28 / 38
テイラー伯爵との会談 Ⅱ
しおりを挟む
「あくまでパーシーが悪くないと主張するのであれば私としてもパーシーの手紙を公開する用意があります」
そう言って私はじっと伯爵を睨みつけます。
本当はそんなものはありませんが、伯爵にはないという確証はないはずです。いくらパーシーが「そんな不用意なことはしていない」と言ったとしても、パーシーの言うことに信憑性があるとは思えません。
ですからここで私が本当のように言えば伯爵は信じざるを得ないはずです。
最初伯爵は疑わし気に私を見返してきましたが、私の堂々とした視線にたじろいだ様子を見せます。
「……ほ、本当か?」
見つめ合った末、伯爵は予想通り動揺の表情を見せました。
「はい。しかし私としてもテイラー伯爵家とこれ以上事を荒立てたくはありません。ですから出来れば使わずに済めばいいと思っています」
「だが、パーシーが血迷って婚約者の妹を攫ってきたなどという話が広まるのを許す訳にはいかない!」
それはそれで勝手な理屈ですが、パーシーのおかげで私に精霊が返ってきたところもあるので、今回はパーシーの断罪よりは自分の今後の人生を良くすることを優先しようと思います。
「分かりました。でしたらパーシーがリリーを攫ったのはそういう理由で構いません。ただ、仮にどういう事情があれいきなり他家の令嬢を攫うのは許されないことです。そのため、反省の意をこめて婚約を取り消してくださるというのでいかがでしょう」
パーシーの悪行を広めようとすればテイラー伯爵はどんな強硬手段で妨害してくるか分かりません。私としては婚約だけ取り消してもらえれば構わないので落としどころを用意します。
そんな私の言葉に伯爵は考えこみました。
そしてやがて、重々しく頷きます。
「それは確かに……分かった、そういうことであればその話は飲もう」
「受けていただきありがとうございます」
「はあ、さすがに婚約を押し通すのは無理か。ここで婚約を破棄されてしまえばもう二度とあれをもらってくれる者は現れないというのに……」
そんな人を私に押し付けようとしていたとは。それを思うと背中から嫌な汗が噴き出しました。そういうことは本人の前では言わないで欲しいのですが。とはいえ、せっかく話がまとまったので私は今の言葉は聞かなかったことにして隣の父上を見ます。
すると父上は咳払いして言いました。
「こほん、と言う訳で婚約破棄とリリーさえ返してもらえればパーシーについてはそれ以上不名誉になることは言わないことを約束しましょう」
「分かった」
そう言ってテイラー伯爵は羊皮紙を取り出すと、契約を書面にしたため始めます。それを見て私は自分の出る幕はもう終わった、とほっと一息つくのでした。
そう言って私はじっと伯爵を睨みつけます。
本当はそんなものはありませんが、伯爵にはないという確証はないはずです。いくらパーシーが「そんな不用意なことはしていない」と言ったとしても、パーシーの言うことに信憑性があるとは思えません。
ですからここで私が本当のように言えば伯爵は信じざるを得ないはずです。
最初伯爵は疑わし気に私を見返してきましたが、私の堂々とした視線にたじろいだ様子を見せます。
「……ほ、本当か?」
見つめ合った末、伯爵は予想通り動揺の表情を見せました。
「はい。しかし私としてもテイラー伯爵家とこれ以上事を荒立てたくはありません。ですから出来れば使わずに済めばいいと思っています」
「だが、パーシーが血迷って婚約者の妹を攫ってきたなどという話が広まるのを許す訳にはいかない!」
それはそれで勝手な理屈ですが、パーシーのおかげで私に精霊が返ってきたところもあるので、今回はパーシーの断罪よりは自分の今後の人生を良くすることを優先しようと思います。
「分かりました。でしたらパーシーがリリーを攫ったのはそういう理由で構いません。ただ、仮にどういう事情があれいきなり他家の令嬢を攫うのは許されないことです。そのため、反省の意をこめて婚約を取り消してくださるというのでいかがでしょう」
パーシーの悪行を広めようとすればテイラー伯爵はどんな強硬手段で妨害してくるか分かりません。私としては婚約だけ取り消してもらえれば構わないので落としどころを用意します。
そんな私の言葉に伯爵は考えこみました。
そしてやがて、重々しく頷きます。
「それは確かに……分かった、そういうことであればその話は飲もう」
「受けていただきありがとうございます」
「はあ、さすがに婚約を押し通すのは無理か。ここで婚約を破棄されてしまえばもう二度とあれをもらってくれる者は現れないというのに……」
そんな人を私に押し付けようとしていたとは。それを思うと背中から嫌な汗が噴き出しました。そういうことは本人の前では言わないで欲しいのですが。とはいえ、せっかく話がまとまったので私は今の言葉は聞かなかったことにして隣の父上を見ます。
すると父上は咳払いして言いました。
「こほん、と言う訳で婚約破棄とリリーさえ返してもらえればパーシーについてはそれ以上不名誉になることは言わないことを約束しましょう」
「分かった」
そう言ってテイラー伯爵は羊皮紙を取り出すと、契約を書面にしたため始めます。それを見て私は自分の出る幕はもう終わった、とほっと一息つくのでした。
155
あなたにおすすめの小説
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。
両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。
ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。
そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。
だが、レフーナはそれに激昂した。
彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。
その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。
姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。
しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。
戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。
こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。
「君からは打算的な愛しか感じない」と婚約破棄したのですから、どうぞ無償の愛を貫きください。
木山楽斗
恋愛
「君からは打算的な愛しか感じない」
子爵令嬢であるフィリアは、ある時婚約者マルギスからそう言われて婚約破棄されることになった。
彼女は物事を損得によって判断する傾向にある。マルギスはそれを嫌に思っており、かつての恋人シェリーカと結ばれるために、フィリアとの婚約を破棄したのだ。
その選択を、フィリアは愚かなものだと思っていた。
一時の感情で家同士が決めた婚約を破棄することは、不利益でしかなかったからだ。
それを不可解に思いながら、フィリアは父親とともにマルギスの家に抗議をした。彼女はこの状況においても、利益が得られるように行動したのだ。
それからしばらく経った後、フィリアはシェリーカが危機に陥っていることを知る。
彼女の家は、あくどい方法で金を稼いでおり、それが露呈したことで没落に追い込まれていたのだ。
そのことを受けて元婚約者マルギスが、フィリアを訪ねてきた。彼は家が風評被害を恐れたことによって家を追い出されていたのだ。
マルギスは、フィリアと再び婚約したいと申し出てきた。彼はそれによって、家になんとか戻ろうとしていたのである。
しかし、それをフィリアが受け入れることはなかった。彼女はマルギスにシェリーカへの無償の愛を貫くように説き、追い返すのだった。
【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます
かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。
そこに私の意思なんてなくて。
発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。
貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。
善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。
聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。
————貴方たちに私の声は聞こえていますか?
------------------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる