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97話 「道中の楽しみ」
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数日後、街の西門をくぐる二台の大型馬車がいた。
一台はバクスの所有する馬車であり、もう一台は探索者達が所有する馬車である。
バクスの馬車は元より探索者達の馬車もダンジョン産のようで回りに居る普通の馬車とは趣が違う。
「それじゃ、皆さんの護衛の方よろしくお願いします」
探索者達に声を掛け自らも馬車に乗り込む八木。
遅れて加賀やアイネ、うーちゃんも乗り込んで行く。
どちらの馬車も10名は乗れる大きさであり探索者達は二手に分かれ馬車に乗り込む、そのうち数名は見張りのためだろうひょいひょいと器用にも馬車の屋根へとよじ登って行く。
彼らはこれから二日かけトゥラウニの街へ向かい、そこからさらに二手に分かれる手筈となっている。
二日もずっと馬車の中となると暇な時間が多くなる、自然と雑談したりトランプで遊んだり、中には昼寝を始める者が居たりと各自思い思いの方法で時間を潰していく。
加賀はトランプと雑談で時間を潰すことにしたようである。
トランプ片手に次の手を考えながらも周りに話を振っていく。
「皆さんの馬車もダンジョン産なんですね、もしかしてあの馬?もですか」
探索者達の馬車もダンジョン産であり、馬車の仕様はぱっとみバクスの物と変わらないように見える。全体は金属製でありタイヤはゴム製らしきもの、サスはエアサス等々。
ただ一点違うところとしてバクスの馬車はアンジェが曳いているのに対し、探索者達の馬車は馬ではなく石で出来たゴーレムと呼ばれる物が曳いているのだ。
「うんにゃ、あれはソシエちゃんが出した奴よー……ほいと」
「そこでAかよ……あれ魔法で作った奴なんすね。うりゃ」
馬と違い一度出してしまえば魔法が切れるか壊れるまで使用可能なゴーレム、疲労もなく食事も用意する必要は無いとメリットが多いが。もちろんデメリットもある。
まず魔法を使える者がいなければそもそも使えない、それに触媒として魔石を結構な量消費するのでコストはかなり高かったりする。
馬とどちらを選ぶかは宿の探索者レベルになるとこれはもう好みによるとしか言えない。
うっ(ほれ、ジョーカー)
「またかよっ」
そう叫んで頭を抱える八木。どうやら負けが込んでいるようだ。
回りでその様子を見ていたものから思わず笑い声が上がる。その後もなんとか挽回しようとする八木であるが最終的にシェイラと1対1となり負けてしまう。
「くそーっ、もう一回だもう一回」
そう言ってトランプを再び配る八木。
八木が勝てる時は果たしてくるのだろうか。
その後何事もなく旅は順調に進む、夕方には宿場町に到着し宿に行く者とそのまま馬車に残る者とに分かれる。
これは馬車の設備が宿と遜色ないレベルであるのと防犯のためでもある、そうそう盗めるものではないが万が一と言うこともある。
馬車に残った者は街の側で野宿となる。
食事は外と言うこともあり簡単な料理で済ませる事となる。焚き火で炙った腸詰めをパンに挟んだものと宿で仕込んできたコーンポタージュを温めたもの。何時もの宿の食事と比べると大分質素ではあるが野外で焚き火を囲んで食べる食事は不思議と美味しく感じるものだ。
皆満足げな表情で食後の御茶を飲んでいる。
食事も終わりあとは眠くなるまでどう時間を潰すかといったところで、ふいにアルヴィンが立ち上がる。
「さてと……ちょっと失礼しますね」
そう言って馬車に戻ったアルヴィンであるが、手に何かを持ちすぐに馬車から出てくる。
手に持った物をめざとく見つけたヒューゴが声をかける。
「風呂道具一式持ってどうすんだ……あ、お前もしかして」
「ええ、風呂ですよ。宿で毎日入るようになってから入らないとどうにも落ち着かなくなりまして」
そう言って馬車と街から離れていくアルヴィンをヒューゴは呆れた表情で見ながら口を開く。
「そっちは……お前まさか精霊魔法で風呂用意するつもりじゃ」
なんつー無駄遣いを……と呟くヒューゴに振り返ったアルヴィンが声を掛ける。
「おや、来ないのですか?」
「はっはっはっ、行くに決まってるだろがっ」
