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館での厚遇
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「さて、悪いけど俺はこの後父上への報告や賊の尋問などがある。その間、彼女に館を案内させようと思う。不自由があれば何でも言ってくれ」
オーウェン様が言うと、一人のメイドが室内に入ってきます。私よりも少し年下の少女ですが、慣れているのかオーウェン様の前でも堂々としています。
「彼女はうちに代々使えている家臣の娘で、レナという」
「レナと申します。イレーネ様のお世話をさせていただきますので何なりと申し付けくださいませ」
そう言って彼女はスカートの端をつまんで一礼します。その丁寧な所作は王宮にいた殿下のメイドとほぼ変わらず、驚いてしまいました。
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
「ではまずは客間へご案内しますね」
そう言って私は彼女に続いて歩きます。館の中を歩きながら、時々「イレーネ様、ここは〇〇様の部屋です」「ここは書庫です」などと説明をしてくれます。
「あの、一ついいですか?」
「はい、何でしょう」
「私に様をつけて呼ぶのはやめてもらえないでしょうか。私はもう聖女ではなく、ただの客人に過ぎませんので」
「そんな! オーウェン様からウィラード一族と同じぐらい丁重にもてなせとのご命令を受けております! むしろイレーネ様こそ私に敬語を使うのをおやめください。もったいなきことでございます」
私の言葉に、レナには逆に言い返されてしまいました。
そうは言っても、私は聖女の位についていただけで元々はただの平民に過ぎない。聖女でなくなった今、他人にそこまで敬われるとやりづらい。
「分かりました……いえ、分かったわ。そういうことなら私はくだけた話し方をするから、レナも様付けはやめて欲しい」
「分かりました、イレーネ……さん」
これで若干話しやすくなりました。もっとも王宮では誰に対しても敬語だったので逆に変な感じもしますが。
「こちらがイレーネさんの客間です」
「あの、これは客間というか家では?」
私が案内されたのは館のメインの建物から少し離れたところにある一軒家のような建物でした。
「はい、うちの館は広いのが取り柄なので」
それは答えになっているようないないような……。
「中へどうぞ」
彼女について入っていくと、中には寝室やキッチン、リビングなど一通りの部屋が揃っています。しかも寝室のクローゼットを開けるとそこにはたくさんの女性用の衣服が入っていて、中には部屋着からドレスまで様々なものが揃っていました。
「服はこちらにあるものをご自由にお使いください」
「すごい! これ全部着ていいの!?」
種類だけなら王宮でいただいていた服よりも多いぐらいです。
「もちろんです。そしてこちらが、浴室です」
「本当に!?」
浴室と聞いて私は驚いてしまいました。お風呂は水を沸かすのに高価な魔石(魔法の効果を封じた石)が必要なのでかなり珍しかったのです。王宮にもありましたが、たくさんの人が利用する大浴場しかなかったので、自分だけで使えるお風呂があるのは一番ありがたいことです。
「これも自由に使っていいの!?」
「はい。入る十分ほど前にこちらの魔石に魔力をこめていただければ大丈夫です。もし魔力が足りなければ私がやりますが、大丈夫そうですね」
「うん、ありがとう」
「では私は夕食の支度をしますので、ご自由にお過ごしください」
「分かった」
私はクローゼットから適当な部屋着を見繕うと、早速お風呂に入ります。長旅で汚れていた服を脱ぎ、温かいお湯につかると死んではいないのにまるで生き返ったような心地になります。温かいお湯で全身の疲れが解けていくようでした。
「ああ、幸せ」
ずっとつかっていたい気持ちになりましたが、一時間ほどしてのぼせてしまいそうになり、仕方なく上がります。
お風呂から出ると、キッチンからは香草のおいしそうな匂いが漂ってきます。
「あ、お風呂どうでした?」
「最高だった」
「それは良かったです。ちょうど夕食が出来るタイミングだったのでお呼びしようかと思っていました」
「ありがとう」
私が食卓につくとレナがおいしそうな料理を運んできてくれます。新鮮な野菜に粉チーズをかけたサラダ、そして鶏肉と野菜を香草で焼いたもの、さらにスープとパンもついていました。
「いただきます」
サラダはしゃきしゃきとした歯ごたえにチーズが合わさって絶妙な味になり、鶏肉の香草焼きは少しぴりっとした味付けながらフォークを動かす手が止まらなくなります。パンもスープに浸して食べるとまろやかな味わいになってとてもおいしかったです。
「どうでしょうか?」
「ありがとう、全部おいしくてつい食べ過ぎてしまったわ」
「それは良かったです。では今夜はぐっすりおやすみください」
「おやすみなさい」
寝室に向かうと、宿のベッドとは違い、体が沈み込んでいくようなふかふかのベッドでした。王宮にいるときもこのぐらいのベッドだった気もしますが、オーウェン様やレナのもてなしのおかげかこちらの方が気持ちよく感じました。こうして私は旅の疲れもあり、いい眠りに落ちたのです。
