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ウィラード伯爵領の戦い Ⅰ
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こうして色々ありましたが、オーウェン様は王国軍・貴族軍の合計一万五千余りを率いて領地へ戻りました。さらに伯爵領に戻れば伯爵軍が五千ほどいるので、合流すれば兵力は二万にもなるでしょう。さらに後続の軍勢が到着すればまだまだ数は増えます。
が、私たちの軍勢が伯爵領に近づいた時でした。早馬が一騎、息をきらして本陣へと駆け込んできます。
「何事だ」
「大変です! 帝国のグラッド大将軍が率いる三万の軍勢、我が領に攻め込み現在お屋敷に迫っております」
「何だと!?」
オーウェンの表情が一気に蒼白になる。帝国軍の動きがここまで早いとは思わなかったのでしょう。当然屋敷には父である伯爵や家族、家臣などがたくさんいます。いくら堅固な城壁があるとはいえ、心配になるのも無理からぬことでしょう。
「だ、大丈夫でしょうか?」
「……」
さすがのオーウェン様もしばらくの間無言になってしまいます。
「オーウェン様。確かに帝国の進軍速度や兵力は脅威です。しかしここが踏ん張りどころです」
「イレーネ……」
励まそうとしますが、オーウェン様はいつになく弱々しい表情でこちらを見返してくるだけです。
しかし王宮を追い出されて困っていた私を助け、勇気づけてくれたのはオーウェン様です。今度はどうにかして私がオーウェン様を励まさなくては。そう思った私はオーウェン様の手を握ります。日頃の鍛錬で鍛え上げられた手はごつごつしていましたが、いつになく冷たいものでした。
「大丈夫です。絶対に神様にお祈りして奇跡を起こしてみせます。なのでオーウェン様もどうか気を奮い立たせてください」
当然ですが、奇跡というのは起こる(もしくは神様が起こしてくださる)ものであって、絶対に起こすなどと確約出来るものではありません。
ですが私はオーウェン様を勇気づけるため、あえて力強い口調で断言しました。
私の言葉を聞いたオーウェン様はゆっくりとこちらを向きます。
「本当か?」
「はい、本当です」
するとかすかにオーウェン様の目に小さな火がともります。
そこへ早馬が来たことをかぎつけた他の貴族たちや将軍のゲイルが本陣へ駆け込んできました。
「オーウェン様、どうされましたか?」
「今の早馬は一体何だったのだ!?」
彼らは先ほどのただならぬ雰囲気の早馬について立て続けに問いかけました。
すると先ほどまで落ち込んでいたオーウェン様の雰囲気は一変し、いつもの堂々としたものに戻ります。先ほどまで一緒にいた私は思わず目を疑ってしまったほどでした。
「どうやら帝国軍三万が国境を越えて我が領に攻め込んだらしい」
「何と」
それを聞いた彼らの表情は凍り付きます。
しかしオーウェン様は全く動じた風はありませんでした。
「だが案ずることはない。こんなこともあろうかと、伯爵家の全兵力は領地防衛用に残していた。そしてそれを率いるのは我が父だ。それに我らの館はいつ攻められてもいいように何重もの防壁を築いてある。帝国といえどもおいそれと突破することは出来ないだろう」
「なるほど……」
オーウェン様の堂々たる言葉を聞いたゲイル将軍らは落ち着きを取り戻していきます。
「むしろ、帝国軍が我らの館を攻めている最中に到着することが出来れば背後を突くことが出来る。むしろ好機と言うべきだろう」
「さすがオーウェン殿。我ら浮足立ってしまい申し訳ありませんでした。では即座に行軍を再開しましょう」
ゲイル将軍はオーウェン様の態度にすっかり勇気づけられたようです。
「うむ。皆の者も頼んだぞ」
「はいっ!」
「では全軍急げ!」
こうして王国軍は速度を速めて行軍を再開したのです。
将軍や貴族たちが去っていくと、オーウェンは緊張が解けたようにはあ、と息を吐きます。
「お見事でした。皆オーウェン様の勇姿に奮い立っておりました」
「ありがとうイレーネ。君のおかげで俺は彼らに無様な姿を見せずに済んだ」
「いえ、私が王宮を追い出された時はオーウェン様に助けられました。ですので今回はそのお返しです」
私はオーウェン様に助けられてばかりだったのに、恩返しが出来て良かったです。
「そうだったな。しかしそなたを王都に置いてこなくて本当に良かった」
「そう言っていただけると本当に嬉しいです」
こうして私たちは館へと急いで戻ったのです。
が、私たちの軍勢が伯爵領に近づいた時でした。早馬が一騎、息をきらして本陣へと駆け込んできます。
「何事だ」
「大変です! 帝国のグラッド大将軍が率いる三万の軍勢、我が領に攻め込み現在お屋敷に迫っております」
「何だと!?」
オーウェンの表情が一気に蒼白になる。帝国軍の動きがここまで早いとは思わなかったのでしょう。当然屋敷には父である伯爵や家族、家臣などがたくさんいます。いくら堅固な城壁があるとはいえ、心配になるのも無理からぬことでしょう。
「だ、大丈夫でしょうか?」
「……」
さすがのオーウェン様もしばらくの間無言になってしまいます。
「オーウェン様。確かに帝国の進軍速度や兵力は脅威です。しかしここが踏ん張りどころです」
「イレーネ……」
励まそうとしますが、オーウェン様はいつになく弱々しい表情でこちらを見返してくるだけです。
しかし王宮を追い出されて困っていた私を助け、勇気づけてくれたのはオーウェン様です。今度はどうにかして私がオーウェン様を励まさなくては。そう思った私はオーウェン様の手を握ります。日頃の鍛錬で鍛え上げられた手はごつごつしていましたが、いつになく冷たいものでした。
「大丈夫です。絶対に神様にお祈りして奇跡を起こしてみせます。なのでオーウェン様もどうか気を奮い立たせてください」
当然ですが、奇跡というのは起こる(もしくは神様が起こしてくださる)ものであって、絶対に起こすなどと確約出来るものではありません。
ですが私はオーウェン様を勇気づけるため、あえて力強い口調で断言しました。
私の言葉を聞いたオーウェン様はゆっくりとこちらを向きます。
「本当か?」
「はい、本当です」
するとかすかにオーウェン様の目に小さな火がともります。
そこへ早馬が来たことをかぎつけた他の貴族たちや将軍のゲイルが本陣へ駆け込んできました。
「オーウェン様、どうされましたか?」
「今の早馬は一体何だったのだ!?」
彼らは先ほどのただならぬ雰囲気の早馬について立て続けに問いかけました。
すると先ほどまで落ち込んでいたオーウェン様の雰囲気は一変し、いつもの堂々としたものに戻ります。先ほどまで一緒にいた私は思わず目を疑ってしまったほどでした。
「どうやら帝国軍三万が国境を越えて我が領に攻め込んだらしい」
「何と」
それを聞いた彼らの表情は凍り付きます。
しかしオーウェン様は全く動じた風はありませんでした。
「だが案ずることはない。こんなこともあろうかと、伯爵家の全兵力は領地防衛用に残していた。そしてそれを率いるのは我が父だ。それに我らの館はいつ攻められてもいいように何重もの防壁を築いてある。帝国といえどもおいそれと突破することは出来ないだろう」
「なるほど……」
オーウェン様の堂々たる言葉を聞いたゲイル将軍らは落ち着きを取り戻していきます。
「むしろ、帝国軍が我らの館を攻めている最中に到着することが出来れば背後を突くことが出来る。むしろ好機と言うべきだろう」
「さすがオーウェン殿。我ら浮足立ってしまい申し訳ありませんでした。では即座に行軍を再開しましょう」
ゲイル将軍はオーウェン様の態度にすっかり勇気づけられたようです。
「うむ。皆の者も頼んだぞ」
「はいっ!」
「では全軍急げ!」
こうして王国軍は速度を速めて行軍を再開したのです。
将軍や貴族たちが去っていくと、オーウェンは緊張が解けたようにはあ、と息を吐きます。
「お見事でした。皆オーウェン様の勇姿に奮い立っておりました」
「ありがとうイレーネ。君のおかげで俺は彼らに無様な姿を見せずに済んだ」
「いえ、私が王宮を追い出された時はオーウェン様に助けられました。ですので今回はそのお返しです」
私はオーウェン様に助けられてばかりだったのに、恩返しが出来て良かったです。
「そうだったな。しかしそなたを王都に置いてこなくて本当に良かった」
「そう言っていただけると本当に嬉しいです」
こうして私たちは館へと急いで戻ったのです。
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