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148話 「新人教育とかあるらしい」
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気絶した者は置いて八木の方へと向かう一同。
八木も加賀達の存在には気付いており、加賀達が近づくと軽く手を上げ声を掛ける。
「よっ、助かったよいい加減しつこくてさー……ま、野次馬居なくなるまで中はいって行きなよ。……えっと、そっちの方は?」
「ん、この人はドラー……ンさん、宿のお客さんだよ」
「ドラーン? ……ああ、はいなるほどね。ま、入った入った」
そう言って手招きしながら現場近くに立てられた簡易小屋に入っていく八木。加賀達も少し遅れて中へと入る。
小屋の中は簡易小屋とは言え時には大勢が休憩に使うこともありそれなりの広さとなっている。体の大きなリザートマン達が3人入っても特に不自由はなさそうである。
「最近おおいの?」
「んー? ……あぁ、確かに最近多いな。と言うよりああいった輩は最近になって出て来た感じだな」
加賀の質問に対し少し考える仕草を見せる八木。すぐにさきほどの連中のことを言っているのだろうと思い言葉を返す。
加賀は最近増えたのでは無く、出て来たと聞いて不思議そうに目を瞬かせる。
「あ、そなの?」
「うん、前も半分冗談でPT入らないかって言う奴は居たけど、俺が素人だって分かるとすぐ話しを引っ込めたからね」
「へー」
本当参ったよと言って飲み干したコップをテーブルにおく八木。
よほど辟易したのかその顔には先ほどまでなかった不満がありありと浮かんでいる。
「俺は素人だって言っても聞きやしない、終いには仕事の邪魔だから帰れ言ったらさそんな下らない仕事止めて一緒にダンジョンに行こう、だってさ」
「そんなことあったんか」
まあ、飲め飲めと言って空になった八木のコップに酒を注いでいくヒューゴ。
仕事を終え宿に戻った八木を待ち構えていたのヒューゴをはじめとする探索者達であった。加賀から昼の出来事を聞かされ八木の話を聞こうと待っていたのだ。
「んー……ダンジョン増えてから本当の新人が増えたみたいだなあ、この前ソシエも声掛けられたし」
「ギルドでちょくちょく見るっすね! この前ヒルデさんが男と間違われて相手ぶっとばしてたっすよ!」
「おいおい、まあ分からんでもないがちゃんと手加減してんだろうなあ」
新たに増えたダンジョン目当てで新たに探索者となった者達であるが、その若さゆえの勢いでもって色々と節操なく勧誘しまくっているらしい。
「そろそろあれくるんじゃね?」
「む……そうだのお」
あれがくるんじゃないかと言うヒューゴに同調する様に頷く探索者達。
一人八木だけが何のことか理解しておらず不思議そうに首を傾げていた。
「? あれってなんすか?」
「えーと、新人の通過儀礼のようなものですよ。教育と称して1週間ほど私達のような上位の探索者つきっきりで面倒をみるんです」
「へー……大変っすな」
糸目を弧に歪め語るチェスター。
言葉のところどころから感じられる物騒な響きになんとなく何をするか想像した八木は曖昧な笑みを浮かべる。
「まあ、実際受けときゃ色々と役に立つんだけどな、基本はある程度叩き込むし。色んな連中との顔つなぎもやるし」
「基本ですか? 1週間で?」
「おう、心構えだけだがなっ」
そういってけらけらと笑うヒューゴを見て八木は昼間見た新人たちに少しだけ同情するのであった。
「だれがやるとかどう決めるんです?」
「ん、そうだなあ……上位の連中から大丈夫そうなやつらを見繕ってあとは適当……ああ、一度受けると何年かは指定されねーな」
前に受けたのいつだっけ? と言うヒューゴを見て呆れた様子でアルヴィンが話始める。
「4年前ですよ‥…この宿のメンバーは皆選ばれる可能性がありますね」
「お、じゃあ俺らにくるかもなー」
俺らにくるかもと言うヒューゴであるが、その顔にはあまりめんどくさいとかそういった負の感情は浮かんでいないように見える。
普通のこの手の新人教育的なものは嫌がるのではと思っていた八木は不思議そうにぽつりとつぶやく。
「意外っすね」
「うん?」
八木としては小さく呟いただけのつもりであったが、しっかりと周りの人には聞こえていたらしい。
集まる視線に少し以後事地悪そうにしながら口を開く八木。
「めんどくさいとかなりそうだなと思ったんですけど……別にいやそうではないなあと」
「まー、めんどいっちゃめんどいんだけどさ。これやっとかないと回りまわって自分たちの首絞める事にいかねないし。それにだ」
「それに?」
「たまに若くてかわいい子いるんだぜ!」
「……そっすか」
おそらくそれが本命の理由ではないかと思う八木であるが敢えて口には出さないようである。
野郎だらけのところに当たれと心の中で念じつつ酒を煽るのであった。
「ちょっとよろしいですか?」
「お? 何、デートのお誘い?」
そして翌日の早朝、総合ギルド内にてダンジョンに行く前に依頼の張られた掲示板を眺める宿の探索者達であったが、そこにギルドの職員が声をかける。
「依頼の事で相談したい事があります」
「あー……あれかな。ここに居るの全員?」
ヒューゴの狩る愚痴をスルーし相談したい旨を伝えるギルド職員。
