妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です！」

2話 妹の狡猾な策略

婚約が決まってからというもの、アリシアはオリバーと会う機会が増えた。幼馴染のオリバーは、ずっとアリシアに好意を持っていた。アリシアはオリバーの穏やかな物腰と、時折見せるユーモアに心を許していた。オリバーはアリシアの学識の深さや、内に秘めた優しさに改めて気づき、彼女を深く尊敬するようになった。二人は互いの趣味や興味について語り合い、一緒に庭園を散策したり書斎で静かに本を読んだりする時間を楽しんだ。

「アリシア様は、本当に色々なことをご存知なのですね。お話を聞いていると、とても勉強になります」

オリバーが穏やかな声でそう言うと、アリシアは少し頬を赤らめて答えた。

「そんな…オリバー様こそ、博識でいらっしゃいます。それに、いつも私の話を真剣に聞いてくださって、ありがとうございます」

幼馴染とはいえ謙虚な態度をとっていた。二人は温厚で控えめな性格のため、そのくらいな距離感が心地よかった。アリシアにとって、オリバーと過ごす時間は、屋敷での孤独を忘れさせてくれるかけがえのないものだった。オリバーと話していると、心が温かくなり未来への希望が湧いてくるようだった。

しかし、そんな二人を冷たい視線で見つめる者がいた。アリシアの義妹のローラである。ローラは、姉であるアリシアがオリバーのような魅力的な男性と婚約したことが許せなかった。自分こそがオリバーにふさわしいと信じているローラは、二人の親密な様子を見るたびに嫉妬の炎を燃やしていた。

ローラはあの手この手でオリバーに近づこうとした。美しいドレスを身につけ、わざとらしい笑顔で話しかけたり、困っているふりをして助けを求めたり。しかし、オリバーはローラの上辺だけの振る舞いに全く興味を示さず、いつも礼儀正しく、そっけない態度で応じていた。

焦ったローラは、今度はアリシアの悪評を流し始めた。

「姉は性格が悪くて、使用人たちにも酷く当たっている」
「学識があると言っても、ただの変わり者」

ローラは、事実無根の噂を社交界の女性たちの間で囁いた。

「ねえ、聞いた？　アリシア様って、婚約者のオリバー様にはあんなに優しそうな顔をしているけど、本当は陰険らしいわよ」
「あら、そうなの？　お気の毒ね、オリバー様」

ローラは、自分の言葉が人々にどう影響するかを理解していた。純粋なアリシアは、妹の悪意に全く気づいていなかった。まさか、妹が自分を陥れようとしているとは夢にも思わなかったのだ。オリバーとの幸せな時間に心を奪われ、周囲の悪意に気づく余裕がなかったのかもしれない。

ある日、アリシアはオリバーと庭園を散歩していた。色とりどりの花が咲き誇る中で、二人は穏やかな時間を過ごしていた。

「この花、とても綺麗ですね」

アリシアがそう言って、赤い薔薇の花に目をやると、オリバーは優しい笑顔で答えた。

「ええ、アリシア様のように美しい」

オリバーの言葉に、アリシアは再び頬を赤らめた。その時、背後から甲高い声が聞こえた。

「あらあら、お二人で仲睦まじく。羨ましいわ」

振り返ると、ローラが取り巻きの貴婦人たちと一緒立っていた。ローラはわざとらしく目を丸くして言った。

「姉様は本当に幸せ者ね。オリバー様のような素敵な方と婚約できて。でも、姉様、少しはオリバー様を労わってあげてくださいね。いつも難しい話ばかりしていると、疲れてしまいますわ」

ローラの発言に、アリシアは一瞬戸惑った。オリバーとの会話は、決して難しい話ばかりではなかったはずだ。しかし、ローラの発言を聞いた貴婦人たちは、面白そうに顔を見合わせている。オリバーは苦笑いを浮かべた。

「ローラ様、ご心配ありがとうございます。ですが、アリシア様との会話は、私にとっては何よりも楽しい時間です」

オリバーの言葉に、ローラは顔を歪めたがすぐに作り笑顔に戻って言った。

「まあ、オリバー様ったら。お優しいのね」

アリシアは、ローラの言葉に小さな違和感を覚えた。しかし、オリバーが自分の味方をしてくれたことで、その違和感を打ち消そうとした。アリシアはまだ妹の悪意の深さを知らなかった。