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Ⅰ
アルフの正体
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そんな訳で私たちは学園から少し離れたカフェに向かった。基本的に貴族令嬢が入るような店は学園の近くに集まっているので、少し歩くと途端に知り合いと出会う確率は下がる。学園内での人間関係があまり良くなかった私は悲しいながらそういう場所に詳しかった。
席について飲み物を頼むと幸い、周囲は平民のお客さんばかりで同じ制服の人はいない。むしろ私たちが浮いてしまっているぐらいだ。そのことを確認してアルフが口を開く。
「では改めて話を聞かせてくれないか?」
「実は……」
そして私は昨日の出来事と先ほどのシルヴィアの反応を打ち明ける。
「……と言う訳で状況的には彼女しかありえないけど、何が起こったのか分からないし、証拠もないの」
私は話し終えてアルフの表情を伺う。彼はどんな反応を示すだろうか。
話を聞き終えてアルフは一気に険しい表情になる。
「そんなことがあったのか。しかし君ほどの魔法の使い手が全く気付かなかったというところを見ると、それはかなり危険なものと言えるな。考えてみてくれ、全く相手に気づかれずに食べさせるだけで魔力を奪えるなんてものが悪用されない訳がない」
「それは確かに」
私は自分のことだけ考えていたけど、アルフはもっと色んなことを心配しているようだ。
が、言われてみればその通りだ。国のもっと偉い人に使われれば大変なことになる。
「でも私が知る限り、魔法でもそういう手段はないと思う」
「そうだな。だが、魔術の発展は著しい。それに、そういう発明をした魔術師が必ずしもその成果を発表するとも限らない。特にそれが違法なものであればな」
アルフの言葉に私はぞくりと寒気が走る。
だが、確かにあのような危険な魔術が普通に存在するとも思えない。違法なものの可能性は高いだろう。
「だけどそんなものをシルヴィアが持っているというのもおかしいな。確かに彼女の実家、エブルー侯爵家は最近力を伸ばしているけど、だからといってこんなしょうもないことにこれを使うだろうか?」
「でもオルクとシルヴィアが結ばれると家としては都合がいいからシルヴィアに渡した、とかは?」
「その線はなくもないが……エブルー家が絡んでいるならさすがにもっとうまくやるんじゃないか?」
確かに、今回のシルヴィアのやり方ではシルヴィアが犯人だと言っているようなものだ。今回はたまたま証拠が残らなかったが、例えば私がもらったクッキーを全部食べずにいて、残りを誰かに持ちこんだりしていれば即発覚するだろう。
侯爵貴族の実家ぐるみでやっているとすれば相当お粗末な計画と言わざるを得ない。シルヴィアが私への嫉妬、もしくは魔力への憧れから衝動的にやったと言われた方が納得がいく。
「ということは、シルヴィアが個人的にその手段を入手して私への嫌がらせのためにやったと?」
「僕はそう思っている」
「でもシルヴィアが一体どうやって……」
実家の後ろ盾がなければただの一学生に過ぎない彼女にそんなことが出来るのだろうか。
すると突然アルフは声を潜め、私にしか聞こえないように言う。
「ところでここから話すことは内密にして欲しいんだけど、実は僕は貴族の出身じゃないんだ」
「え?」
突然のカミングアウトに私は混乱する。
デルフィーラ貴族学園は貴族の子女でなければ入学出来ない。非常に稀に平民出身の剣術・魔術・学問などに特に秀でた者が入学してくることはあるが、その場合も一応貴族の養子という手続きをとっている。
「正式な肩書きは近衛騎士でね。今回はとある調査で身分を偽って学園に来たという訳だ」
「嘘……」
近衛騎士というのは主に王族の護衛を行うための兵だが、その中にはこっそり国に害為す者を取り調べる者もいるという噂を聞いたことがある。まさか本当に実在したとは。
言われてみれば貴族ではないとはいえ、近衛騎士はかなり名誉ある地位であり、その身分は王都では下手な下級貴族には勝ると言われている。