そう言って馬車に駆け寄ると風呂道具を手にアルヴィンの後ろを追うヒューゴ。残りの男連中もそれに習いぞろぞろと後をついて行く。
「え、皆行くの……? 馬車置いて?」
「うーん……じゃあ、こっちは加賀っち連れて風呂の用意だけしよっか? 他の人はちょっと待っててねー」
シェイラの言葉に何で自分が? と思う加賀であったが理由はシェイラの次の言葉ですぐ分かる。
「加賀っち精霊魔法使えるじゃん、普段お湯用意してるのも加賀っちでしょ」
「そういやそうだった!」
ほれいくよーと加賀を引っ張りながら男連中とは違う方向に向かう二人。
ほどよく離れたところで立ち止まるとここでいっか、と独りごちるシェイラ。
「それじゃー……どうしよ、まず私が大体作るから加賀っちは細かい部分お願いしてもいいかな?」
精霊とのやり取りを一切問題無く出来る加賀。
細かい指示を出すなら加賀の方が向いているだろう、加賀はシェイラの言葉に頷き少し離れて様子を見る。
「こんなもんかなー、加賀っちあとよろしっくう」
「あいさー、精霊さんおねがーい、お風呂っぽくしてくださいな」
大雑把に湯船と覗き見防止の壁が作られただけの風呂場。
そこに細かい指示と言われつつも非常に大雑把な指示を加賀が精霊にお願いする事で、ただの土壁だったものがつるりと陶器のような表面へと変化していく。湯船だけではなか床部分も同様である。
もの数十秒で出来上がった十分実用に耐える風呂場を見てシェイラは軽くため息を吐く。
「あんな指示でこんなんなっちゃうんだもんなー……」
すこしじとっとした目で加賀を見るシェイラ。
加賀は気まずそうに頬をかきながらどう答えたものかと悩んでいる様子である。
「じょうだんじょうだん! ほら皆の所もどろ?」
軽く手を振り笑うシェイラに答え皆の元に戻る加賀。
まだあまり時間が立っていないので当然男連中はまだ戻ってきていない。
加賀は馬車から風呂道具を手に取り男連中の後を追おうとするが
「だめ! 絶対、だめ!」
シェイラ他数名に反対され、男連中が戻るまでその場で待機となった加賀。
その後男連中が風呂から戻り、入れ替わりで加賀達が風呂へと向かう。今日はそれ以降特にこれといって何事もなく皆そろって就寝となった。
なおアイネが悪魔を大量に配置した為、覗こうとした不届きものは居なかった模様である。
一台はバクスの所有する馬車であり、もう一台は探索者達が所有する馬車である。
バクスの馬車は元より探索者達の馬車もダンジョン産のようで回りに居る普通の馬車とは趣が違う。
「それじゃ、皆さんの護衛の方よろしくお願いします」
探索者達に声を掛け自らも馬車に乗り込む八木。
遅れて加賀やアイネ、うーちゃんも乗り込んで行く。
どちらの馬車も10名は乗れる大きさであり探索者達は二手に分かれ馬車に乗り込む、そのうち数名は見張りのためだろうひょいひょいと器用にも馬車の屋根へとよじ登って行く。
彼らはこれから二日かけトゥラウニの街へ向かい、そこからさらに二手に分かれる手筈となっている。
二日もずっと馬車の中となると暇な時間が多くなる、自然と雑談したりトランプで遊んだり、中には昼寝を始める者が居たりと各自思い思いの方法で時間を潰していく。
加賀はトランプと雑談で時間を潰すことにしたようである。
トランプ片手に次の手を考えながらも周りに話を振っていく。
「皆さんの馬車もダンジョン産なんですね、もしかしてあの馬?もですか」
探索者達の馬車もダンジョン産であり、馬車の仕様はぱっとみバクスの物と変わらないように見える。全体は金属製でありタイヤはゴム製らしきもの、サスはエアサス等々。
ただ一点違うところとしてバクスの馬車はアンジェが曳いているのに対し、探索者達の馬車は馬ではなく石で出来たゴーレムと呼ばれる物が曳いているのだ。
「うんにゃ、あれはソシエちゃんが出した奴よー……ほいと」
「そこでAかよ……あれ魔法で作った奴なんすね。うりゃ」
馬と違い一度出してしまえば魔法が切れるか壊れるまで使用可能なゴーレム、疲労もなく食事も用意する必要は無いとメリットが多いが。もちろんデメリットもある。
まず魔法を使える者がいなければそもそも使えない、それに触媒として魔石を結構な量消費するのでコストはかなり高かったりする。
馬とどちらを選ぶかは宿の探索者レベルになるとこれはもう好みによるとしか言えない。
