「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で“優秀な女性”だと溺愛される

佐藤 美奈

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第34話 母と息子が泣いた過去

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「ルビーにサファイア他にもこんなにたくさんの宝石が……これはレッドダイヤモンドじゃないか! これ一つで城が買えるぞ!」

ルークは大量の宝石に囲まれて喜びを超えた興奮で心が落ち着かなかった。適当に一つ手に取って見ると、レッドダイヤモンドという大変高価な宝石だった。ルークは思わず感情がこみ上げて飛び上がりそうな顔にある。

「これは魔鉱石じゃないか! こんな貴重なものまで……」

ルークはまた一段と興奮した様子で声を上げた。魔鉱石は魔力を増加することができる。ルークのように魔法が使える者には喉から手が出るほど欲しいもの。だがあまりに入手が困難なため見かけることは少ない。店に置いてあったとしても高価で誰でも買えるようなものでもなかった。その貴重な魔鉱石が、一目見た限りで数百はあるのでルークの感情の熱が高まるのも当然というもの。

「これで父の作った借金が返せる……それどころかお釣りもくる。いや、大富豪だな。これで母も安心させてあげられるし、使用人たちも迎え入れられる」

ルークは安心感に心が満たされて穏やかな表情を浮かべる。憑き物が落ちたような気持ちで幸福感が押し寄せてくる。アレクサンダーのせいでサーシャは悩みや苦しみが多く毎日のように心が休まらなかった。

ルークは母が夜一人で泣いているのを偶然に見たことがある。いつも弱みを見せないで気丈に振る舞っているけど、やはり辛かったのだろうとルークも胸がいっぱいになって涙が流れた。母と息子が一緒に泣いていた時、父は愛人宅に泊まっていた。ルークはそんな母を見てきたので、ようやく安心させてあげられると思って安堵感が胸に広がる。

貧しくなって使用人たちへの給金も払えなくなった。申し訳ないけど雇用契約を解除するしかなかった。また余裕ができたら雇うと約束して世間に送り出した。

「アンナ、どうして早く言ってくれないんだ!」
「すみません。どんどん見つかるので、楽しくて夢中になってしまって……」

深い感慨にふけっていたルークは、突然噛みついてくるような勢いで言う。どうしてもっと早く大声を上げて教えてくれなかったのかと不満が沸いてきた。あっちからもこっちからも見つかるので、アンナは愉快な気分になってただ黙々と作業に励んでいた。ルークに言われてアンナは申し訳なく思う。

「怒って悪かった。僕は一つも見つけられなかったのに、アンナに文句を言うなんてどうかしてたよ」

ルークは自分でも気づかないまま責めるような口調になっていたが、アンナの曇った顔を見てすぐに自分の立場を取り戻した。自分は小さな欠片すら見つけられなかった。それどころかもう諦めるしかないと達観した気持ちを持っていた。

宝石を見つけたアンナに、八つ当たりするような無様な真似をするなんて人として最低な事をした。この依頼の待遇を考えると文句を言う筋合いじゃない。安い報酬で引き受けてくれただけでもありがたいと感謝すべきだった。自分はアンナの親切に甘えていた。ルークは声を荒らげたことを恥じるように深く反省してアンナに謝罪する。

「ルークさん頭を上げてください。私は依頼で探し物を見つけただけですから」
「そんなことはない。アンナのおかげで助かった。本当にありがとう」

突然泣きそうな顔になりながら、控え目な態度をとるルークにアンナは心苦しく思った。宝石探しはルークに依頼された仕事なので、アンナからしたら見つけるのは当然の事だという思いの方が強かった。それに公爵家ではいつも虐げられていたので、ルークにかしこまって頭を下げられると、アンナの方が恐縮してしまうほどに驚いていた。

ルークはアンナのつつましくしおらしい言葉が素直に胸に響く。アンナとの出会いによって救われてありがたさが骨身にしみる。ルークはアンナへの熱い思いが湧いて、好きだという気持ちがあふれていた。
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