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98話 「意外と知らない身近なもの」
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「お、やっと見えてきたな」
御者台に座る、アードルフかラードルフ……どちらかが声を上げる。
それにつられた何名かが歓声を上げ馬車の窓から身を乗り出すと馬車の進む方向へと顔を向ける。
暇を潰すにも限界がある、いい加減馬車から降りて好きに動きたいのだろう。たとえそれが日が暮れるまでのわずかな時間だとしても。
「相変わらずこっからの眺めはいいもんだ。ソシエも見えないならここ来るか?」
「えっ、いいよ。何度か見てるし」
「ほれ、遠慮すんなって」
馬車の屋根から港を見渡すギュネイ。
人混みに邪魔される事なく景色を一望できるのは良いものだ。
屋根の上に登るのを拒否したソシエを何とか登らせようとじゃれ合う二人の姿を見て、またかと言った表情をする他の者達。二人を横目に馬車から降りると、ずっと座り込んでいた為凝り固まった体をほぐすように大きく伸びをする。
「ふぃー……そんじゃ、二人とはここで一旦お別れだの。アイネさんがおれば問題ないだろが気をつけてな」
「はい、みなさんもお気をつけてー。八木の事頼みます」
アイネと加賀に手を振り馬車と共に街中へと向かう一同。
八木と一緒に行くメンバーは北門付近で、アイネと加賀は南門付近で宿を取ることになる。
「んじゃ、ここでお別れだな。そっちはそっちで気をつけてなー」
「八木もね。あ、うーちゃんも拾い食いとかしちゃだめよ?」
うっ(んなことするかーっ)
最後に残った八木とうーちゃんと言葉を交わし、馬車が見えなくなるまで見送る二人。
「それじゃそろそろ私たちも……私がたまに使っていた宿があるの、そこに泊まりましょう」
「はーい」
時折観察するような視線を受けながらも宿へと向かう二人。
二人とも人目を引く容姿であり、服も咲耶手製のものだ、目立つのも仕方の無いことだろう。
それでもまだ明るく大通りを歩いていたこともあり二人は無事宿へとたどり着く。
「そういえばアイネさん。明日から何で移動するんです?」
加賀がここまで乗ってきた馬車は二台とも八木達が使う事となっており、二人の移動手段は今のところ徒歩のみである。
「南門に私の……そうね、明日まで秘密にしておこうかしら」
「え、なになに。気になるんだけどー……」
明日のお楽しみと言って微笑むだけで教えてくれそうに無いアイネ。
時折加賀が思いついた移動手段を言うがどれも外れのようである。そのままその日は時間切れとなり二人は明日に備えて寝るのであった。
そして翌朝、北門に向かった八木達であるがまさに死屍累々といった様子である。
時折うめき声を上げ、コップに注いだ水を飲みまた横になる。先ほどからこの光景が繰り返されているのだ。
「ほら! みんな起きた起きたー。もうそろそろ出発するんだかんね!」
そこに響き渡るシェイラの元気な声。
その場にいた者は力なく悲鳴を上げると頭を抱え悶えはじめた。
「……声、でっけえ」
「そんなんなるまで飲む方が悪いんでしょっ」
さき下行ってるからね! そう言って階段を降りていくシェイラ。
後に残された者はよろよろと力無く立ち上が……ろうとしてそのまま力尽きたように布団につっぷす。
十分後再びシェイラの元気な声が辺りに響くのであった。
「二日酔いの状態で馬車に乗るのは自殺行為だと思うんだ」
「まったくだよお……あー果物おいしい」
時刻は昼過ぎ、二日酔いのまま場所に乗り込んだ一同はグロッキーになりながらも予定通りの所まで道を進んでいた。
今は軽い昼食もかねて小休止中である。
「この後はどんな予定なんすか?」
「……もう少し進むと橋があります……そこを越えて2~3時間も進めば次の街が見えてくるので、今日はそこで宿を取ります」
比較的元気な八木。雑談がてらにこの後の予定を尋ねる。
