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第11話

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「クロエと仲直りして恋人に戻りました」
「ジャックよくやったぞ!お前は我が家の救世主だ!立派な息子に育った!」
「あんな別れ方をしてよく元の関係に戻れたわね。あなたは家の誇りよ!」

クロエに謝罪の手紙を折れない心でしつこく送り続けたところ、実を結び返事が来るようになりとうとう会う約束までこぎつける。

顔を合わせたらジャックは飾ることなくひたすら謝りクロエに許されると、また婚約を誓えるような関係に戻りたいと体裁など構わず土下座をして泣き叫び捨て身の心持ちで頼み込むとクロエは根負けして復縁することに頷いてくれた。

ジャックは喜びすぎて思わず飛び回り浮かれ気分で子供みたいなはしゃぎ方をしていた。そしてクロエのことを女神のように感じて心酔したのです。

家に帰り両親に報告するとすがりついてきて肩を叩いたり抱き合ったりして息子の労をねぎらう。これで首の皮一枚繋がって家もどうにか崩壊せずに済む。後はエリザベスとクロエが親密な仲になればいい。

「クロエさんとヨリを戻したのなら早く連れてきて!会いたい!」

エリザベスは以前と何も変わっていない様子でジャックの家に通いリビングで寝っころがり安らぎに浸る顔で自由気ままにくつろいでいた。

クロエと関係を修復したことを伝えて先ほど涙を流しながら肩を抱き合った両親は並んで小さくまとまって座り愛情を感じさせるやわらかな瞳でエリザベスを見守っている。

「仲直りして恋人に戻ったのなら大至急家に呼べ!エリザベスがもう限界だぞ!」
「そうよ!また食事に招待しましょう!」

自分達が無茶な要求をしていることは両親も重々自覚しているが、期日が差し迫って残りわずかで時間がない。エリザベスは本気らしくこのままでは本当に家への金銭的援助が停止する。

ジャックの家は言わば砂の上に建つ紙細工で出来た家で相当にもろく少しの揺れで崩れていく。非常事態で昔の貧乏のトラウマに両親が恐れているのか切羽詰まった余裕がない顔で心が不安定になるのも仕方ない。

クロエにエリザベスの相手をさせるのは間違ってると心の底で理解していても家のことを考えればクロエに頼るしか他に道がない。両親から急かされジャックは復縁したばかりのクロエにもう一度家に招待しようと思いを巡らす。

「クロエ」
「なに?」
「あの…家に来ない?」
「えっ!?」
「両親もこの前のことを謝罪したいって言ってるから…」

数日後、この日デートを終え別れる時に家に招待したいとジャックは余裕のない顔つきで切り出した。恋人に戻ってから最初のデートで家に誘うという突拍子もない言動にクロエは脳内に混乱が起こりジャックの言っている意味を図りかねる。

「幼馴染の子とは距離を置いたんだよね?」
「当たり前じゃないか。クロエが嫌がることをするわけないだろう」
「わかった。いつ?」
「ありがとう!明日来て!」
「そんなに急に?」
「両親も速やかにクロエに詫びたいっていつも言ってるんだ」

眉間にしわを寄せて不思議に思い少しだけ探りを入れたような質問をするクロエにジャックは心が揺れながらもその場をどうにか切り抜けるが、実に綱渡りのような人生に情けなくなり喪失感で押し潰されそうになる。

エリザベスのことはとりあえずクロエが家に来てから事情を説明すればいいだろう。まずはクロエに家に来てもらわないと話にならない。エリザベスのさじ加減一つで音もなく吹けば飛ぶようなジャックの家が瞬く間に消えてなくなる。

このままジャックと付き合えばいずれ婚約することになると知恵を絞った結果クロエはジャックの家に行くことに承諾した。両親に謝罪の機会を与えてくれたクロエにジャックはお礼を言ってその日は別れた。

「クロエさん来てくれるの?」
「明日来るよ」
「やったー!」

エリザベスは相変わらずジャックの家で横たわっていたが、憧れのクロエの来訪を教えられると余程嬉しいのか飛び起きて喜びを隠せない自然な輝きがある表情になり夜遅くまでジャックの両親を誘い小躍りして父親は腰を痛めていた。
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