だから私はアルフの正体を聞いてかなり驚いたが、同時に納得できるところもあった。
言われてみればこれまでのアルフは不自然なほど私の記憶になかった。今回はこんな風に助けてくれたが、こんな正義感のある人物であればこれまでどこかで目立つことをしていたはずだ。それがなかったということは、意図的にクラス内で目立たないように気を付けていたからだろう。
「その調査というのが、とある闇魔術師が学園の貴族子女を狙っているというものだ」
闇魔術というのは呪いや他人に危害を加える、人の死体を利用するなどの理由で違法指定された魔術の総称として使われる呼び名だ。その中に今回シルヴィアが使ったようなものが含まれていてもおかしくない。
だからアルフには今回の件を見てぴんと来るものがあったのだろう。
「じゃあ、もしかしてシルヴィアは……」
「そうだ、僕の予想だと恐らく彼女は直接的にか、間接的にかそいつに呪いの手段をもらったんだと思う」
「なるほど」
それを聞いて私は納得がいった。正直私もシルヴィアなんかに魔力を奪われたとは思いたくなかったけど、裏に黒幕がいるなら話は別だ。
アルフは私のことを真剣な目で見つめながら言う。
「君の呪いを解く手段を探す方法と黒幕探し、手伝わせてくれないか?」
「もちろん、手伝ってくれるなら喜んで」
正直学園内に相談できる人がいなくてどうしようかと思っていたけど、アルフに話すことが出来て大分肩の荷が降りたような気分だ。
「でもこんなのどうやって調べたらいいの? 今の私は魔力も全然なくなっちゃって」
魔法さえ使えればやりようはあるけど、それが封じられているのは辛い。
「残念ながら僕も魔法を使う方はさっぱりでね。とはいえ、相手が闇魔術を使っている以上まずは教会をあたってみるべきだと思う」
「なるほど」
司祭や聖女であれば呪いを解くことが出来る神聖魔術を使うことも出来る。そもそも私だけではこれが呪いだというところまで思い至らなかったけど、言われてみればその通りだった。
「じゃあ僕の方から教会の偉い人に話を通しておくから、悪いけど少しだけ待ってくれ」
「うん」
こうして私は心強い味方を得たことに安堵してその日は寮に帰ったのだった。
席について飲み物を頼むと幸い、周囲は平民のお客さんばかりで同じ制服の人はいない。むしろ私たちが浮いてしまっているぐらいだ。そのことを確認してアルフが口を開く。
「では改めて話を聞かせてくれないか?」
「実は……」
そして私は昨日の出来事と先ほどのシルヴィアの反応を打ち明ける。
「……と言う訳で状況的には彼女しかありえないけど、何が起こったのか分からないし、証拠もないの」
私は話し終えてアルフの表情を伺う。彼はどんな反応を示すだろうか。
話を聞き終えてアルフは一気に険しい表情になる。
「そんなことがあったのか。しかし君ほどの魔法の使い手が全く気付かなかったというところを見ると、それはかなり危険なものと言えるな。考えてみてくれ、全く相手に気づかれずに食べさせるだけで魔力を奪えるなんてものが悪用されない訳がない」
「それは確かに」
私は自分のことだけ考えていたけど、アルフはもっと色んなことを心配しているようだ。
が、言われてみればその通りだ。国のもっと偉い人に使われれば大変なことになる。
「でも私が知る限り、魔法でもそういう手段はないと思う」
「そうだな。だが、魔術の発展は著しい。それに、そういう発明をした魔術師が必ずしもその成果を発表するとも限らない。特にそれが違法なものであればな」
アルフの言葉に私はぞくりと寒気が走る。
だが、確かにあのような危険な魔術が普通に存在するとも思えない。違法なものの可能性は高いだろう。
「だけどそんなものをシルヴィアが持っているというのもおかしいな。確かに彼女の実家、エブルー侯爵家は最近力を伸ばしているけど、だからといってこんなしょうもないことにこれを使うだろうか?」
「でもオルクとシルヴィアが結ばれると家としては都合がいいからシルヴィアに渡した、とかは?」
「その線はなくもないが……エブルー家が絡んでいるならさすがにもっとうまくやるんじゃないか?」