オーウェン様が言うと、一人のメイドが室内に入ってきます。私よりも少し年下の少女ですが、慣れているのかオーウェン様の前でも堂々としています。
「彼女はうちに代々使えている家臣の娘で、レナという」
「レナと申します。イレーネ様のお世話をさせていただきますので何なりと申し付けくださいませ」
そう言って彼女はスカートの端をつまんで一礼します。その丁寧な所作は王宮にいた殿下のメイドとほぼ変わらず、驚いてしまいました。
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
「ではまずは客間へご案内しますね」
そう言って私は彼女に続いて歩きます。館の中を歩きながら、時々「イレーネ様、ここは〇〇様の部屋です」「ここは書庫です」などと説明をしてくれます。
「あの、一ついいですか?」
「はい、何でしょう」
「私に様をつけて呼ぶのはやめてもらえないでしょうか。私はもう聖女ではなく、ただの客人に過ぎませんので」
「そんな! オーウェン様からウィラード一族と同じぐらい丁重にもてなせとのご命令を受けております! むしろイレーネ様こそ私に敬語を使うのをおやめください。もったいなきことでございます」
私の言葉に、レナには逆に言い返されてしまいました。
そうは言っても、私は聖女の位についていただけで元々はただの平民に過ぎない。聖女でなくなった今、他人にそこまで敬われるとやりづらい。
「分かりました……いえ、分かったわ。そういうことなら私はくだけた話し方をするから、レナも様付けはやめて欲しい」
「分かりました、イレーネ……さん」
これで若干話しやすくなりました。もっとも王宮では誰に対しても敬語だったので逆に変な感じもしますが。
「こちらがイレーネさんの客間です」
「あの、これは客間というか家では?」
私が案内されたのは館のメインの建物から少し離れたところにある一軒家のような建物でした。
「はい、うちの館は広いのが取り柄なので」
それは答えになっているようないないような……。
「中へどうぞ」
彼女について入っていくと、中には寝室やキッチン、リビングなど一通りの部屋が揃っています。しかも寝室のクローゼットを開けるとそこにはたくさんの女性用の衣服が入っていて、中には部屋着からドレスまで様々なものが揃っていました。
「服はこちらにあるものをご自由にお使いください」
「すごい! これ全部着ていいの!?」
種類だけなら王宮でいただいていた服よりも多いぐらいです。
「もちろんです。そしてこちらが、浴室です」
「本当に!?」
浴室と聞いて私は驚いてしまいました。お風呂は水を沸かすのに高価な魔石(魔法の効果を封じた石)が必要なのでかなり珍しかったのです。王宮にもありましたが、たくさんの人が利用する大浴場しかなかったので、自分だけで使えるお風呂があるのは一番ありがたいことです。
「これも自由に使っていいの!?」
「はい。入る十分ほど前にこちらの魔石に魔力をこめていただければ大丈夫です。もし魔力が足りなければ私がやりますが、大丈夫そうですね」
「うん、ありがとう」
「では私は夕食の支度をしますので、ご自由にお過ごしください」
「分かった」
私はクローゼットから適当な部屋着を見繕うと、早速お風呂に入ります。長旅で汚れていた服を脱ぎ、温かいお湯につかると死んではいないのにまるで生き返ったような心地になります。温かいお湯で全身の疲れが解けていくようでした。
「ああ、幸せ」
ずっとつかっていたい気持ちになりましたが、一時間ほどしてのぼせてしまいそうになり、仕方なく上がります。
お風呂から出ると、キッチンからは香草のおいしそうな匂いが漂ってきます。
「あ、お風呂どうでした?」
「最高だった」
「それは良かったです。ちょうど夕食が出来るタイミングだったのでお呼びしようかと思っていました」
「ありがとう」
私が食卓につくとレナがおいしそうな料理を運んできてくれます。新鮮な野菜に粉チーズをかけたサラダ、そして鶏肉と野菜を香草で焼いたもの、さらにスープとパンもついていました。
「いただきます」
サラダはしゃきしゃきとした歯ごたえにチーズが合わさって絶妙な味になり、鶏肉の香草焼きは少しぴりっとした味付けながらフォークを動かす手が止まらなくなります。パンもスープに浸して食べるとまろやかな味わいになってとてもおいしかったです。
「どうでしょうか?」
「ありがとう、全部おいしくてつい食べ過ぎてしまったわ」
「それは良かったです。では今夜はぐっすりおやすみください」
「おやすみなさい」
寝室に向かうと、宿のベッドとは違い、体が沈み込んでいくようなふかふかのベッドでした。王宮にいるときもこのぐらいのベッドだった気もしますが、オーウェン様やレナのもてなしのおかげかこちらの方が気持ちよく感じました。こうして私は旅の疲れもあり、いい眠りに落ちたのです。
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