ここに居るの全員かと尋ねるヒューゴの問いにこくりと頷くのであった。
八木も加賀達の存在には気付いており、加賀達が近づくと軽く手を上げ声を掛ける。
「よっ、助かったよいい加減しつこくてさー……ま、野次馬居なくなるまで中はいって行きなよ。……えっと、そっちの方は?」
「ん、この人はドラー……ンさん、宿のお客さんだよ」
「ドラーン? ……ああ、はいなるほどね。ま、入った入った」
そう言って手招きしながら現場近くに立てられた簡易小屋に入っていく八木。加賀達も少し遅れて中へと入る。
小屋の中は簡易小屋とは言え時には大勢が休憩に使うこともありそれなりの広さとなっている。体の大きなリザートマン達が3人入っても特に不自由はなさそうである。
「最近おおいの?」
「んー? ……あぁ、確かに最近多いな。と言うよりああいった輩は最近になって出て来た感じだな」
加賀の質問に対し少し考える仕草を見せる八木。すぐにさきほどの連中のことを言っているのだろうと思い言葉を返す。
加賀は最近増えたのでは無く、出て来たと聞いて不思議そうに目を瞬かせる。
「あ、そなの?」
「うん、前も半分冗談でPT入らないかって言う奴は居たけど、俺が素人だって分かるとすぐ話しを引っ込めたからね」
「へー」
本当参ったよと言って飲み干したコップをテーブルにおく八木。
よほど辟易したのかその顔には先ほどまでなかった不満がありありと浮かんでいる。
「俺は素人だって言っても聞きやしない、終いには仕事の邪魔だから帰れ言ったらさそんな下らない仕事止めて一緒にダンジョンに行こう、だってさ」
「そんなことあったんか」
まあ、飲め飲めと言って空になった八木のコップに酒を注いでいくヒューゴ。
仕事を終え宿に戻った八木を待ち構えていたのヒューゴをはじめとする探索者達であった。加賀から昼の出来事を聞かされ八木の話を聞こうと待っていたのだ。
「んー……ダンジョン増えてから本当の新人が増えたみたいだなあ、この前ソシエも声掛けられたし」
「ギルドでちょくちょく見るっすね! この前ヒルデさんが男と間違われて相手ぶっとばしてたっすよ!」
「おいおい、まあ分からんでもないがちゃんと手加減してんだろうなあ」
新たに増えたダンジョン目当てで新たに探索者となった者達であるが、その若さゆえの勢いでもって色々と節操なく勧誘しまくっているらしい。
「そろそろあれくるんじゃね?」
「む……そうだのお」
あれがくるんじゃないかと言うヒューゴに同調する様に頷く探索者達。
一人八木だけが何のことか理解しておらず不思議そうに首を傾げていた。
「? あれってなんすか?」
「えーと、新人の通過儀礼のようなものですよ。教育と称して1週間ほど私達のような上位の探索者つきっきりで面倒をみるんです」
「へー……大変っすな」
糸目を弧に歪め語るチェスター。
言葉のところどころから感じられる物騒な響きになんとなく何をするか想像した八木は曖昧な笑みを浮かべる。
「まあ、実際受けときゃ色々と役に立つんだけどな、基本はある程度叩き込むし。色んな連中との顔つなぎもやるし」
「基本ですか? 1週間で?」
「おう、心構えだけだがなっ」
そういってけらけらと笑うヒューゴを見て八木は昼間見た新人たちに少しだけ同情するのであった。
「だれがやるとかどう決めるんです?」
「ん、そうだなあ……上位の連中から大丈夫そうなやつらを見繕ってあとは適当……ああ、一度受けると何年かは指定されねーな」
前に受けたのいつだっけ? と言うヒューゴを見て呆れた様子でアルヴィンが話始める。
「4年前ですよ‥…この宿のメンバーは皆選ばれる可能性がありますね」
「お、じゃあ俺らにくるかもなー」
俺らにくるかもと言うヒューゴであるが、その顔にはあまりめんどくさいとかそういった負の感情は浮かんでいないように見える。
普通のこの手の新人教育的なものは嫌がるのではと思っていた八木は不思議そうにぽつりとつぶやく。
「意外っすね」
「うん?」
八木としては小さく呟いただけのつもりであったが、しっかりと周りの人には聞こえていたらしい。
集まる視線に少し以後事地悪そうにしながら口を開く八木。
「めんどくさいとかなりそうだなと思ったんですけど……別にいやそうではないなあと」
「まー、めんどいっちゃめんどいんだけどさ。これやっとかないと回りまわって自分たちの首絞める事にいかねないし。それにだ」
「それに?」
「たまに若くてかわいい子いるんだぜ!」
「……そっすか」
おそらくそれが本命の理由ではないかと思う八木であるが敢えて口には出さないようである。
野郎だらけのところに当たれと心の中で念じつつ酒を煽るのであった。
「ちょっとよろしいですか?」
「お? 何、デートのお誘い?」
そして翌日の早朝、総合ギルド内にてダンジョンに行く前に依頼の張られた掲示板を眺める宿の探索者達であったが、そこにギルドの職員が声をかける。
「依頼の事で相談したい事があります」
「あー……あれかな。ここに居るの全員?」
ヒューゴの狩る愚痴をスルーし相談したい旨を伝えるギルド職員。
ここに居るの全員かと尋ねるヒューゴの問いにこくりと頷くのであった。
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