それに信じられない事ですが、今やエリザはイブリンの懐に入り込み無二の友人にまで上り詰めてしまう。人当たりが柔らかいエリザにイブリンが惚れ込みました。

ダメ押しで、思わず立ちつくしてしまう話なのですが、以前イブリンとホークの別れ話の時に、エリザはイブリンの友人側として参戦して『浮気は許さない!』と徹底的にホークを批判して痛めつけていた。

「ホークはあんまりベタベタしてくれないよね?」
「そう?」
「それなら今日はずっと身体を寄せ合おう」
「嬉しいー!」

本当に居心地のいい関係で、両者の埋めようのない心の空白を保つだけの存在。なので結婚なんて考えたこともない。ちなみにエリザは本命の彼は今はなし。

取り立てて恋愛感情はないけど、一緒に街を歩いていたら見た目は恋人同士。食事を済ませた店のウエイトレスから『仲睦まじい素敵な紳士淑女でいらっしゃいますね。羨ましいです』なんて褒められることもしばしば。
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