確かに、今回のシルヴィアのやり方ではシルヴィアが犯人だと言っているようなものだ。今回はたまたま証拠が残らなかったが、例えば私がもらったクッキーを全部食べずにいて、残りを誰かに持ちこんだりしていれば即発覚するだろう。
侯爵貴族の実家ぐるみでやっているとすれば相当お粗末な計画と言わざるを得ない。シルヴィアが私への嫉妬、もしくは魔力への憧れから衝動的にやったと言われた方が納得がいく。
「ということは、シルヴィアが個人的にその手段を入手して私への嫌がらせのためにやったと?」
「僕はそう思っている」
「でもシルヴィアが一体どうやって……」
実家の後ろ盾がなければただの一学生に過ぎない彼女にそんなことが出来るのだろうか。
すると突然アルフは声を潜め、私にしか聞こえないように言う。
「ところでここから話すことは内密にして欲しいんだけど、実は僕は貴族の出身じゃないんだ」
「え?」
突然のカミングアウトに私は混乱する。
デルフィーラ貴族学園は貴族の子女でなければ入学出来ない。非常に稀に平民出身の剣術・魔術・学問などに特に秀でた者が入学してくることはあるが、その場合も一応貴族の養子という手続きをとっている。
「正式な肩書きは近衛騎士でね。今回はとある調査で身分を偽って学園に来たという訳だ」
「嘘……」
近衛騎士というのは主に王族の護衛を行うための兵だが、その中にはこっそり国に害為す者を取り調べる者もいるという噂を聞いたことがある。まさか本当に実在したとは。
言われてみれば貴族ではないとはいえ、近衛騎士はかなり名誉ある地位であり、その身分は王都では下手な下級貴族には勝ると言われている。
だから私はアルフの正体を聞いてかなり驚いたが、同時に納得できるところもあった。
言われてみればこれまでのアルフは不自然なほど私の記憶になかった。今回はこんな風に助けてくれたが、こんな正義感のある人物であればこれまでどこかで目立つことをしていたはずだ。それがなかったということは、意図的にクラス内で目立たないように気を付けていたからだろう。
「その調査というのが、とある闇魔術師が学園の貴族子女を狙っているというものだ」
闇魔術というのは呪いや他人に危害を加える、人の死体を利用するなどの理由で違法指定された魔術の総称として使われる呼び名だ。その中に今回シルヴィアが使ったようなものが含まれていてもおかしくない。
だからアルフには今回の件を見てぴんと来るものがあったのだろう。
「じゃあ、もしかしてシルヴィアは……」
「そうだ、僕の予想だと恐らく彼女は直接的にか、間接的にかそいつに呪いの手段をもらったんだと思う」
「なるほど」
それを聞いて私は納得がいった。正直私もシルヴィアなんかに魔力を奪われたとは思いたくなかったけど、裏に黒幕がいるなら話は別だ。
アルフは私のことを真剣な目で見つめながら言う。
「君の呪いを解く手段を探す方法と黒幕探し、手伝わせてくれないか?」
「もちろん、手伝ってくれるなら喜んで」
正直学園内に相談できる人がいなくてどうしようかと思っていたけど、アルフに話すことが出来て大分肩の荷が降りたような気分だ。
「でもこんなのどうやって調べたらいいの? 今の私は魔力も全然なくなっちゃって」
魔法さえ使えればやりようはあるけど、それが封じられているのは辛い。
「残念ながら僕も魔法を使う方はさっぱりでね。とはいえ、相手が闇魔術を使っている以上まずは教会をあたってみるべきだと思う」
「なるほど」
司祭や聖女であれば呪いを解くことが出来る神聖魔術を使うことも出来る。そもそも私だけではこれが呪いだというところまで思い至らなかったけど、言われてみればその通りだった。
「じゃあ僕の方から教会の偉い人に話を通しておくから、悪いけど少しだけ待ってくれ」
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こうして私は心強い味方を得たことに安堵してその日は寮に帰ったのだった。
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