美人な姉を溺愛する彼へ、最大の罰を! 倍返しで婚約破棄して差し上げます

佐藤 美奈

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第8話

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フレッド様の謝罪から、数日が過ぎた。
屋敷の中には、まだ気まずい空気が抜けきらずに漂っている。私はといえば、すっかり自室に引きこもりがちになっていた。顔を合わせれば、姉様やヒューゴ様が心配してくれる。それが申し訳なくて、かえって顔を出しづらくなってしまったのだ。

コンコン、と控えめなノックの音。

「マリア、入るわね」

ドアを開けて入ってきたのは、やはりカミーユ姉様だった。手には銀のトレイに乗った、湯気の立つハーブティー。

「閉じこもってばかりでは、気が滅入ってしまうわ。気晴らしに、少しおしゃべりしましょう」

そう言って微笑む姉様の顔は、いつも通り優しくて、美しい。あんな出来事があった後でも、変わらず私を気遣ってくれる。その優しさが、今は少しだけ痛かった。

「ごめんなさい、姉様。心配かけて……」

「いいのよ。あなたが心を痛めるのは当然だわ」

姉様はベッドの脇に腰かけると、私の髪を優しく梳かし始めた。子供の頃から、私が落ち込んでいると、姉様はいつもこうしてくれた。柔らかな指が髪を梳くたびに、少しずつ心がほぐれていくような気がする。

「マリアは昔から、一度信じると本当にまっすぐだったものね。私が大事にしていたお人形の髪をめちゃくちゃにしちゃった時も、『マリアがやったの!』って言ったら、自分じゃないのに泣きながら謝ってくれたわ」

「う……そ、その話は忘れてよ! あれは結局、隣の家のトムの仕業だったじゃない!」

「ふふ、そうだったわね。でも、あなたは私が悲しんでいるのが嫌で、自分が悪者になってもいいと思ったんでしょう? 優しいのよ、あなたは昔から」

「姉様こそ、いつも私の前に立って守ってくれたじゃない。私が転んで泣いていたら、相手が誰であっても『私の妹を泣かせたのはあなたね!』って飛んできてくれたわ」

昔話に、ふふっと二人で笑い合う。そうだ、私たちは、ずっとこうだった。私が憧れて、追いかけて、そして姉様がいつも私を導き、守ってくれた。この温かい関係が、世界で一番大切な宝物だ。

だからこそ、心の隅に芽生えた小さな疑いの芽が、ちくりと痛む。
あの日のフレッド様の態度。そして、彼を許すように促した姉様の言葉。なぜ? どうしてあんな男を、姉様は庇ったの?

聞きたいのに、聞けない。この穏やかな時間を壊したくなくて。姉様を疑うなんて、そんなこと、私にはできるはずがなかった。
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