異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

文字の大きさ
149 / 332

147話 「フラグは回収するもの」

しおりを挟む
大勢の人が行き交う街の大通りを一際目立つ集団が歩いて行く。
先頭を行く二人も整った顔立ちをしている為それなりに人目は引くが、問題は後ろの5人だろう。巨大な兎に3人のリザートマン達、それに外套をすっぽりとかぶった怪しげな人物。
正直めちゃくちゃ目立っている。

「じゃーまず服ですね。とにかく人前にでられる格好にしないと……」

ちらちらと視線を集めながらもそれに気が付いていないのか、気にしないことにしたのか加賀は周りの目を気にしたような様子は見せずすたすたと大通りを歩いて行く。

「ここです……店員さーん、ちょっといいですか」

割と宿の近くにある服屋に入るなり店員に声を掛ける加賀。
呼ばれて近寄ってきた店員をみるとドラゴンの背を押し口を開いた。

「この人にあいそうな服を見繕ってください、全身」

「はぁ……かしこまりました、ではこちらにどうぞ」

ドラゴンを店の奥へと連れて行くドラゴンそ見送りつつもついて行こうとはしない一同。
とりあえず店員に押しつけよう、それが皆の共通した思いだったのかも知れない。

「それじゃー次はリザートマンさん達のお買いものですねー。今日はどこに行きます?」

加賀の言葉を聞いて3人でヒソヒソと何やら話し合う様子のリザートマン達、やがてどうするか決まったのか1人が代表して前に出る。

「この街では黒鉄と呼ばれる木材を扱ってると聞いてます、それを入手したいのですが」

「んー…」

黒鉄、確かにこの街では扱っているのは確かである。だがどこで入手できるかとなると加賀には思い当たる店がない。
少しの間顔に指当て考えていた加賀であるが諦めたように指を降ろすとリザートマン達に向かい口を開く。

「それちょっと分からないかな、八木なら分かると思うけど……確か今日は現場って言ってたし、場所近いから聞きに行こっか」

そう言って八木の元へと向かう一同、程なくして八木の働く現場へと到着するがどうも様子がおかしいようだ。
武装した連中がしきりに誰かへと話しかけているように遠目から確認できる。

「わーなにかありそう」

「あれ、八木だね」

「あらまあ……まさか八木が回収するとは」

バクスによって立てられたフラグであったが、回収したのはなぜか加賀でなく八木であったらしい。

「険悪な感じではなさそうだけどー……あ、でも八木すっごい苛ついてそう」

「そうなの?」

「うん、多分だけどね」

遠目から見る限り言い争ってる様子はなく、八木の態度も普段とそう変わらないように見えるが、加賀には何となく八木が苛ついているのを感じ取ったらしい。

「対処する?」

「もめ事になりそうだったらお願いしてもいいいでしょうか……げっ」

八木の方を見ながらアイネと会話していた加賀であったが急に顔をしかめ声を漏らす。
加賀の視線の先では八木を囲んでいた内の一人がふと何気なくあたりを見渡し加賀達へ向け視線をピタリと合わせるところであった。

「うっわ、見られたー」

「こっち来るねあれ」

「どうしよっかな」

こちらをみたその男は仲間の肩を叩くとこちらに指先を向けなにかを言っているようだ。十中八九リザートマン達の事だろう。

「今日はラヴィいないんだよね」

探索者達の対応はラヴィがいればかなりスムーズにいく。だが今日はあいにくとラヴィはダンジョンに行っているため不在である。
加賀が悩んでいる打ちにも探索者達は加賀達に向かい近寄り始めている。
加賀は後ろに居たうーぎゃんをじっと見つめ口を開く。

「うーちゃん、騒ぎにならないようにあの連中こっちに来ないようにって出来るかな?」

うー(よゆーよゆー)

加賀の返事を待たずぱっと飛び出すうーちゃん、瞬時に探索者達の前に現れたかと思うと普段のつぶらな瞳からはとても想像出来ない様な殺気混じりの視線を彼らに向けた。

「おー……」

たったそれだけでお終いである、そこには器用にも立ったまま気絶する探索者達の姿と、なぜかとばっちりでこちらも立ったまま気絶するドラゴンの姿があった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...