答えたのはアルヴィンであるがどこか元気がない、どうかしたのかと思う八木であるがアルヴィンも飲み過ぎで二日酔いになってたのを思い出す。このエルフ中々にポンコツなところがあるらしい。
「橋ってことは川でも渡るのかな」
「うんにゃ、川じゃなくて湖だよー。海と一部つながってんだよねー」
その言葉にへえと呟く八木。
海と繋がっていると言うことは汽水湖である、ただの湖であれば何度も見たことがある八木であるが実は汽水湖は見たことがなかったりする。
橋渡るときに見よう、そう思う八木であった。
「あの……なんか水平線が見えるんだけど、これむっちゃでかいんじゃ?」
休憩後再び馬車に乗り込んだ一同であるが、動き出してからさほど立たないうちに橋へとたどり着いていた。
場所の窓からのぞく景色は湖と言うよりは海と言われた方がしっくり来るような光景であった。
「そりゃひろいよー、たしかフォルセイリアよりも先まで広がったはず」
「へー……フォルセイリアってどこ?」
八木の言葉に口をあんぐりと開けて固まるシェイラ。
その後呆れた様子ながらもフォルセイリアがどこであるかを八木に説明する。
……説明するとは言えたった一言で住むのだが
「八木達が住んでた街だよ……」
「あっ、そうなんだ?」
よくよく考えれば一度も自分たちの住む街の名前を聞いていなかった八木。
初めて聞くその名前に感慨深げに頷くのであった。
「街のすぐ北に汽水湖あったんだ……」
「けっこう近いよ、10キロぐらいだったかなー?」
今八木達の前に広がる汽水湖は広く、フォルセイリアの割と近くまで続いているようだ。
10キロと言えば馬車で一時間もあれば付く距離である。
八木達が今までその存在に気がつかなかったのは街と汽水湖の間に広がる森のせいである。
「あれ……そんな近くに汽水湖あるなら何で魚あまり売ってないんだ……?」
「たしかいろんな種族が住処にしてて……たしか水竜もいるって話しだよ。だからじゃない?」
水竜と聞いてなるほどと思う八木。
そんな存在が居るのであれば少なくとも人は恐れて近寄ろうとはしないだろう。
水竜がいる汽水湖で漁をするのはさすがにリスクが高すぎる。
御者台に座る、アードルフかラードルフ……どちらかが声を上げる。
それにつられた何名かが歓声を上げ馬車の窓から身を乗り出すと馬車の進む方向へと顔を向ける。
暇を潰すにも限界がある、いい加減馬車から降りて好きに動きたいのだろう。たとえそれが日が暮れるまでのわずかな時間だとしても。
「相変わらずこっからの眺めはいいもんだ。ソシエも見えないならここ来るか?」
「えっ、いいよ。何度か見てるし」
「ほれ、遠慮すんなって」
馬車の屋根から港を見渡すギュネイ。
人混みに邪魔される事なく景色を一望できるのは良いものだ。
屋根の上に登るのを拒否したソシエを何とか登らせようとじゃれ合う二人の姿を見て、またかと言った表情をする他の者達。二人を横目に馬車から降りると、ずっと座り込んでいた為凝り固まった体をほぐすように大きく伸びをする。
「ふぃー……そんじゃ、二人とはここで一旦お別れだの。アイネさんがおれば問題ないだろが気をつけてな」
「はい、みなさんもお気をつけてー。八木の事頼みます」
アイネと加賀に手を振り馬車と共に街中へと向かう一同。
八木と一緒に行くメンバーは北門付近で、アイネと加賀は南門付近で宿を取ることになる。
「んじゃ、ここでお別れだな。そっちはそっちで気をつけてなー」
「八木もね。あ、うーちゃんも拾い食いとかしちゃだめよ?」
うっ(んなことするかーっ)
最後に残った八木とうーちゃんと言葉を交わし、馬車が見えなくなるまで見送る二人。
「それじゃそろそろ私たちも……私がたまに使っていた宿があるの、そこに泊まりましょう」
「はーい」
時折観察するような視線を受けながらも宿へと向かう二人。
二人とも人目を引く容姿であり、服も咲耶手製のものだ、目立つのも仕方の無いことだろう。
それでもまだ明るく大通りを歩いていたこともあり二人は無事宿へとたどり着く。
