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第63話 自分の命よりペット
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プリシラの邪悪なオーラが具現化した存在は、人間の数倍の巨体で恐ろしい悪魔に思えてならなかった。悪魔を見たメイドと医者は部屋の隅にネズミのように素早く移動して、身を寄せあって顔はひどく青ざめてぶるぶると震えていた。
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
「私たち死んじゃうんだね……まだ生きたいのに……」
この悪魔に自分たちはあっけなく殺されて人生の舞台から退場させられると、死に怯えて体が意志とは関係なく震えて絶望的な気分になっていた。
「私の命より大切なムギを家に残しているのに……私が帰らなかったらムギはご飯も食べられないし、寂しがって泣いているわ」
「ムギって何?」
「猫です」
メイドの中に猫を飼っている者もいたようで、自分が帰らなかったらご飯が食べられなくて猫が悲しがると心配をしていた。彼女は猫を家族のように大切に思っているようだ。
生まれたばかりの赤ちゃん猫の時から、愛情をもって育てて可愛がっている。それなのに主人の彼女に大変残念なことだが全くムギは懐いてくれない。いつもは素っ気ない態度のくせに餌を欲しがる時は、どこかくすぐったい鼻にかかる媚を含んだ声で彼女にしなだれかかってくる。おねだりをして甘えてくる時は食事の時だけだが、仕方ないと彼女も不満に思いながらも納得していた。
「こんな時に猫の心配してるの……?」
「はい」
隣にいたメイドが呆れたような顔で言った。こんな危機的な状態で猫の心配をするとは、愛猫家の心境というものは普通の感覚の人間には理解のできないものだった。
「――アンナよけろーっ!」
ルークが叫んだ。焦りを抑えきれない声で彼は激しく動揺していた。その理由は悪魔がアンナを目掛けて襲いかかって来た。ルークはプリシラに虫でも払うように簡単にふっ飛ばされた。壁に激突した時は骨の砕ける音がして大きなダメージを受けた。ルークは倒れて身動きできなかったので、声だけでもと大きく響かせる。アンナに悪魔の攻撃を回避してくれ! と強い意志が感じられる。
「な、なぜだ――――――どうしてなんだ……!?」
悪魔はアンナに襲いかかって何かしようとしたみたいだが、思うようにいかなくて困ったような顔していた。悪魔は何度もアンナに攻撃しようと頑張っていたが、もうお手上げ状態でどうにもならなかった。
人間など矮小で脆く、ちょっとした衝撃で壊れてしまう弱く無力な生き物、と悪魔は考えていて恐るるに足らんと舐めきっていた。それがどうしたことか? 目の前にいる見た目に美しい女性には攻撃が通用しなかった。アンナにはまばゆい光があふれ出て後光が差して神々しく見える。その幻想的な光がアンナの身体を守っていた。
悪魔はアンナに攻撃魔法を連発して雨あられのごとく降らせたり、途切れることなく丸太のように硬く鍛え上げられた筋肉の塊といえる腕で拳を繰り出しておきながら、心が引きつけられて魅力に酔いしれていた。悪魔にも美に対する感覚は人間と同じくらいに持っていたようだ。
「今、……何した?」
アンナは口調が変わっていた。いつもみたいに丁寧な物腰で、誰に対しても限りない優しさを込めた笑顔はなかった。アンナは苛立たしいような気持ちで不機嫌そうに目を細めていた。
公爵家の家族や使用人に、無能で使えない役立たずと言われて冷たく扱われても、非常識で失礼なことを言いそうなマナーの悪い人にも、ある程度のことは深い愛情から寛大な心で許せる。
だがアンナは、ルークを傷つけられて何か吹っ切れたようだった。攻撃を仕掛けてきた悪魔にはもう容赦しないと情を捨てて、冷酷無残なやり方で相手の息の根を止める事を決めた。
「ひぃ―――――――っ! 私は愚かで頭が悪いくせに調子に乗ってしまいました。どうか許してええええぇ――――――――――――――――ッッ!」
