156 / 332
154話 「高級宿だったらしい」
しおりを挟む
「はい、これ頼まれてた奴」
翌朝探索者達に前日頼まれていた日持ちのする弁当を渡す加賀……ではなくアイネ。
「アイネさんあざっす……加賀ちゃん大丈夫?」
受け取った探索者達は加賀が出てこないのを心配するように厨房の方へと視線を向ける。
そういったスケジュールが組まれていたのだろう。皆が皆、泊まりがけでダンジョンに行くことになり宿の従業員は昨晩から必死になって探索者達に渡す食料を拵えていたのだ。
アイネは余裕そうであるが、加賀はそうも行かなかったらしく厨房から出てくる気配がない。
「大分疲れていたけど今日一日休めば大丈夫だと思う」
「加賀さんには悪いことしていまいましたねぇ。事前に人数とか知らせておけば良かったです……」
「そうね、次からそうして貰えると助かる……集合時間遅れるよ?」
アイネの言葉に慌てて礼を言って玄関へと向かう探索者達。新人達より遅れるわけにはいかないのだろう。
集合場所であるギルド前に来てみればどうやらまだ新人たちは来ていなかったようだ。とりあえず新人達より遅れなかったことにほっとし、乱れた息を整える。
「お、きたか」
宿から急いできた探索者達ではあるが、それは正解だったかもしれない。
少しだけ新人達の意識も変わってきたのか、予想よりも早めに集合場所へと表れたのである。
「お待たせしました」
「いいや、大した待ってないよ……んじゃ、荷物確認から始めるかね」
そろったのを確認し新人達の荷物を確認しだす。今日は泊りがけでダンジョンに潜るのだ、それなりに用意は必要である。
「ま、こんなもんかね……ああ、携帯食は少なめで良いぞ。お前らの分も食料持ってきてるからな」
おまえの分も持ってきていると聞いた新人達の反応は様々だ。素直に喜ぶ者、嫌な予感に顔をしかめるもの、買いすぎた食料をどうしようかと頭を悩ますもの等々。
「……空が見える」
「迷路タイプだな、壁に片方の手を当てて進んできゃいずれ出口に着くが……間違っても実際手をつくなよ? 罠あっからな」
罠があると聞いて慌てて手を放す新人達、それを見て苦笑しつつ探索者たちは先へと進む。
迷路は他と比べ敵が多いがその分見返りも大きい。迷宮を抜ける頃には彼らはいくつかの宝箱を見つけることが出来ていた。もっとも見返りが大きいとは言ってもそれは低レベルなダンジョンにしてはという話であるが、それでも新人達は宝箱を見つけたことで喜びに満ちていた。
「それじゃ今日はここで野宿する。ああ、寝るときの見張りはこっちとそっち一人ずつ計二人で2時間毎に交代な」
んじゃ、飯にすっかねと言って焚火に向かうヒューゴ。
カバンから瓶詰めを取り出し中身を鍋にあけ水を入れ火にかける。
加賀はとりあえず日持ちしそうなものと言うことで水分を少なくして作ったスープや煮込みハンバーグ等を瓶詰めにしておいたのだ。冷蔵庫などに入れておけばひと月は余裕でも持つものであり、ダンジョンに潜る間であればまず問題ないだろう。
これ以外にはバクスの燻製肉や、アイネと加賀が作ったビスケットなども一緒に持ってきている。
少なくとも干し肉と干からびたパン等と比べれば大分上等な食事と言えるだろう。
「このスープうめえ」
「え、これ保存食? ……普段食ってるのより上等なんだけど」
「おう、そうだろ? 宿の人に言ってな用意してもらったんよ。 うん、うまいな」
普段食っているものを褒められると自然と自分もうれしくなるものだ。
ここまで新人達とすごす中ではじめて自然な笑顔を浮かべる探索者達。スープを啜り、ビスケットを浸してぱくりと食べ、ゆでた腸詰にかぶりつく。
「普段からこんなの食ってんですか?」
「んー? ……いや普段はもっと豪勢だな。今日は保存効くのだけ用意してもらったかなあ……味もまあ、やっぱ宿で食った方が上かな?」
「まじすか……その宿って、あれですよね? 東門のそばにある……」
東門のそばにはいくつか宿が存在するが、この言い方からしておそらく自分たちの泊っている宿であると理解して探索者はこくりと頷くと口を開く。
「2階建てのでかいやつだろ? あの宿だぞ」
「やっぱり」
顔を見合わせ納得したように頷く新人達。
彼らの反応をみて何か変な噂でもあるのだろうか、そう思った探索者は自然と口を開いていた。
「あの宿がどうかしたのか?」
「……やっぱ高いんすかね?」
そういうことかと、小さくほっと息を吐く探索者。
少し言いにくそうに頬をぽりぽりとかきつつ口を開く。
「食事の内容や酒を頼んだりで変わってくるが……大体1泊1万リアってとこだな」
1万リアと聞いて絶望したような表情を見せる新人達。
彼らが泊っている宿の下手すれば10倍近い価格である、料理を食べ興味を持ったがさすがにその値段は無理、と言うことだろう。
「まあ、何年か続けてりゃそのうち普通に泊れるようになるさ」
これは嘘ではない、今はまだ安定しないだろうが少なくともこの初心者用のダンジョンを安定して最下層まで行けるようになれば日々の出費を払った上でたまにバクスの宿に泊まるぐらいの余裕は生まれるだろう。
「だから無理はしないようにな、体が資本なんだ……お、チーズ入り」
割りとまじめな口調で無理はしないように新人達へ伝えるヒューゴ。
自身の経験もあるのだろう短い言葉ながらも新人達の心へきっと届いた事だろう……最後のは余計だが。
翌朝探索者達に前日頼まれていた日持ちのする弁当を渡す加賀……ではなくアイネ。
「アイネさんあざっす……加賀ちゃん大丈夫?」
受け取った探索者達は加賀が出てこないのを心配するように厨房の方へと視線を向ける。
そういったスケジュールが組まれていたのだろう。皆が皆、泊まりがけでダンジョンに行くことになり宿の従業員は昨晩から必死になって探索者達に渡す食料を拵えていたのだ。
