異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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287話 「そう言えばそんな時期」

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昼食も終わり、夕飯の仕込みも終えたおやつ時。
何時もの様におやつ目当ての者達が食堂へと集まっていた。
ただ今日は探索者達は皆出払っているのか人数は少なめである。

「今日のおやつなんだろねー?」

うー(みかんー?)

最近よりふっくらしてきたうーちゃんの頬をぶにぶにと揉みしだく加賀。
うーちゃんは慣れか、それとも気持ちが良いのかされるがままである。

「ミカンかー。ミカンもいいね、でも今日のはアイネさんが作るからミカンじゃないんだよねー」

今日のおやつ担当はアイネの様だ。
加賀の加護の関係もあり、普段は加賀とアイネの二人で作ることが多いが、今回は加賀が手を加えた物を素材にするとの事でアイネ一人で作っていたりする。

「ミカンか、コタツに入って食うと良いよな……冬までに作るか」

ミカンと言えばコタツ。
八木の頭の中ではその図式がある様だ。
秋が終わればこの世界にきて3度目の冬が来る。あまり自分の好きなことに対して何かを作ると言った事をして来なかった八木であるが。ここでの生活が落ちついてきた事もあって何かしら心境に変化が出て来たのかも知れない。

「あ、いいな。完成したら遊びに行っていい?」

「おう、ええぞ」

「引きこもりにならない様にね……」

冬のコタツは危険である。
一度入ってしまえば中々抜け出す事は出来ない。コタツについて話す二人にしっかり釘を刺しておく咲耶であった。

「……コタツ? おやつ出来たよ」

そうこう話している内にアイネがおやつを作り終え、厨房からお皿を持って出てくる。

「おーっ」

「初めて見るな。クリームを生地で巻いてるのな」

アイネが作ったおやつは宿では初めて見る物であった。
くるりと筒状に巻かれた生地に茶色いクリーム状の物が詰まっていた。

うー(うまーっ)

「なぬ……あ、サクサクで……これっ、中のクリームもしかしてキャラメル!?」

「うめえうめえ」

「すごく久しぶりねえ……」

「そう、キャラメルだよ……うん、美味しいね」

茶色いクリーム状の物の正体はキャラメルであった。
さっくりした生地とクリームの相性が良く、それに数年ぶりに食べるキャラメルと言うこともあって特に八木と加賀、それに咲耶の転生組には非常に好評であった。

「キャラメルって作れるんだ……アイネさんすごい」

何となくキャラメルは買う物であって作る物と言うイメージが無かった加賀。感動した様子でサクサクとおやつを食べ進める。

「……この前作った練乳覚えてる? あれを長時間火に掛けただけだよ」

「ほへ」

アイネの言葉を聞いて口におやつを加えたまま首を傾げる加賀。
そんな加賀にアイネはざっと作り方について説明するのであった。


「練乳を……火に掛ける……だけで……知らなかった」

「こりゃ、食べきってから喋らんかい」

おやつを食べながら喋る加賀へ軽く注意する八木。
加賀は口の中身を飲み干すとコクリと頷き、

「……」

「喋らんのかいっ」

そのまま無言で次のおやつに取り掛かっていた。

「そうだ、加賀」

「あいあい」

何かを思い出したように加賀へ声を掛けるアイネ。

「収穫祭何を出すかもう決めた?」

「収……穫祭……?」

キョトンとした顔でアイネを見詰め返す加賀。
時期的にそろそろ収穫祭が開催されるが、完全に忘れている様子である。
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