目の前にいる美しい女性から、明確な殺意のこもった視線を向けられた。悪魔の顔に怯えが走った瞬間、ひぃーっという哀れで滑稽な悲鳴を上げた。悪魔は平身低頭の態度をとって泣きべそ顔を晒して命乞いをしてきた。
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
「私たち死んじゃうんだね……まだ生きたいのに……」
この悪魔に自分たちはあっけなく殺されて人生の舞台から退場させられると、死に怯えて体が意志とは関係なく震えて絶望的な気分になっていた。
「私の命より大切なムギを家に残しているのに……私が帰らなかったらムギはご飯も食べられないし、寂しがって泣いているわ」
「ムギって何?」
「猫です」
メイドの中に猫を飼っている者もいたようで、自分が帰らなかったらご飯が食べられなくて猫が悲しがると心配をしていた。彼女は猫を家族のように大切に思っているようだ。
生まれたばかりの赤ちゃん猫の時から、愛情をもって育てて可愛がっている。それなのに主人の彼女に大変残念なことだが全くムギは懐いてくれない。いつもは素っ気ない態度のくせに餌を欲しがる時は、どこかくすぐったい鼻にかかる媚を含んだ声で彼女にしなだれかかってくる。おねだりをして甘えてくる時は食事の時だけだが、仕方ないと彼女も不満に思いながらも納得していた。
「こんな時に猫の心配してるの……?」
「はい」
隣にいたメイドが呆れたような顔で言った。こんな危機的な状態で猫の心配をするとは、愛猫家の心境というものは普通の感覚の人間には理解のできないものだった。
「――アンナよけろーっ!」
ルークが叫んだ。焦りを抑えきれない声で彼は激しく動揺していた。その理由は悪魔がアンナを目掛けて襲いかかって来た。ルークはプリシラに虫でも払うように簡単にふっ飛ばされた。壁に激突した時は骨の砕ける音がして大きなダメージを受けた。ルークは倒れて身動きできなかったので、声だけでもと大きく響かせる。アンナに悪魔の攻撃を回避してくれ! と強い意志が感じられる。
「な、なぜだ――――――どうしてなんだ……!?」
悪魔はアンナに襲いかかって何かしようとしたみたいだが、思うようにいかなくて困ったような顔していた。悪魔は何度もアンナに攻撃しようと頑張っていたが、もうお手上げ状態でどうにもならなかった。
人間など矮小で脆く、ちょっとした衝撃で壊れてしまう弱く無力な生き物、と悪魔は考えていて恐るるに足らんと舐めきっていた。それがどうしたことか? 目の前にいる見た目に美しい女性には攻撃が通用しなかった。アンナにはまばゆい光があふれ出て後光が差して神々しく見える。その幻想的な光がアンナの身体を守っていた。
悪魔はアンナに攻撃魔法を連発して雨あられのごとく降らせたり、途切れることなく丸太のように硬く鍛え上げられた筋肉の塊といえる腕で拳を繰り出しておきながら、心が引きつけられて魅力に酔いしれていた。悪魔にも美に対する感覚は人間と同じくらいに持っていたようだ。
「今、……何した?」
アンナは口調が変わっていた。いつもみたいに丁寧な物腰で、誰に対しても限りない優しさを込めた笑顔はなかった。アンナは苛立たしいような気持ちで不機嫌そうに目を細めていた。
公爵家の家族や使用人に、無能で使えない役立たずと言われて冷たく扱われても、非常識で失礼なことを言いそうなマナーの悪い人にも、ある程度のことは深い愛情から寛大な心で許せる。
だがアンナは、ルークを傷つけられて何か吹っ切れたようだった。攻撃を仕掛けてきた悪魔にはもう容赦しないと情を捨てて、冷酷無残なやり方で相手の息の根を止める事を決めた。
「ひぃ―――――――っ! 私は愚かで頭が悪いくせに調子に乗ってしまいました。どうか許してええええぇ――――――――――――――――ッッ!」
目の前にいる美しい女性から、明確な殺意のこもった視線を向けられた。悪魔の顔に怯えが走った瞬間、ひぃーっという哀れで滑稽な悲鳴を上げた。悪魔は平身低頭の態度をとって泣きべそ顔を晒して命乞いをしてきた。
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