幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。

第10話

武芸では高い実力を見せて試験官を務めた人たちからは、文句なしに合格点以上を獲得かくとくしていたのですが、それ以外の事で結局Sランク試験に受からなかった。お話にならないほど頭の悪いアルスとオリバーのせいです。

「この僕がわからないなんて……この引き算というのが難しすぎないか？」
「俺は、たし算も全然わかんねえぞ！」

子供ができるような簡単な計算問題でも、考えるだけで頭痛がしてしまうほどの無学なアルスとオリバーは、普段はマナー講師の仕事をしている色白でおっとりとした試験官に、明らかな怒鳴り声をあげて事もあろうに合格させないと、どうなるかわかってるだろうな？と脅おどすような言動をした。

「ふざけるな！どうして冒険者に計算問題やマナーが必要なんだ？」
「そ、そんなこと私に言われましても……それにこの問題は小さいお子様にも解ける比較的容易よういな問題ですが……」
「なんだと！ガキでも正解できる問題が出来ない俺たちをバカにしてるのか？」
「いや、あの、そんなことは少しも思っておりません……」

頭の発達が幼稚ようちなアルスとオリバーは試験官の男性に、悪党顔負けの口調で喧嘩腰けんかごしでつっかかるような態度を取りはじめた。

計算問題の試験の前に貴族に対する礼儀正しい挨拶あいさつを行う試験を受けたが、何度もダメ出しをされたことが原因だろうか？とレベッカは思っていた。普段から無口なオリバーが巨大な図体をぶるぶると震わせて、怒りを露あらわにしたのが強烈な衝撃だった。

「俺たちの頭がからっぽで悪かったな？あ？この野郎っ！」
「こんな計算も出来なくて低脳すぎると言いたいのか？僕をナメてるのか！」
「ひいぃぃぃーっ」

二人は計算問題の試験の最中に耐えがたい苛いら立ちを覚えて、我慢できず暴れだしてしまった。戦いも苦手で暴力的な手段に慣れてない行義作法の男性試験官は、二人にすごまれて震え上がり口から泡を噴ふいて倒れてしまう。

「今の悲鳴はなんだ？」
「これは一体何があったんだ！」

悲鳴を聞きつけた職員がすぐに踏ふみ込んできた。倒れた試験官は担架たんかに乗せられて、そのまま病院に運び去られた。幸いなことに命に別状はなかったが、当然ながらSランク試験は不合格の判定を受けて、レベッカ達まで長いお説教される羽目になりました。

「――レベッカの友達は凄いね……あははは……」
「信じられないな……」
「……」
「……」

レベッカが勇者パーティーの幼馴染たちとのSランク試験の出来事を話したら、レオンは呆あきれたような表情をして言い乾かわいた笑い声をたてた。

リアムは、そんなのあり得ないだろう？という感じで、アメリアとマリンは口をぽかんと開けたまま絶句して、ドン引き間違いなしの険しい顔つきをしていた。