「そういえばアイネさん。明日から何で移動するんです?」
加賀がここまで乗ってきた馬車は二台とも八木達が使う事となっており、二人の移動手段は今のところ徒歩のみである。
「南門に私の……そうね、明日まで秘密にしておこうかしら」
「え、なになに。気になるんだけどー……」
明日のお楽しみと言って微笑むだけで教えてくれそうに無いアイネ。
時折加賀が思いついた移動手段を言うがどれも外れのようである。そのままその日は時間切れとなり二人は明日に備えて寝るのであった。
そして翌朝、北門に向かった八木達であるがまさに死屍累々といった様子である。
時折うめき声を上げ、コップに注いだ水を飲みまた横になる。先ほどからこの光景が繰り返されているのだ。
「ほら! みんな起きた起きたー。もうそろそろ出発するんだかんね!」
そこに響き渡るシェイラの元気な声。
その場にいた者は力なく悲鳴を上げると頭を抱え悶えはじめた。
「……声、でっけえ」
「そんなんなるまで飲む方が悪いんでしょっ」
さき下行ってるからね! そう言って階段を降りていくシェイラ。
後に残された者はよろよろと力無く立ち上が……ろうとしてそのまま力尽きたように布団につっぷす。
十分後再びシェイラの元気な声が辺りに響くのであった。
「二日酔いの状態で馬車に乗るのは自殺行為だと思うんだ」
「まったくだよお……あー果物おいしい」
時刻は昼過ぎ、二日酔いのまま場所に乗り込んだ一同はグロッキーになりながらも予定通りの所まで道を進んでいた。
今は軽い昼食もかねて小休止中である。
「この後はどんな予定なんすか?」
「……もう少し進むと橋があります……そこを越えて2~3時間も進めば次の街が見えてくるので、今日はそこで宿を取ります」
比較的元気な八木。雑談がてらにこの後の予定を尋ねる。
答えたのはアルヴィンであるがどこか元気がない、どうかしたのかと思う八木であるがアルヴィンも飲み過ぎで二日酔いになってたのを思い出す。このエルフ中々にポンコツなところがあるらしい。
「橋ってことは川でも渡るのかな」
「うんにゃ、川じゃなくて湖だよー。海と一部つながってんだよねー」
その言葉にへえと呟く八木。
海と繋がっていると言うことは汽水湖である、ただの湖であれば何度も見たことがある八木であるが実は汽水湖は見たことがなかったりする。
橋渡るときに見よう、そう思う八木であった。
「あの……なんか水平線が見えるんだけど、これむっちゃでかいんじゃ?」
休憩後再び馬車に乗り込んだ一同であるが、動き出してからさほど立たないうちに橋へとたどり着いていた。
場所の窓からのぞく景色は湖と言うよりは海と言われた方がしっくり来るような光景であった。
「そりゃひろいよー、たしかフォルセイリアよりも先まで広がったはず」
「へー……フォルセイリアってどこ?」
八木の言葉に口をあんぐりと開けて固まるシェイラ。
その後呆れた様子ながらもフォルセイリアがどこであるかを八木に説明する。
……説明するとは言えたった一言で住むのだが
「八木達が住んでた街だよ……」
「あっ、そうなんだ?」
よくよく考えれば一度も自分たちの住む街の名前を聞いていなかった八木。
初めて聞くその名前に感慨深げに頷くのであった。
「街のすぐ北に汽水湖あったんだ……」
「けっこう近いよ、10キロぐらいだったかなー?」
今八木達の前に広がる汽水湖は広く、フォルセイリアの割と近くまで続いているようだ。
10キロと言えば馬車で一時間もあれば付く距離である。
八木達が今までその存在に気がつかなかったのは街と汽水湖の間に広がる森のせいである。
「あれ……そんな近くに汽水湖あるなら何で魚あまり売ってないんだ……?」
「たしかいろんな種族が住処にしてて……たしか水竜もいるって話しだよ。だからじゃない?」
水竜と聞いてなるほどと思う八木。
そんな存在が居るのであれば少なくとも人は恐れて近寄ろうとはしないだろう。
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