アイネは余裕そうであるが、加賀はそうも行かなかったらしく厨房から出てくる気配がない。
「大分疲れていたけど今日一日休めば大丈夫だと思う」
「加賀さんには悪いことしていまいましたねぇ。事前に人数とか知らせておけば良かったです……」
「そうね、次からそうして貰えると助かる……集合時間遅れるよ?」
アイネの言葉に慌てて礼を言って玄関へと向かう探索者達。新人達より遅れるわけにはいかないのだろう。
集合場所であるギルド前に来てみればどうやらまだ新人たちは来ていなかったようだ。とりあえず新人達より遅れなかったことにほっとし、乱れた息を整える。
「お、きたか」
宿から急いできた探索者達ではあるが、それは正解だったかもしれない。
少しだけ新人達の意識も変わってきたのか、予想よりも早めに集合場所へと表れたのである。
「お待たせしました」
「いいや、大した待ってないよ……んじゃ、荷物確認から始めるかね」
そろったのを確認し新人達の荷物を確認しだす。今日は泊りがけでダンジョンに潜るのだ、それなりに用意は必要である。
「ま、こんなもんかね……ああ、携帯食は少なめで良いぞ。お前らの分も食料持ってきてるからな」
おまえの分も持ってきていると聞いた新人達の反応は様々だ。素直に喜ぶ者、嫌な予感に顔をしかめるもの、買いすぎた食料をどうしようかと頭を悩ますもの等々。
「……空が見える」
「迷路タイプだな、壁に片方の手を当てて進んできゃいずれ出口に着くが……間違っても実際手をつくなよ? 罠あっからな」
罠があると聞いて慌てて手を放す新人達、それを見て苦笑しつつ探索者たちは先へと進む。
迷路は他と比べ敵が多いがその分見返りも大きい。迷宮を抜ける頃には彼らはいくつかの宝箱を見つけることが出来ていた。もっとも見返りが大きいとは言ってもそれは低レベルなダンジョンにしてはという話であるが、それでも新人達は宝箱を見つけたことで喜びに満ちていた。
「それじゃ今日はここで野宿する。ああ、寝るときの見張りはこっちとそっち一人ずつ計二人で2時間毎に交代な」
んじゃ、飯にすっかねと言って焚火に向かうヒューゴ。
カバンから瓶詰めを取り出し中身を鍋にあけ水を入れ火にかける。
加賀はとりあえず日持ちしそうなものと言うことで水分を少なくして作ったスープや煮込みハンバーグ等を瓶詰めにしておいたのだ。冷蔵庫などに入れておけばひと月は余裕でも持つものであり、ダンジョンに潜る間であればまず問題ないだろう。
これ以外にはバクスの燻製肉や、アイネと加賀が作ったビスケットなども一緒に持ってきている。
少なくとも干し肉と干からびたパン等と比べれば大分上等な食事と言えるだろう。
「このスープうめえ」
「え、これ保存食? ……普段食ってるのより上等なんだけど」
「おう、そうだろ? 宿の人に言ってな用意してもらったんよ。 うん、うまいな」
普段食っているものを褒められると自然と自分もうれしくなるものだ。
ここまで新人達とすごす中ではじめて自然な笑顔を浮かべる探索者達。スープを啜り、ビスケットを浸してぱくりと食べ、ゆでた腸詰にかぶりつく。
「普段からこんなの食ってんですか?」
「んー? ……いや普段はもっと豪勢だな。今日は保存効くのだけ用意してもらったかなあ……味もまあ、やっぱ宿で食った方が上かな?」
「まじすか……その宿って、あれですよね? 東門のそばにある……」
東門のそばにはいくつか宿が存在するが、この言い方からしておそらく自分たちの泊っている宿であると理解して探索者はこくりと頷くと口を開く。
「2階建てのでかいやつだろ? あの宿だぞ」
「やっぱり」
顔を見合わせ納得したように頷く新人達。
彼らの反応をみて何か変な噂でもあるのだろうか、そう思った探索者は自然と口を開いていた。
「あの宿がどうかしたのか?」
「……やっぱ高いんすかね?」
そういうことかと、小さくほっと息を吐く探索者。
少し言いにくそうに頬をぽりぽりとかきつつ口を開く。
「食事の内容や酒を頼んだりで変わってくるが……大体1泊1万リアってとこだな」
1万リアと聞いて絶望したような表情を見せる新人達。
彼らが泊っている宿の下手すれば10倍近い価格である、料理を食べ興味を持ったがさすがにその値段は無理、と言うことだろう。
「まあ、何年か続けてりゃそのうち普通に泊れるようになるさ」
これは嘘ではない、今はまだ安定しないだろうが少なくともこの初心者用のダンジョンを安定して最下層まで行けるようになれば日々の出費を払った上でたまにバクスの宿に泊まるぐらいの余裕は生まれるだろう。
「だから無理はしないようにな、体が資本なんだ……お、チーズ入り」
割りとまじめな口調で無理はしないように新人達へ伝えるヒューゴ。
自身の経験もあるのだろう短い言葉ながらも新人達の心へきっと届いた事だろう……最後のは余計だが。
10
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生小説家の華麗なる円満離婚計画
鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。
両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。
ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。
その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。
逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる