婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

佐藤 美奈

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第10話

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エリザベスは基本的に好きになった相手には依存心が強い。それに共感して理解を示してくれた同世代の初めての女性がジャックの婚約者のクロエだということでこの上ない喜びを感じてとても懐く。

最初にジャックの婚約者クロエに会う前には楽しみだけど体が緊張で強張って血の気の引いた顔をしていた。やはり学園での悲しい過去を思い出してあがきのとれない苛立ちを心の奥に感じる。教室での苦痛な空間が脳裏をかすめるだけで胸の中が痛み過呼吸になった。

それでも悲しみを乗り越えようと自分なりに努力して来たエリザベス。新しい自分に生まれ変わりたくて常々女性の友人を意識して欲しがっていたのです。

「エリザベスの友達になりたいと言う令嬢を呼んだぞ」
「お父様!私は親友と呼べる本当の友人が欲しいのです!こんな見せかけだけの友人は望んでおりませんし不要です!」

生まれながらに家が富豪で運命を掴んで贅沢な暮らしをしていたエリザベスは互いの趣味や感情が理解できて心が通じて悩みなど何でも話し合える友人を希望していた。

エリザベスが同性の友人が欲しいと言えば父親が金にものを言わせて自分よりも爵位が上の貴族の令嬢を家に招待することも拍子抜けするほどあっさり実現する。

莫大な財産を築き上げているエリザベスの家と繋がりを持ちたい貴族はいくつもあり、父親が頼めば快く感じのいい柔らかな微笑で愛嬌を振りまいていくらでもすり寄ってくる。中にはあからさまに媚びる態度で瞳の奥が全く笑っていない笑顔でとにかく続々として集う。

「私には偽りがない真の友人はできないのかな……」

父親の呼んだ令嬢達は皆揃ってエリザベス自身ではなくエリザベスの家との深い関わり合いを持つことが目的で、それがエリザベスにも目に見えて分かり言葉では言い表せない絶望した思いで虚しい日々が過ぎていく。

ありのままに言うとエリザベスの要望するような友人を見つけるのは普通に生活している者でも容易に作れるものでもない。

だがジャックの家だけは違った。ジャックとは幼馴染で家の財産とは関係なく自分のことを見てくれて大切にして愛してくれた。実のところジャックの家に毎月お金を支援していたことはエリザベスが少し大きくなってから小耳に挟んで知る。

それでもジャックとその両親とは気が合い仲良くし一緒にいると安らぎ感じジャックの家はエリザベスにとって落ち着ける場所でジャックに対して恋愛感情はないが話をしている時も充実感に満ちるほど心地良かった。そんな時あの日それ以上の存在が目の前に現れる。

「私のことを理解してくれるのはクロエさんだけです」
「えっ!?」
「初めてこの趣味のことを分かり合える人に出会いました」
「そんなことはないと思うけど……それよりちょっと距離が近いよ?」
「そんなことありません!私達は今日運命の出会いをしたのです!」
「そ、そうかなあ……?」

エリザベスには少々変わった趣味もありそれもクロエと話した時に受け入れてくれた。ただ単にクロエは話を合わせて会話の間を取り相槌を打っていただけでしたがエリザベスは尋常でない好意を持つ。クロエはやれやれと言わんばかりの困った表情をしていたがエリザベスはお構いなしで積極的に迫る。

クロエは当然ながら女性だがエリザベスはクロエに胸のときめきを覚え遠い憧れのような存在にまでなっていて恋人に似た気持ちになり心を奪われていた。
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