うっ(ほれ、ジョーカー)
「またかよっ」
そう叫んで頭を抱える八木。どうやら負けが込んでいるようだ。
回りでその様子を見ていたものから思わず笑い声が上がる。その後もなんとか挽回しようとする八木であるが最終的にシェイラと1対1となり負けてしまう。
「くそーっ、もう一回だもう一回」
そう言ってトランプを再び配る八木。
八木が勝てる時は果たしてくるのだろうか。
その後何事もなく旅は順調に進む、夕方には宿場町に到着し宿に行く者とそのまま馬車に残る者とに分かれる。
これは馬車の設備が宿と遜色ないレベルであるのと防犯のためでもある、そうそう盗めるものではないが万が一と言うこともある。
馬車に残った者は街の側で野宿となる。
食事は外と言うこともあり簡単な料理で済ませる事となる。焚き火で炙った腸詰めをパンに挟んだものと宿で仕込んできたコーンポタージュを温めたもの。何時もの宿の食事と比べると大分質素ではあるが野外で焚き火を囲んで食べる食事は不思議と美味しく感じるものだ。
皆満足げな表情で食後の御茶を飲んでいる。
食事も終わりあとは眠くなるまでどう時間を潰すかといったところで、ふいにアルヴィンが立ち上がる。
「さてと……ちょっと失礼しますね」
そう言って馬車に戻ったアルヴィンであるが、手に何かを持ちすぐに馬車から出てくる。
手に持った物をめざとく見つけたヒューゴが声をかける。
「風呂道具一式持ってどうすんだ……あ、お前もしかして」
「ええ、風呂ですよ。宿で毎日入るようになってから入らないとどうにも落ち着かなくなりまして」
そう言って馬車と街から離れていくアルヴィンをヒューゴは呆れた表情で見ながら口を開く。
「そっちは……お前まさか精霊魔法で風呂用意するつもりじゃ」
なんつー無駄遣いを……と呟くヒューゴに振り返ったアルヴィンが声を掛ける。
「おや、来ないのですか?」
「はっはっはっ、行くに決まってるだろがっ」
そう言って馬車に駆け寄ると風呂道具を手にアルヴィンの後ろを追うヒューゴ。残りの男連中もそれに習いぞろぞろと後をついて行く。
「え、皆行くの……? 馬車置いて?」
「うーん……じゃあ、こっちは加賀っち連れて風呂の用意だけしよっか? 他の人はちょっと待っててねー」
シェイラの言葉に何で自分が? と思う加賀であったが理由はシェイラの次の言葉ですぐ分かる。
「加賀っち精霊魔法使えるじゃん、普段お湯用意してるのも加賀っちでしょ」
「そういやそうだった!」
ほれいくよーと加賀を引っ張りながら男連中とは違う方向に向かう二人。
ほどよく離れたところで立ち止まるとここでいっか、と独りごちるシェイラ。
「それじゃー……どうしよ、まず私が大体作るから加賀っちは細かい部分お願いしてもいいかな?」
精霊とのやり取りを一切問題無く出来る加賀。
細かい指示を出すなら加賀の方が向いているだろう、加賀はシェイラの言葉に頷き少し離れて様子を見る。
「こんなもんかなー、加賀っちあとよろしっくう」
「あいさー、精霊さんおねがーい、お風呂っぽくしてくださいな」
大雑把に湯船と覗き見防止の壁が作られただけの風呂場。
そこに細かい指示と言われつつも非常に大雑把な指示を加賀が精霊にお願いする事で、ただの土壁だったものがつるりと陶器のような表面へと変化していく。湯船だけではなか床部分も同様である。
もの数十秒で出来上がった十分実用に耐える風呂場を見てシェイラは軽くため息を吐く。
「あんな指示でこんなんなっちゃうんだもんなー……」
すこしじとっとした目で加賀を見るシェイラ。
加賀は気まずそうに頬をかきながらどう答えたものかと悩んでいる様子である。
「じょうだんじょうだん! ほら皆の所もどろ?」
軽く手を振り笑うシェイラに答え皆の元に戻る加賀。
まだあまり時間が立っていないので当然男連中はまだ戻ってきていない。
加賀は馬車から風呂道具を手に取り男連中の後を追おうとするが
「だめ! 絶対、だめ!」
シェイラ他数名に反対され、男連中が戻るまでその場で待機となった加賀。
その後男連中が風呂から戻り、入れ替わりで加賀達が風呂へと向かう。今日はそれ以降特にこれといって何事もなく皆そろって就寝となった。
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