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235話 「無言になるやつ」
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午後のおやつの時間帯、フォルセイリアの大通りを宿に向かって歩くアイネと加賀の姿、それにぷかぷかと宙に浮かぶ荷物の姿があった。
荷物の正体は姿を消し、荷物だけ見えている状態のデーモンだ。時折ぎょっとした表情で荷物を見る者も居るが、大抵はもう見慣れているのかちらりと視線を向ける程度の反応しか無い。
「夕飯何にしようかなー」
「蟹尽くしで良いんじゃない」
「私は蟹クリームコロッケを食べてみたいです」
ちなみに荷物の中身はほぼ全て蟹である。
夕飯を何にしようかと呟く加賀であるが、蟹尽くしなのは確定済みだ。
荷物を持つ礼にと一品好きな者を選んで良いと言われていたデーモンはここぞとばかりに自分に食べたいものをぶっ込んでくる。
「寒いし良さそう。あとはいため物とー……とりあえず片付けてから考えようか。たっだいまー!」
夕飯について話している間に宿へと辿り着いていたようだ。
加賀は荷物を片手にまとめ扉を開くと元気よく声を上げて中へと入っていく。
うー!(かがー!)
「あ、うーちゃん元気してたがふぅうんっ!?」
入ると同時に廊下を駆け抜け加賀へと飛び込むうーちゃん。
うーちゃんの頭が加賀のお腹にどすりと突き刺さる。
うー!(かがー!)
「み、みぞおち……もー、どしたのさ」
うーちゃんとアイネに挟まれた加賀はぐりぐりとお腹に押しつける頭を軽く撫でてやる。
「むー? ……ちょっと痩せた?」
「おう……帰ったか」
そしてうーちゃんの体が心なしか痩せていることに気がつき首を傾げる加賀。そこに玄関へと出て来たバクスが声を掛ける。
声に反応した加賀は挨拶しようとし、バクスの姿を目にしてビクリと身を震わせる。
「あ、バクスさー……ん。なんかやつれてないです?」
うーちゃんに関しては毛皮が厚いため気のせいかな?とも思った加賀であったがバクスに関しては気のせいでは無いレベルでやつれているのが分かる。
「お帰りなさい、命」
「母ちゃんつやつやだし……」
そしてバクスに少し遅れて玄関へと出迎えに来た咲耶であるが、こちらは二人とは対照的にとても元気でつやつやしているようにすら見える。
「まあ、何があったか何となく想像できた。よしよし、今日は珍しくて美味しいの作ったげるからねー」
3人を見て何があったのか理解した加賀。まだ頭をぐりぐりと押しつけるうーちゃんを撫で慰めるのであった。
「そういやその大量の荷物はなんだ? ああ、いや食材買い込んだのは分かるが」
空中にぷかぷかと浮かんだ荷物を見て加賀に話しかけるバクス。
「蟹って言う海の食べものですねー。とりあえず厨房へ運んじゃいますよー」
荷物をまだ片付けていなかった事を思い出した加賀はデーモンに声を掛けると厨房へと運び込み、そしてバクスに見せるため中身をとりだす。
「ほー……なかなかでかいな」
「夕飯は蟹尽くしなんでお楽しみにー」
暴れないようにひもで縛られている為コンパクトにまとまっているが、二人が買いあさったのは蟹としては割と大ぶりのものである。思わず顔がにやけるバクスに加賀は指を二本立て蟹のまねをしてたりする。
「そう言えば八木達はまだ戻ってないんですねー」
「ああ、言われてみれば遅いなあいつら、昼過ぎに帰ってきてもおかしくはいんだが」
移動時間自体は八木達の方が大分短い、仮に朝に出ていたとすれば昼過ぎには宿に戻っていてもおかしくはない。
「噂をすれば、だな」
「おっかえりー」
だが噂をすれば何とやらで、玄関が俄に騒がしくなる。
少し間を置いてガヤガヤと騒がしい集団が食堂へと入ってきた。
「わー、何その樽」
「酒だよ酒。今日の夜飲み頃になるように仕込んだ奴お土産にくれたんだ」
「っへー」
彼らがまず部屋に戻ったりせず食堂へと向かった理由、それは一抱えもある酒がたっぷり入った大きな樽であった。
「てわけで加賀。ご飯期待してるっぜ」
「えー……美味しいのは保証するけど、そのお酒に合うかは知らないよー?」
樽を食堂に置きぱしぱしと叩く八木にそう返す加賀。実際蟹は美味しいが全ての酒に合うわけでは恐らくないだろう。
「平気平気、とりあえず風呂はいってくらー」
合わなければ後で別に飲めば良い。
八木は対した気にする様子もなくヒラヒラと手を振りお風呂へとむかう。
「わしらも入るとするかの」
「正直風呂に関してはここのが良いよな」
「うむ」
残りのメンバーも同様に風呂へと向かう。
どうも風呂に関しては宿の方が良いと彼らは感じていたようだ。
宿に帰ったらすぐ風呂に入ろう、そう予め決めていたのだろう対した時間も掛からずに皆風呂へと行ってしまった。
風呂から出ればすぐに食事となる。
加賀は急いで厨房へと向かい食事の用意をするのであった。
「今日のご飯は蟹尽くしだよー。じゃ、いっぱい食べてねー」
夕食時となり、テーブルには蟹料理が並んでいる。時間がなかった為か品数は少なめであるが茹で蟹が山になっていたりと見た目のインパクトは中々である。
「……急に静かになったね」
「茹で蟹もあるからねー」
初めは騒がしく料理を食べていた一同であったが、ある程度落ち着いた所で茹で蟹に取りかかり、そして皆一様に無言となる。
どうやら蟹を食べると無言になると言うのはここでも共通であるようだ。
荷物の正体は姿を消し、荷物だけ見えている状態のデーモンだ。時折ぎょっとした表情で荷物を見る者も居るが、大抵はもう見慣れているのかちらりと視線を向ける程度の反応しか無い。
「夕飯何にしようかなー」
「蟹尽くしで良いんじゃない」
「私は蟹クリームコロッケを食べてみたいです」
ちなみに荷物の中身はほぼ全て蟹である。
夕飯を何にしようかと呟く加賀であるが、蟹尽くしなのは確定済みだ。
荷物を持つ礼にと一品好きな者を選んで良いと言われていたデーモンはここぞとばかりに自分に食べたいものをぶっ込んでくる。
「寒いし良さそう。あとはいため物とー……とりあえず片付けてから考えようか。たっだいまー!」
夕飯について話している間に宿へと辿り着いていたようだ。
加賀は荷物を片手にまとめ扉を開くと元気よく声を上げて中へと入っていく。
うー!(かがー!)
