317 / 332
315話 「鍋の季節 2」
しおりを挟む
次の日の朝、雪は既に止んでいるが昨晩から朝方にかけ振り続けた雪はあたり一面雪景色に変えていた。
宿の探索者達も半数近くが今日はダンジョン探索は休みのようで、部屋にこもったり、食堂でカードゲームに興じるなど各々暇をつぶしている。
「えーと……アードルフさんが鶏丸ごと、アルヴィンさんがボアのスペアリブ、アントンさんがボアの肉団子、イーナさんがすじ肉……肉率高くない? てかそれでいいのかエルフ……」
厨房でメモを見ながらぶつぶつと呟く加賀。
鍋の具材を用意するために各自から食材を受け取ったりリクエストを聞いたりしていたのだ。
だが今のところ全てが肉である。 野菜好きなイメージがあるエルフらのリクエストも肉であり、それでいいのかと頭を抑える加賀。
「それじゃ次、イクセルさんどーぞ」
まだ10人以上リクエストを聞かねばならい。
ペンを手に持ち次の者に声を掛けるのであった。
「それじゃお願いします」
「はーい。 ……イクセルさんはキャベツ1個まるごとロールキャベツっと。 やっと野菜成分がきた、半分お肉だけど」
リクエストの書かれた紙を改めてまじまじと見る加賀。
ふむ、と呟くと天井を見上げ独り言ちる。
「今のところは皆まともな食材なんだよねえ……嫌な予感するけど、次うーちゃん」
闇鍋といえばネタに走った食材が多くなるイメージがあるが、今のところ宿の探索者達のリクエストは豪快ではあるもののまともな食材だけであった。
だが、次の相手はうーちゃんである。 今朝がたうーちゃんがふらっとどこかに出かけるのを見かけていた加賀、いやな予感でいっぱいであった。
「うーちゃんは何を……うわっでっか!」
う(すごかろ)
のそっと厨房に入ってきたうーちゃんであるが、その腕に巨大な卵を抱えていた。
加賀がすっぽり入りそうな程に大きな卵である。それを抱えたうーちゃんもどこか誇らしげだ。
「うーちゃんこのでっかい卵どうしたの? いったいどこ……で、とって……キタノ?」
いったいどこで取ってきたのか、そう考えた加賀の脳裏に竜などを狩りまくるとあるゲームの光景が浮かぶ。
えっちらおっちら抱えた運んだあの卵。ちょうどこれぐらいのサイズではなかっただろうか? いったいうーちゃんがどこから卵を取ってきたのか。一つだけ加賀に思い当たる節があった。
うー(あっち)
「これドラゴンの卵じゃん!? だめ! 絶対ダメ! 返してきなさいっ」
うーちゃんが指した方角、それは街の北にある汽水湖の方であった。
そこでは現在もともと居る水竜に加え飛竜の番が住んでいるはずだ。
加賀の顔が一瞬で真っ青になる。加賀の脳裏には巣の隅っこで震える飛竜の番、それに対しあくどい顔で卵をかっさらう、うーちゃんの姿が浮かんでいた。
う(えー、むせーらんなのに)
「それでもですっ! ドラゴンさんは食材じゃナイカラネ!?」
うーちゃんを説得し卵を返しに行かせた加賀は沈み込むように椅子に腰かける。
いくら無精卵とはいえ新婚のドラゴンから卵を頂戴するのは色々と問題がある。
「やっぱ肉がおおい……えーとお肉以外はっと、ソシエさんが魚介類セット。 ヒルデさんがキノコいっぱい。ギュネイさんとカルロさんが野菜盛り合わせ……ヒューゴさんが餅、チェスターさんがほうれん草……好きなのかな」
ぐったりしながら紙を見る加賀。
ほぼほぼ全員からリクエストを聞き終わり、残すはラヴィのみとなった。
リクエストの多くはやはり肉であった、だが探索者達も恐らくそうなることは予想していたのだろう、何人かは野菜など肉以外の食材もリクエストに入れていた。
「ほかはお肉……あー最後はラヴィどーぞ」
食堂で待機しているであろうラヴィへと声を掛ける加賀。
呼ばれたラヴィは籠を抱え、嬉しそうに厨房へと入ってきた。
「卵お願いしてもいいかな!」
「予想通りだった、もちろんいいよー。 ゆで卵にしておく?」
「半熟で! あと玉子焼きもいいかな?」
人の言葉がうまく話せず、普段の会話では片言になってしまうラヴィであるが、加賀であればリザートマンの言葉で話しても通じるため、彼本来のしゃべり方となる。
「ん……だし巻きかな? いいよー」
「おでん? に入れるって聞いて試してみたかったんだよねー」
おでんに出し巻きを入れるところもあるが、それをラヴィに話したかどうか記憶にない加賀は軽く首をかしげる。
が、すぐに八木なり誰かが話したのだろうとメモにゆで卵と出し巻き卵と書き加えるのであった。
「おーっし。 そいじゃ仕込みに入るかなー……アイネさーん!」
最後の一人を手を振って見送った加賀。
夕飯に向けて仕込みを開始すべく、アイネに声をかけ厨房の奥へと向かっていった。
宿の探索者達も半数近くが今日はダンジョン探索は休みのようで、部屋にこもったり、食堂でカードゲームに興じるなど各々暇をつぶしている。
「えーと……アードルフさんが鶏丸ごと、アルヴィンさんがボアのスペアリブ、アントンさんがボアの肉団子、イーナさんがすじ肉……肉率高くない? てかそれでいいのかエルフ……」
厨房でメモを見ながらぶつぶつと呟く加賀。
鍋の具材を用意するために各自から食材を受け取ったりリクエストを聞いたりしていたのだ。
だが今のところ全てが肉である。 野菜好きなイメージがあるエルフらのリクエストも肉であり、それでいいのかと頭を抑える加賀。
「それじゃ次、イクセルさんどーぞ」
まだ10人以上リクエストを聞かねばならい。
ペンを手に持ち次の者に声を掛けるのであった。
「それじゃお願いします」
「はーい。 ……イクセルさんはキャベツ1個まるごとロールキャベツっと。 やっと野菜成分がきた、半分お肉だけど」
リクエストの書かれた紙を改めてまじまじと見る加賀。
ふむ、と呟くと天井を見上げ独り言ちる。
「今のところは皆まともな食材なんだよねえ……嫌な予感するけど、次うーちゃん」
闇鍋といえばネタに走った食材が多くなるイメージがあるが、今のところ宿の探索者達のリクエストは豪快ではあるもののまともな食材だけであった。
だが、次の相手はうーちゃんである。 今朝がたうーちゃんがふらっとどこかに出かけるのを見かけていた加賀、いやな予感でいっぱいであった。
「うーちゃんは何を……うわっでっか!」
う(すごかろ)
のそっと厨房に入ってきたうーちゃんであるが、その腕に巨大な卵を抱えていた。
加賀がすっぽり入りそうな程に大きな卵である。それを抱えたうーちゃんもどこか誇らしげだ。
「うーちゃんこのでっかい卵どうしたの? いったいどこ……で、とって……キタノ?」
いったいどこで取ってきたのか、そう考えた加賀の脳裏に竜などを狩りまくるとあるゲームの光景が浮かぶ。
えっちらおっちら抱えた運んだあの卵。ちょうどこれぐらいのサイズではなかっただろうか? いったいうーちゃんがどこから卵を取ってきたのか。一つだけ加賀に思い当たる節があった。
うー(あっち)
「これドラゴンの卵じゃん!? だめ! 絶対ダメ! 返してきなさいっ」
うーちゃんが指した方角、それは街の北にある汽水湖の方であった。
そこでは現在もともと居る水竜に加え飛竜の番が住んでいるはずだ。
加賀の顔が一瞬で真っ青になる。加賀の脳裏には巣の隅っこで震える飛竜の番、それに対しあくどい顔で卵をかっさらう、うーちゃんの姿が浮かんでいた。
う(えー、むせーらんなのに)
「それでもですっ! ドラゴンさんは食材じゃナイカラネ!?」
うーちゃんを説得し卵を返しに行かせた加賀は沈み込むように椅子に腰かける。
いくら無精卵とはいえ新婚のドラゴンから卵を頂戴するのは色々と問題がある。
「やっぱ肉がおおい……えーとお肉以外はっと、ソシエさんが魚介類セット。 ヒルデさんがキノコいっぱい。ギュネイさんとカルロさんが野菜盛り合わせ……ヒューゴさんが餅、チェスターさんがほうれん草……好きなのかな」
ぐったりしながら紙を見る加賀。
ほぼほぼ全員からリクエストを聞き終わり、残すはラヴィのみとなった。
リクエストの多くはやはり肉であった、だが探索者達も恐らくそうなることは予想していたのだろう、何人かは野菜など肉以外の食材もリクエストに入れていた。
「ほかはお肉……あー最後はラヴィどーぞ」
食堂で待機しているであろうラヴィへと声を掛ける加賀。
呼ばれたラヴィは籠を抱え、嬉しそうに厨房へと入ってきた。
「卵お願いしてもいいかな!」
「予想通りだった、もちろんいいよー。 ゆで卵にしておく?」
「半熟で! あと玉子焼きもいいかな?」
人の言葉がうまく話せず、普段の会話では片言になってしまうラヴィであるが、加賀であればリザートマンの言葉で話しても通じるため、彼本来のしゃべり方となる。
「ん……だし巻きかな? いいよー」
「おでん? に入れるって聞いて試してみたかったんだよねー」
おでんに出し巻きを入れるところもあるが、それをラヴィに話したかどうか記憶にない加賀は軽く首をかしげる。
が、すぐに八木なり誰かが話したのだろうとメモにゆで卵と出し巻き卵と書き加えるのであった。
「おーっし。 そいじゃ仕込みに入るかなー……アイネさーん!」
最後の一人を手を振って見送った加賀。
夕飯に向けて仕込みを開始すべく、アイネに声をかけ厨房の奥へと向かっていった。
0
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生小説家の華麗なる円満離婚計画
鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。
両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。
ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。
その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。
逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる