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Ⅲ
祝賀会
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それから式典はすぐに終わりましたが、ここまでたくさんの貴族たちが集まった以上、お話だけ聞いてはい終わりということにはなりません。
その夜は王宮にて陛下が主催する大きなパーティーが開かれます。
早速先ほどまで貴族たちが集まって話を聞いていた広間にはたくさんのテーブルが運び込まれ、たくさんの料理が並べられます。
さらに広間の奥には王家お抱えの楽団が現れ、楽器の音を奏でていました。
「わあ、ここまですごいパーティーを見るのは初めてです」
私は少しはしたないと思いつつも、思わず周囲をきょろきょろしてしまいます。どこを見渡してもおいしそうな料理が並んでおり、床に目を向ければ高そうな絨毯が、壁に目を向ければ高そうな絵画が目に入ってきました。
そんな私にブラッドが苦笑しながら言います。
「それは僕もだ。他の貴族たちもパーティー自体は見慣れているだろうが、おそらくここまでのパーティーは経験がないんじゃないか」
「どうすればいいのでしょう?」
「とりあえずしばらくは立食の時間だからご飯を食べながら式典開始前のように、初対面の方に挨拶をすればいいだろう。もっとも、父上たちのところにはもう賑わっているようだが」
そう言ってブラッドが向いた方を見ると、つい先ほどまで隣にいたはずの男爵夫妻の周囲にはすでに人だかりが出来ていました。
他にも今回の式典で恩賞をもらった貴族たちの周りには大なり小なり人だかりが出来ています。
「恩賞をいただいた家は陛下に目をかけていただいている家ということだ。言葉は悪いが、それ目当てで近づいてくる者も多いのだろう」
「なるほど」
「しかしもう婚約者が決まっていて良かった。もしもまだだったらこれを機に政略結婚を持ちかけてくる相手がたくさんいただろう」
逆に言えば、今婚約相手を探せば我が家よりももっと条件のいい家と婚約することが出来たでしょう。そう考えると申し訳なくなってしまいます。
「うちのような家で申し訳ありません」
私が言うと、殿下は苦笑しましたがすぐに真剣な表情に戻ります。
「確かに君のご家族はあれな人ばかりだが……とはいえ、婚約者がキャロルであることに後悔はない。金とか地位目当てで近づいてくる相手はたくさんいるだろうが、そういう相手にはそれ相応の付き合い方があってわざわざ婚約者にする必要はない。婚約者は一人しか決められない上に一生変えられないのだから、この家にお金があってもなくても離れないでくれる相手の方がいいに決まっている」
ブラッドは私の目を見つめながら言いました。彼の口調からはそれが本心であることが伝わってきますし、私が逆の立場だったとしてもとても共感できるものでした。
それを聞いて私はほっとしました。
「良かったです。その点についてであれば私はこの場にいる誰にも負けない自信があります」
「それは良かった。僕の母上も我が家が苦しかった十年の間、変わらず父上を支えてくれたからな」
「では私たちも会場を回りましょうか」
「そうだな。とはいえ挨拶回りも大事だが今日ぐらいはパーティーを楽しんでもいいだろう。何か食べたいものがあればまずそれを食べても構わない」
「ありがとうございます。でしたら私はあちらの……」
こうして私はブラッドとともにパーティー会場回りを始めたのでした。
その夜は王宮にて陛下が主催する大きなパーティーが開かれます。
早速先ほどまで貴族たちが集まって話を聞いていた広間にはたくさんのテーブルが運び込まれ、たくさんの料理が並べられます。
さらに広間の奥には王家お抱えの楽団が現れ、楽器の音を奏でていました。
「わあ、ここまですごいパーティーを見るのは初めてです」
私は少しはしたないと思いつつも、思わず周囲をきょろきょろしてしまいます。どこを見渡してもおいしそうな料理が並んでおり、床に目を向ければ高そうな絨毯が、壁に目を向ければ高そうな絵画が目に入ってきました。
そんな私にブラッドが苦笑しながら言います。
「それは僕もだ。他の貴族たちもパーティー自体は見慣れているだろうが、おそらくここまでのパーティーは経験がないんじゃないか」
「どうすればいいのでしょう?」
「とりあえずしばらくは立食の時間だからご飯を食べながら式典開始前のように、初対面の方に挨拶をすればいいだろう。もっとも、父上たちのところにはもう賑わっているようだが」
そう言ってブラッドが向いた方を見ると、つい先ほどまで隣にいたはずの男爵夫妻の周囲にはすでに人だかりが出来ていました。
他にも今回の式典で恩賞をもらった貴族たちの周りには大なり小なり人だかりが出来ています。
「恩賞をいただいた家は陛下に目をかけていただいている家ということだ。言葉は悪いが、それ目当てで近づいてくる者も多いのだろう」
「なるほど」
「しかしもう婚約者が決まっていて良かった。もしもまだだったらこれを機に政略結婚を持ちかけてくる相手がたくさんいただろう」
逆に言えば、今婚約相手を探せば我が家よりももっと条件のいい家と婚約することが出来たでしょう。そう考えると申し訳なくなってしまいます。
「うちのような家で申し訳ありません」
私が言うと、殿下は苦笑しましたがすぐに真剣な表情に戻ります。
「確かに君のご家族はあれな人ばかりだが……とはいえ、婚約者がキャロルであることに後悔はない。金とか地位目当てで近づいてくる相手はたくさんいるだろうが、そういう相手にはそれ相応の付き合い方があってわざわざ婚約者にする必要はない。婚約者は一人しか決められない上に一生変えられないのだから、この家にお金があってもなくても離れないでくれる相手の方がいいに決まっている」
ブラッドは私の目を見つめながら言いました。彼の口調からはそれが本心であることが伝わってきますし、私が逆の立場だったとしてもとても共感できるものでした。
それを聞いて私はほっとしました。
「良かったです。その点についてであれば私はこの場にいる誰にも負けない自信があります」
「それは良かった。僕の母上も我が家が苦しかった十年の間、変わらず父上を支えてくれたからな」
「では私たちも会場を回りましょうか」
「そうだな。とはいえ挨拶回りも大事だが今日ぐらいはパーティーを楽しんでもいいだろう。何か食べたいものがあればまずそれを食べても構わない」
「ありがとうございます。でしたら私はあちらの……」
こうして私はブラッドとともにパーティー会場回りを始めたのでした。
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