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手の平返し
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さて、一息ついた私は二人が正式な契約書を交わしてのを見てお手洗いに立ちます。書類を整えるのは時間がかかりますが、さすがにそれについては父上に任せた方が良さそうです。
テイラー伯爵家はパーシーとの仲が決裂するまでは何度か訪れたことがあるのでお手洗いの位置ぐらいは分かります。
そのため私が用を済ませて一人で部屋に戻っていると。
「助けてくれ」
そんな声とともに目の前にゆらゆらと人影が現れます。
聞いたことのない声に見慣れぬ人物だ、と一瞬思いますがよく見るとその姿は見知ったものでした。
「ぱ、パーシー!?」
髪はぼさぼさ、髭は伸びっぱなし、目はうつろで服もよれよれになっているので一瞬誰かと思いましたが、確かにその姿はパーシーでした。
彼は私の姿を見るとか細い声で語り掛けてきます。
「助けてくれ、あれは全部あの女に騙されて仕方なくこうなったことなんだ」
「……何の話?」
「僕は全部リリーに騙されていただけなんだ! 悪いのは全部リリーだ! だから僕らはきっとやり直せる!」
それを聞いて私は心底呆れてしまいます。
リリーが彼を騙していたのは嘘ではないですが、あの時の自分に酔った態度はどうなったのでしょうか。それとも恋愛物語の主人公から悲劇の主人公に鞍替えしたのでしょうか。
とはいえ、いくら自分の意識を自由自在に切り替えることが出来てもそれで周囲の環境を変えることが出来る訳ではありません。
彼が別の物語の主人公になったからといって、それまでの行動がなかったことになる訳ではありません。
「あなたはリリーを守る騎士ではなかったの?」
「だからあれは騙されていただけで、本当は僕は君のことが好きだったんだ。ほら、本当は君はとても努力して魔法を使えるようになったんだろう? それを知って僕は目が覚めた。やはり今まで騙されていたんだって」
しかもすらすらと並べ立てる言葉は全てリリーを責める言葉だけで、謝罪は一言もありません。
私もリリーに対して思うところはありますが、かといってあんなことをしでかしたパーシーが一方的にリリーを悪者にしているのを見るとさすがに眉をひそめざるを得ません。
仮にも貴族の跡継ぎだというのに責任感というものはないのでしょうか。
「そう。私とよりを戻してもどうせまたすぐに心変わりするんでしょ? しばらくどこかで静かに暮らしたら?」
一応私としては精いっぱいのアドバイスをして私は立ち去ろうとします。
「……そうか、やはり君も僕を見捨てるのか」
が、後ろからはなぜか敵意に満ちた声が聞こえてきました。
「一体何を言って……」
「もう許さない、こうなったら力ずくで分からせてやる!」
そう言って目を血走らせたパーシーが襲い掛かってきます。短期間でここまでころころと気持ちが変わるのはもはや情緒不安定ですが、襲い掛かってきたものはどうにかしないといけません。
私はとっさに魔法を唱えます。
「ウィンド!」
咄嗟に私の目の前で暴風が吹き、私にとびかかろうとしたパーシーはそのまま吹き飛ばされていきます。そしてそのまま背中からどすん、と音を立てて壁に激突するのでした。
そこへ音を聞きつけて数人の執事がやってきます。
「すみません……」
一応他家の息子を吹き飛ばしてしまったので私が謝ろうした時でした。
「おぼっちゃま! 部屋から出ないよう言っていたでしょう!」
「また逃げ出したのでしょうか!?」
執事たちはパーシーに駆け寄るとあっというまに部屋に連れていってしまうのでした。
どうやらリリーを助けたはいいものの間違いだったことが分かり、錯乱していたのでしょう。私は彼が運ばれていくのを黙って見送って部屋に戻るのでした。
テイラー伯爵家はパーシーとの仲が決裂するまでは何度か訪れたことがあるのでお手洗いの位置ぐらいは分かります。
そのため私が用を済ませて一人で部屋に戻っていると。
「助けてくれ」
そんな声とともに目の前にゆらゆらと人影が現れます。
聞いたことのない声に見慣れぬ人物だ、と一瞬思いますがよく見るとその姿は見知ったものでした。
「ぱ、パーシー!?」
髪はぼさぼさ、髭は伸びっぱなし、目はうつろで服もよれよれになっているので一瞬誰かと思いましたが、確かにその姿はパーシーでした。
彼は私の姿を見るとか細い声で語り掛けてきます。
「助けてくれ、あれは全部あの女に騙されて仕方なくこうなったことなんだ」
「……何の話?」
「僕は全部リリーに騙されていただけなんだ! 悪いのは全部リリーだ! だから僕らはきっとやり直せる!」
それを聞いて私は心底呆れてしまいます。
リリーが彼を騙していたのは嘘ではないですが、あの時の自分に酔った態度はどうなったのでしょうか。それとも恋愛物語の主人公から悲劇の主人公に鞍替えしたのでしょうか。
とはいえ、いくら自分の意識を自由自在に切り替えることが出来てもそれで周囲の環境を変えることが出来る訳ではありません。
彼が別の物語の主人公になったからといって、それまでの行動がなかったことになる訳ではありません。
「あなたはリリーを守る騎士ではなかったの?」
「だからあれは騙されていただけで、本当は僕は君のことが好きだったんだ。ほら、本当は君はとても努力して魔法を使えるようになったんだろう? それを知って僕は目が覚めた。やはり今まで騙されていたんだって」
しかもすらすらと並べ立てる言葉は全てリリーを責める言葉だけで、謝罪は一言もありません。
私もリリーに対して思うところはありますが、かといってあんなことをしでかしたパーシーが一方的にリリーを悪者にしているのを見るとさすがに眉をひそめざるを得ません。
仮にも貴族の跡継ぎだというのに責任感というものはないのでしょうか。
「そう。私とよりを戻してもどうせまたすぐに心変わりするんでしょ? しばらくどこかで静かに暮らしたら?」
一応私としては精いっぱいのアドバイスをして私は立ち去ろうとします。
「……そうか、やはり君も僕を見捨てるのか」
が、後ろからはなぜか敵意に満ちた声が聞こえてきました。
「一体何を言って……」
「もう許さない、こうなったら力ずくで分からせてやる!」
そう言って目を血走らせたパーシーが襲い掛かってきます。短期間でここまでころころと気持ちが変わるのはもはや情緒不安定ですが、襲い掛かってきたものはどうにかしないといけません。
私はとっさに魔法を唱えます。
「ウィンド!」
咄嗟に私の目の前で暴風が吹き、私にとびかかろうとしたパーシーはそのまま吹き飛ばされていきます。そしてそのまま背中からどすん、と音を立てて壁に激突するのでした。
そこへ音を聞きつけて数人の執事がやってきます。
「すみません……」
一応他家の息子を吹き飛ばしてしまったので私が謝ろうした時でした。
「おぼっちゃま! 部屋から出ないよう言っていたでしょう!」
「また逃げ出したのでしょうか!?」
執事たちはパーシーに駆け寄るとあっというまに部屋に連れていってしまうのでした。
どうやらリリーを助けたはいいものの間違いだったことが分かり、錯乱していたのでしょう。私は彼が運ばれていくのを黙って見送って部屋に戻るのでした。
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