「あ、うーちゃん元気してたがふぅうんっ!?」
入ると同時に廊下を駆け抜け加賀へと飛び込むうーちゃん。
うーちゃんの頭が加賀のお腹にどすりと突き刺さる。
うー!(かがー!)
「み、みぞおち……もー、どしたのさ」
うーちゃんとアイネに挟まれた加賀はぐりぐりとお腹に押しつける頭を軽く撫でてやる。
「むー? ……ちょっと痩せた?」
「おう……帰ったか」
そしてうーちゃんの体が心なしか痩せていることに気がつき首を傾げる加賀。そこに玄関へと出て来たバクスが声を掛ける。
声に反応した加賀は挨拶しようとし、バクスの姿を目にしてビクリと身を震わせる。
「あ、バクスさー……ん。なんかやつれてないです?」
うーちゃんに関しては毛皮が厚いため気のせいかな?とも思った加賀であったがバクスに関しては気のせいでは無いレベルでやつれているのが分かる。
「お帰りなさい、命」
「母ちゃんつやつやだし……」
そしてバクスに少し遅れて玄関へと出迎えに来た咲耶であるが、こちらは二人とは対照的にとても元気でつやつやしているようにすら見える。
「まあ、何があったか何となく想像できた。よしよし、今日は珍しくて美味しいの作ったげるからねー」
3人を見て何があったのか理解した加賀。まだ頭をぐりぐりと押しつけるうーちゃんを撫で慰めるのであった。
「そういやその大量の荷物はなんだ? ああ、いや食材買い込んだのは分かるが」
空中にぷかぷかと浮かんだ荷物を見て加賀に話しかけるバクス。
「蟹って言う海の食べものですねー。とりあえず厨房へ運んじゃいますよー」
荷物をまだ片付けていなかった事を思い出した加賀はデーモンに声を掛けると厨房へと運び込み、そしてバクスに見せるため中身をとりだす。
「ほー……なかなかでかいな」
「夕飯は蟹尽くしなんでお楽しみにー」
暴れないようにひもで縛られている為コンパクトにまとまっているが、二人が買いあさったのは蟹としては割と大ぶりのものである。思わず顔がにやけるバクスに加賀は指を二本立て蟹のまねをしてたりする。
「そう言えば八木達はまだ戻ってないんですねー」
「ああ、言われてみれば遅いなあいつら、昼過ぎに帰ってきてもおかしくはいんだが」
移動時間自体は八木達の方が大分短い、仮に朝に出ていたとすれば昼過ぎには宿に戻っていてもおかしくはない。
「噂をすれば、だな」
「おっかえりー」
だが噂をすれば何とやらで、玄関が俄に騒がしくなる。
少し間を置いてガヤガヤと騒がしい集団が食堂へと入ってきた。
「わー、何その樽」
「酒だよ酒。今日の夜飲み頃になるように仕込んだ奴お土産にくれたんだ」
「っへー」
彼らがまず部屋に戻ったりせず食堂へと向かった理由、それは一抱えもある酒がたっぷり入った大きな樽であった。
「てわけで加賀。ご飯期待してるっぜ」
「えー……美味しいのは保証するけど、そのお酒に合うかは知らないよー?」
樽を食堂に置きぱしぱしと叩く八木にそう返す加賀。実際蟹は美味しいが全ての酒に合うわけでは恐らくないだろう。
「平気平気、とりあえず風呂はいってくらー」
合わなければ後で別に飲めば良い。
八木は対した気にする様子もなくヒラヒラと手を振りお風呂へとむかう。
「わしらも入るとするかの」
「正直風呂に関してはここのが良いよな」
「うむ」
残りのメンバーも同様に風呂へと向かう。
どうも風呂に関しては宿の方が良いと彼らは感じていたようだ。
宿に帰ったらすぐ風呂に入ろう、そう予め決めていたのだろう対した時間も掛からずに皆風呂へと行ってしまった。
風呂から出ればすぐに食事となる。
加賀は急いで厨房へと向かい食事の用意をするのであった。
「今日のご飯は蟹尽くしだよー。じゃ、いっぱい食べてねー」
夕食時となり、テーブルには蟹料理が並んでいる。時間がなかった為か品数は少なめであるが茹で蟹が山になっていたりと見た目のインパクトは中々である。
「……急に静かになったね」
「茹で蟹もあるからねー」
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どうやら蟹を食べると無言になると言うのはここでも共通であるようだ。
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