34 / 66
第34話 母と息子が泣いた過去
しおりを挟む
「ルビーにサファイア他にもこんなにたくさんの宝石が……これはレッドダイヤモンドじゃないか! これ一つで城が買えるぞ!」
ルークは大量の宝石に囲まれて喜びを超えた興奮で心が落ち着かなかった。適当に一つ手に取って見ると、レッドダイヤモンドという大変高価な宝石だった。ルークは思わず感情がこみ上げて飛び上がりそうな顔にある。
「これは魔鉱石じゃないか! こんな貴重なものまで……」
ルークはまた一段と興奮した様子で声を上げた。魔鉱石は魔力を増加することができる。ルークのように魔法が使える者には喉から手が出るほど欲しいもの。だがあまりに入手が困難なため見かけることは少ない。店に置いてあったとしても高価で誰でも買えるようなものでもなかった。その貴重な魔鉱石が、一目見た限りで数百はあるのでルークの感情の熱が高まるのも当然というもの。
「これで父の作った借金が返せる……それどころかお釣りもくる。いや、大富豪だな。これで母も安心させてあげられるし、使用人たちも迎え入れられる」
ルークは安心感に心が満たされて穏やかな表情を浮かべる。憑き物が落ちたような気持ちで幸福感が押し寄せてくる。アレクサンダーのせいでサーシャは悩みや苦しみが多く毎日のように心が休まらなかった。
ルークは母が夜一人で泣いているのを偶然に見たことがある。いつも弱みを見せないで気丈に振る舞っているけど、やはり辛かったのだろうとルークも胸がいっぱいになって涙が流れた。母と息子が一緒に泣いていた時、父は愛人宅に泊まっていた。ルークはそんな母を見てきたので、ようやく安心させてあげられると思って安堵感が胸に広がる。
貧しくなって使用人たちへの給金も払えなくなった。申し訳ないけど雇用契約を解除するしかなかった。また余裕ができたら雇うと約束して世間に送り出した。
「アンナ、どうして早く言ってくれないんだ!」
「すみません。どんどん見つかるので、楽しくて夢中になってしまって……」
深い感慨にふけっていたルークは、突然噛みついてくるような勢いで言う。どうしてもっと早く大声を上げて教えてくれなかったのかと不満が沸いてきた。あっちからもこっちからも見つかるので、アンナは愉快な気分になってただ黙々と作業に励んでいた。ルークに言われてアンナは申し訳なく思う。
「怒って悪かった。僕は一つも見つけられなかったのに、アンナに文句を言うなんてどうかしてたよ」
ルークは自分でも気づかないまま責めるような口調になっていたが、アンナの曇った顔を見てすぐに自分の立場を取り戻した。自分は小さな欠片すら見つけられなかった。それどころかもう諦めるしかないと達観した気持ちを持っていた。
宝石を見つけたアンナに、八つ当たりするような無様な真似をするなんて人として最低な事をした。この依頼の待遇を考えると文句を言う筋合いじゃない。安い報酬で引き受けてくれただけでもありがたいと感謝すべきだった。自分はアンナの親切に甘えていた。ルークは声を荒らげたことを恥じるように深く反省してアンナに謝罪する。
「ルークさん頭を上げてください。私は依頼で探し物を見つけただけですから」
「そんなことはない。アンナのおかげで助かった。本当にありがとう」
突然泣きそうな顔になりながら、控え目な態度をとるルークにアンナは心苦しく思った。宝石探しはルークに依頼された仕事なので、アンナからしたら見つけるのは当然の事だという思いの方が強かった。それに公爵家ではいつも虐げられていたので、ルークにかしこまって頭を下げられると、アンナの方が恐縮してしまうほどに驚いていた。
ルークはアンナのつつましくしおらしい言葉が素直に胸に響く。アンナとの出会いによって救われてありがたさが骨身にしみる。ルークはアンナへの熱い思いが湧いて、好きだという気持ちがあふれていた。
ルークは大量の宝石に囲まれて喜びを超えた興奮で心が落ち着かなかった。適当に一つ手に取って見ると、レッドダイヤモンドという大変高価な宝石だった。ルークは思わず感情がこみ上げて飛び上がりそうな顔にある。
「これは魔鉱石じゃないか! こんな貴重なものまで……」
ルークはまた一段と興奮した様子で声を上げた。魔鉱石は魔力を増加することができる。ルークのように魔法が使える者には喉から手が出るほど欲しいもの。だがあまりに入手が困難なため見かけることは少ない。店に置いてあったとしても高価で誰でも買えるようなものでもなかった。その貴重な魔鉱石が、一目見た限りで数百はあるのでルークの感情の熱が高まるのも当然というもの。
「これで父の作った借金が返せる……それどころかお釣りもくる。いや、大富豪だな。これで母も安心させてあげられるし、使用人たちも迎え入れられる」
ルークは安心感に心が満たされて穏やかな表情を浮かべる。憑き物が落ちたような気持ちで幸福感が押し寄せてくる。アレクサンダーのせいでサーシャは悩みや苦しみが多く毎日のように心が休まらなかった。
ルークは母が夜一人で泣いているのを偶然に見たことがある。いつも弱みを見せないで気丈に振る舞っているけど、やはり辛かったのだろうとルークも胸がいっぱいになって涙が流れた。母と息子が一緒に泣いていた時、父は愛人宅に泊まっていた。ルークはそんな母を見てきたので、ようやく安心させてあげられると思って安堵感が胸に広がる。
貧しくなって使用人たちへの給金も払えなくなった。申し訳ないけど雇用契約を解除するしかなかった。また余裕ができたら雇うと約束して世間に送り出した。
「アンナ、どうして早く言ってくれないんだ!」
「すみません。どんどん見つかるので、楽しくて夢中になってしまって……」
深い感慨にふけっていたルークは、突然噛みついてくるような勢いで言う。どうしてもっと早く大声を上げて教えてくれなかったのかと不満が沸いてきた。あっちからもこっちからも見つかるので、アンナは愉快な気分になってただ黙々と作業に励んでいた。ルークに言われてアンナは申し訳なく思う。
「怒って悪かった。僕は一つも見つけられなかったのに、アンナに文句を言うなんてどうかしてたよ」
ルークは自分でも気づかないまま責めるような口調になっていたが、アンナの曇った顔を見てすぐに自分の立場を取り戻した。自分は小さな欠片すら見つけられなかった。それどころかもう諦めるしかないと達観した気持ちを持っていた。
宝石を見つけたアンナに、八つ当たりするような無様な真似をするなんて人として最低な事をした。この依頼の待遇を考えると文句を言う筋合いじゃない。安い報酬で引き受けてくれただけでもありがたいと感謝すべきだった。自分はアンナの親切に甘えていた。ルークは声を荒らげたことを恥じるように深く反省してアンナに謝罪する。
「ルークさん頭を上げてください。私は依頼で探し物を見つけただけですから」
「そんなことはない。アンナのおかげで助かった。本当にありがとう」
突然泣きそうな顔になりながら、控え目な態度をとるルークにアンナは心苦しく思った。宝石探しはルークに依頼された仕事なので、アンナからしたら見つけるのは当然の事だという思いの方が強かった。それに公爵家ではいつも虐げられていたので、ルークにかしこまって頭を下げられると、アンナの方が恐縮してしまうほどに驚いていた。
ルークはアンナのつつましくしおらしい言葉が素直に胸に響く。アンナとの出会いによって救われてありがたさが骨身にしみる。ルークはアンナへの熱い思いが湧いて、好きだという気持ちがあふれていた。
85
あなたにおすすめの小説
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる